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『セックスボランティア』河合香織(著)/新潮文庫

『セックスボランティア』河合香織(著)/新潮文庫

吉田政弘



重度の方も含めた障害者の「性」について、とても考えさせられる一冊です。

普段私たちも重度訪問介護のヘルパーとして重度障害者の方と深く関り、昼夜問わず長時間を同じ空間で過ごしていますが、障害者の「性」については見て見ぬふり、または障害者には性欲はないと決め付けてしまっている方もいるのではないでしょうか。

本書のストーリーは著者が障害者の方やその介助者に取材を進めていく形で展開されており、序章から生々しい描写で始まっています。作中では人工呼吸器を付けた方の「性」についても描写されており、その様子は「命がけ」と表現されています。
また、介護の現場では男性障害者の方からのセクシャルな要求がクローズアップされ、時にセクハラと問題になったりすることもありますが、本作品では女性障害者の「性」についても描写されており、男/女や障害者/健常者問わず、「人間」としての当然の「性」という視点から考えさせられる内容になっています。

トピックとしては、脳性麻痺の男性を風俗店に連れていく男性介助者の話、障害者専門の風俗店で働く女性の話、知的障害者にセックスを教える講師の話、障害を持つ女性専門の性交渉ボランティアをする男性の話等、「性」に関する障害者と介助者・ボランティアとのリアルな絡みとそれに伴って渦巻く感情の描写が続いています。

介護の現場では、原則「同姓介助」という慣行がありますが、これは現場におけるセクハラ事案を避けるためにできた慣行ではなく、元々は障害者施設において女性の入浴を男性介助者が行うことについて女性障害者が「尊厳の保持」を求めて同姓介助を訴え、それが一般的な慣行になったという背景があるようです。
そもそも「セクハラ事案を避けるため」という発想が短絡的で介助者の目線でしか考えていない、障害者の方の羞恥心を無視した考え方でしたね。。。私も反省しました。

それを踏まえると、四肢麻痺等で介助者の支援を必要とする重度障害者の「性」と「尊厳の保持」は表裏一体なものであって、言い換えれば、介護に携わる者としては利用者の「尊厳の保持」と併せて障害者の「性」についてもそれと同じぐらい一人一人が考え、知っておくべきテーマと言えるのではないでしょうか。

ヘルパーとして、障害者の性の要求に対応しなくてはいけない、または対応してはいけないという話ではなく、普段支援に入らせていただいている障害者の方の理解を深める上でとても参考になる本です。

ここで私の見解を書いてしまうと、これからお読みになる方の感じ方、考え方に影響を与えてしまう可能性があるので書きませんが、障害福祉に関わる介護者として、障害者の「性」についても「尊厳の保持」と同じようにオープンに話し合えるようになっていく必要があるのかなと思っています。

介護職の方でまだ本書を読まれていない方には是非お勧めしたい一冊です。
 

【略歴】吉田政弘(1982年12月生 37歳) H18:一橋大学経済学部卒業 H18~H27: 中小企業専門の政府系政策金融機関 (H23~H24:経済産業省中小企業庁に出向) H27~H30:国内経営コンサルティングファーム H30~:ユースタイルラボラトリー㈱(現職)  高校時代に父がリストラを受けて失業した経験から経済学の勉強を志し、一橋大学経済学部に入学・卒業(H18)。  福祉業界への就職を考えるも、給与面等現実的な問題から断念。中小企業の安定・発展に貢献するという考えから、中小企業専門の政府系政策金融機関に就職。そこで様々な業界の慣行や業界特性を学ぶ。  H23~H24の2年間は経済産業省中小企業庁に出向。国会議論を通じた支援法、支援施策の策定プロセスや予算要求プロセスを経験し、国策の成立プロセスを体験。  H27には企業側に立った事業再生コンサルティングを志し、国内経営コンサルティングファームに転職。そこでの介護施設再建の経験から介護業界の発展の一助を志し、自身も介護業界に身を置くことを決意。  H30ユースタイルラボラトリー㈱と出会い、様々な重度訪問介護の現場を経験し、現在は「すべての必要な人に必要なケアを」届けるという理念の下、業界発展への貢献を目指して日々奮闘している。