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無垢なこどもが感じた疑問

無垢なこどもが感じた疑問

Kisaku



これは最近あった、とある雨の日の、ちょっと考えさせられたできごとです。ちょうどその時は、台風の日本列島通過により、関西を中心に東京にも激しい雨が降り注いでいました。帰宅途中の普段の道は、傘もなく屋根の下でたたずむ人や、鞄を頭上にかかげて走る人、渋い顔をしてタクシーに並ぶ人など、さまざまでした。

そんななか、私はあるお母さんと、幼稚園くらいの年頃の女の子の会話を、たまたま立ち聞きすることになったのです。

それは雨の中信号待ちをしていたときのことでした。私は長い信号を、のんびりぼーっとしながら待っていました。母娘は私から少し離れたところにいました。そんなとき、そのシーンは訪れました。

交差点を車が通りすぎるなか、後ろからかけてきた、びしょ濡れのスーツを着た男性が、赤信号を無視して車道を突っ切ろうとしたのです。そこに、タイミング的にはギリギリといったところで、向かいから交差点を右折してきた軽トラックが、大きくクラクションを鳴らして、道路をわたりきった男性の背中に向けてなにか叫んでいました。心なしか、その場にいた人たちに、一瞬緊張の表情がはしったように思えました。少ししてから、信号が青になり、止まっていた人たちの足が動き始めました。

実際こういったことは、人の多い街などでは、ときたま目にするようなことで、だれもが一度は出会ったことがあるようなことだと思います。 私自身も、急な雨の日、傘を忘れたときは、濡れるのが嫌なので、周りの安全を確認してから、ついつい赤信号を渡ってしまうことがあるのですが、周りにきちんと信号を守っている人や、小さなこどもや学生さんがいたときは、自分の行いに少し罪悪感を感じることがあります。

さて、そのとき私はたまたま信号待ちに居合わせた、そのお母さんと小さな女の子の、こんな会話を耳にしました。

それはだいたい、こんな感じでした。

「ねえママ~!あの人わたってるよ~!なんでわたってるの~??」それは無垢なこどもならではの、素直な疑問、といったところでしょうか。このとき私は、お母さんがどう答えるのか、少し気になりました。
少し間が空いてからお母さんは、
「ああいう人はダメ。もうポイしちゃおう。」
と、非常に謎めいたことを、女の子に言いました。それに対して女の子は
、 「ポイポイしちゃえ!」
と楽しげに答えていました。
私は、
「えぇ??ポイっていったいどういうこと?なにをポイしちゃうの??怖いんですけど(汗汗)」
と鼓動が早まるのを感じ、一刻も早くと、その場を足早に通りすぎました。後ろからは、
「ポイポイ♪(母)」「ポイポイ!(娘)」
と母娘の楽しげに足をはずませている声が聞こえていました。

これがあったとき、私はちょうど、この土屋訪問のコラムを投稿するお仕事をいただいたばかりで、印象的なこのことがらについて、少しばかり考えてみることにしました。

まず一番不可思議な、「ポイ」という言葉ですが、これはおそらくなにかの番組のフレーズということにして(こじつけて)、お母さんはきっと、「男の人がなぜ信号をわたったのか」と聞かれ、その問いに、きちんと教えてあげたい、けれどもうまく言葉にできない。という葛藤を抱き、その末に出てきたのがこの、「ポイしちゃえ」という言葉だったのではないかと、私は勝手に自己解釈することにしました。

もし私たちがお母さんの立場なら、我が子にどう答えたか、そもそも「大したことではない」と感じる人もおられることでしょうし、「いやいや、これはこどもの人格形成に関わることだ」と大事に受け止める人もおられるかもしれません。それは人によって様々だと思います。

ではもしお母さんが、女の子に、「男の人は急いでいたから赤信号でもわたった」と答えていたら、こどもはいつだって純粋ですから、「急いでいたら赤信号をわたってもいい」と解釈する可能性もあるのでしょうか。さらには、もしお母さんが、普段女の子と過ごしているときに、頻繁に赤信号をわたっていたら、女の子は疑うことなく、お母さんの行動を摸倣していたかもしれません。こどもはおとなと周りを見て育ちますから。

『ルールを守る者はルールに守られる』

とは有名な教訓ですが、あのとき赤信号をダッシュでわたった男性が、もし後から来た軽トラックにひかれてしまっていたら、男性を誰が守ってくれるでしょうか?もし、あの一瞬、男性がそうしたルールの柵の中からはじき出された、という意味で、『ポイしちゃえ』という言葉が生み出されたなら、やはりあの母子はただ者ではないということになります。しかし、その真実は今となっては知る由もなく、この話は私の妄想(迷走)のネタとなり、素朴な疑問を抱いた女の子は、大人への階段を1つ上ったのでした(たぶん)。


最後に、ボボ人形実験の暗い結果が示唆するとおり、今のこどもたちが、なにを見て、誰の真似をして「おとな」になっていくのか。それはもちろん私たちですよね。ですので、信号は青になってから、左右を確認してからわたりましょう、とまでは毎回できなくても、せめて私たちおとなをこどもが見ている前では、いつでも「かっこいいおとな」でいたいものですね。私も気をつけなくては。(汗)

今のかわいいこどもたちや、じぶんのこどもが、満員電車で乱闘を巻き起こしたり、全国で煽り運転を繰り広げるような、狂暴なおっさんおばさんになってしまうことを想像しましょう。

「こどものようなおとな」なんて言語道断ですよ!それではまたお会いしましょう!