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NGはよくあることです!

NGはよくあることです!

吉田政弘



 重度訪問介護の現場では、利用者様や利用者ご家族から「〇〇さんを支援から外してください。」と要望される、いわゆる「NG」が結構ある。

 私もある利用者様の支援の現場でNGを出され、謝るタイミングもなく支援を外れることになった経験がある。

 管理者やサービス提供責任者に対して明確に「外してくれ」と伝えられる場合もあれば、暗に外すことを要求される場合や、そのスタッフに対して直接入り辛くなるような空気を醸し出し、スタッフの方に「もう入れません。」という言葉を言わせる場合もある。
 重度訪問介護は10時間前後の長時間支援が中心であるため、一つでもスタッフの嫌なところを見つけてしまうとその長時間支援の中で、逆に加速度的に嫌な思いが膨らみ、「相性が合わない」ということでNGに繋がる場合が多い。
 NGのきっかけは様々であり、スタッフの非常識な行動に端を発するものもあるが、そのスタッフの性格が暗い、もしくは明るすぎる等利用者の選り好みでNGを出されることもある。

 ここでは「利用者にNGを出す権利があるのか」もしくは「NGを出されるような人やそのような人を派遣する事業者に責任があるのか」を議論するつもりはないが、私がNGを出された時の経験を共有させていただき、重度訪問介護に自信を無くしている介護職の方やその周囲の方の再考の一助になれば幸いである。

 私がNGを出されたのは入社2ヶ月目頃であり、新規の利用者様の主要ヘルパーの一人として1週間のほぼ毎日がその新規利用者様の支援になっていた頃だった。
 私としては利用者様のお役に立ちたい思いも強く、まだまだ知識も浅いながら全てを捧げる勢いで多少の無理も苦にせず支援に入っていた。
 最初の頃はご利用者様にも感謝いただき、ご家族様からも介護の負担が減ったことで感謝のお言葉をいただいていたが、何度か入って慣れてきた頃からヘルパーが常に家に居る状況にご家族様が疲れてきた様子が見受けられるようになり、連続して支援に入っていたある時、ご家族様からNGを出され、支援を外れることになった。後から聞いたNGの理由は、利用者様が出来ることまで私がお手伝いしてしまっていたことや連続して支援に入っていたためご家族の時間に配慮が出来ていなかったことが主だったようだが、その他利用者様の就寝中に電気を消していなかったこと等様々なことが気になっておられたと聞いた。一度嫌なことが目に付くと細かなことが逐一気になるもので、NGの理由としては色々と言われたと上司から聞いた。
 NGの理由を聞いた時は、自身の鼻息の荒さと配慮が足りなかったことを深く深く反省したとともに、正直な気持ちとしては「これだけ自分を犠牲にしてお役に立とうとしたのに、、、」という情けなさと遣る瀬無い気持ちでいっぱいだった。また、その時の私は1週間のほぼ毎日がその利用者様の支援だったので、NGが出た瞬間に当面の支援が全て取り消しとなり、一気に職無しの状態になった。
 今となっては私の中でも笑い話だが、当時は私の人間性や存在を否定されたような気持になり、給料が下がることも承知して介護職への転職を応援してくれた家族にも顔が立たず、支援も無く無職の状態となり、一方で私のNGのせいで他の土屋訪問介護スタッフにはしわ寄せが行き、私はこのまま介護職・重度訪問介護で生計を立てていけるのかとても不安になったのを覚えている。業界未経験から重度訪問介護を始めて間もなかった私は「NG」にまだまだ馴染みが無く、お体の不自由な方やご家族に不快な思いをさせてしまったことは非人道的な重大な犯罪を犯してしまったというように感じていた。

 そんな失意のどん底にあった私を救ってくれたのは、当時の私の上司(現、中国四国ブロックマネージャー鈴木さん)の言葉だった。

「吉田さん、(NGは)よくあることです!今回は頑張りすぎましたね!ありがとうございます!他にも(支援に)入ってほしいところ、支援を待っている方はいっぱいいるので、また宜しくお願いします!」

 この言葉は本当に救われた。まずNGは私以外でもあることというのに安心し、私が頑張っていたことも理解してくれている人がいることが嬉しかった。
 何よりも、失意から介護の世界を去らなければならないのかという消極的な考えが一瞬頭を過っていたが、上記の上司の言葉で支援を待っている方はまだまだいっぱいいるということさえ見失いかけていたことに気付き、目が覚める思いだった。
 今も私が介護の現場で「全ての必要な人に必要なケアを」という理念を実現すべく頑張れているのは上記の上司の言葉のお陰である。

 現在私はマネージャー職として現場の支援を管理しているが、実際に利用者様からは頻繁にスタッフの苦言やNGのお言葉をいただいている。弊社スタッフ側が悪いこともあるが、利用者様側の我儘と受け取れるような内容も多い。
 土屋訪問介護事業所は業界未経験ながら、理念に共感し、自己のホスピタリティーの思いに従って頑張っているスタッフも多い。このようなスタッフに利用者様からNGが出た場合、私も上司に言っていただいた言葉をスタッフに伝えるようにしている。何よりも私自身がNGを出されたことがあり、その経験が言葉に説得力を持たせることが出来ている。今となってはNGの経験は本当に自分にとっても貴重な経験となっている。

 今、色々な利用者様からのお話しを受けるマネージャー職をしていて、事実に裏付けされたものとして自信を持って介護現場スタッフの方に伝えたい。
NGはよくあることです!自己を否定するほど考え込むことはありません!
一つや二つのNGで介護職が辞めていくことは、まだまだ介護を必要とする方がいる需要過多の介護業界にとって大きな損失です! 実際に土屋訪問介護事業所が人手不足で対応できずお断りしている利用者様も多数います!視野を切り替え、一緒にケアを必要としている方にケアを届けていきましょう!

 翻って、NGをよくお伝えいただく利用者様にもお伝えしたい。
NGを出すお気持ちもよく理解できます。事業所側の責に帰すべきものには全力で改善に向け対応致します。
一方で土屋訪問介護事業所、引いては介護業界にいる「人財」も有限です。
NGを出されることは介護職にとって精神的にとても辛く、介護職スタッフの介護人生を左右することさえあります。その点ご理解、ご配慮いただければ幸いです。
土屋訪問介護事業所は「全ての必要な人に必要なケアを」届けるため、介護職スタッフを守ります。


【略歴】吉田政弘(1982年12月生 37歳) H18:一橋大学経済学部卒業 H18~H27: 中小企業専門の政府系政策金融機関 (H23~H24:経済産業省中小企業庁に出向) H27~H30:国内経営コンサルティングファーム H30~:ユースタイルラボラトリー㈱(現職)  高校時代に父がリストラを受けて失業した経験から経済学の勉強を志し、一橋大学経済学部に入学・卒業(H18)。  福祉業界への就職を考えるも、給与面等現実的な問題から断念。中小企業の安定・発展に貢献するという考えから、中小企業専門の政府系政策金融機関に就職。そこで様々な業界の慣行や業界特性を学ぶ。  H23~H24の2年間は経済産業省中小企業庁に出向。国会議論を通じた支援法、支援施策の策定プロセスや予算要求プロセスを経験し、国策の成立プロセスを体験。  H27には企業側に立った事業再生コンサルティングを志し、国内経営コンサルティングファームに転職。そこでの介護施設再建の経験から介護業界の発展の一助を志し、自身も介護業界に身を置くことを決意。  H30ユースタイルラボラトリー㈱と出会い、様々な重度訪問介護の現場を経験し、現在は「すべての必要な人に必要なケアを」届けるという理念の下、業界発展への貢献を目指して日々奮闘している。