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全国障害者在宅生活支援事業者連絡会からの声明文

全国障害者在宅生活支援事業者連絡会からの声明文



私たちは「全国障害者在宅生活支援事業者連絡会」、通称「全事連」という団体です。

病院や施設で一生を送るのではなく、地域の中で介助者と共に生きようとする障害を持つ人たちの運動の中で、沢山の事業所が作られてきました。

その事業所が全国的にバラバラに活動するのではなく、国や行政に更なる制度の前進を求めることと、事業者間の連携を目指して、2018年に設立されました。

障害を持つ当事者自身に牽引されて、全国に重度訪問介護を使っての地域生活が少しずつ増えてきています。

現在、この制度を使って地域で生きている人は約1万人。その重い障害を持つ人達と、私たちのような事業者は共同で新しい世界を模索し続けています。障害を持つことは、時に医療的なケアを必要とすることではあっても、その医療的ケアを受けることで、生きることの様々な可能性を閉じてしまわなくても済むように、私たちは重度訪問介護で「見守り」という項目を実現してきました。そして2014年からは、知的、精神の障害を持つ人々にもこの制度の枠が拡大されています。

しかし、この「見守り」という行為が、命にとって必須であることをこの社会は全く認識していません。

「見守り」は生まれた瞬間から亡くなるまで、管理という眼差しの対極にあるものです。子供の育ちについても、優しい眼差しでの見守り無くして子供達の成長はあり得ません。

また認知症等、お年寄りの心身の変化に対しても究極には見守りが最も重要な命を伴走する行為です。

そんな中、今回の京都の林さんの「医師による嘱託殺人」は人々に大きな恐怖と混乱を与えました。この事件を安楽死や尊厳死と結びつけて考えようとしている、一部の人々に私たちは声高に、その過ちを指摘したいと思います。

林さんがまず望んだことは、病院の生活ではなく、地域での生活でした。しかし、それが実現した後にも体調の変化はかなり厳しくなっていくということは、誰よりも殺人を犯した医師達が知っていたことでしょう。

医師の本分は命を助けることです。にも関わらず、見守りという行為が医療にとっても非常に重要なものであるという認識がないために、林さんは殺人依頼という究極の選択に追い詰められました。

この事件が教えてくれることは、辛さや痛みを表現し、それを見守り続けることの価値の重要性です。

私たち人類は様々な技術を発展させ死を遠ざけようと努力してきました。その努力の成果を、私たちは「見守り」という行為に結実してきたわけです。安楽死、尊厳死の概念は命を助け、見守る医療とは真逆の概念です。

障害を持つ当事者の方からも次々にこの事件に対する抗議声明文が出されていますが、私達、介護・介助を担ってきた側からも、この医師達の立場を利用した医療とは真逆の行為に対して深く抗議し、司法の命の尊厳を守る裁きが下されることを願っています。

この医師達による殺人は、人々の心に恐怖と混乱を巻き起こしています。それを私たちは“優生思想”0と呼び、そこからの自由を訴えてきました。「生産性がない者、役に立たない者は死んでしまえ」という考え方は、やまゆり園事件でも、そして近々の知的障害者の自殺事件等々、それはこの社会に溢れかえり、障害のある無しに関わらず人々を追い詰めています。

では一体どうしたら良いのかという時に最も重要で本質的な対応は、医療こそが実現できるでしょう。

2人の医師は体調の加速度的変化に苦しむ林さんの手を取り、「ゆっくりと、それでも生きていきましょう。私たちが苦しみを聞きますよ。」と言うべきでした。

私たち具体的な介助を担う事業者達も、そのような対応を日々、求められています。と言うのも、障害や病気を担うと言うのは決して楽なことではありません。

苦しみと痛み、そして呻きと叫びが常態化する中、常に生き続けること、それを応援するのが医師である人の役割です。

人はあまりにも痛みや苦しみを聞くことができません。

そんな中私たちは介助という仕事を通して、それを聞き続けています。

障害や病や死に対して、私たちは真摯にそれらに向き合うというチャレンジをし続けています。これからもこの仕事に対する誇りを持って、優生思想から自由になった新たな世界を模索し続けることを広く呼びかけていきます。


全国障害者在宅生活支援事業者連絡会
代表 高浜敏之
顧問 安積遊歩
連絡先
東京都中野区中央1丁目35番6号3階
TEL 050-3171-7723
FAX 050-6861-4742