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道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である(全国ネットワーク立ち上げに際して)

道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である(全国ネットワーク立ち上げに際して)

高浜敏之



タイトルは言わずとしれた二宮尊徳の名言である。

江戸時代の思想家であり、報徳仕法という貧しい地域の財政再建政策を実施したことで知られる二宮尊徳は、薪を担いで書を読む銅像が有名であり、苦学の象徴とみなされている。

30代に私は非営利活動に専心した。様々な社会問題に触れるにつれ、その問題を解決するための構想、または妄想が湧き上がった。即座に行動した。なかなか解決に至らなかった。

労力が露と消えた。時には空虚だけが残った。

何かが足りなかった。

ソーシャルビジネスの可能性を発見した現在、やっと実感を伴って理解できるようになった。

一言でいうと、力が足りなかった。力とは何か?私たちには情熱はあった。行動力もあった。

経営資源と方法論が欠けていた。

経営資源とは、人、モノ、そして金である。それらは持続的活動を保障する。

無力であった私たちの活動は時に寝言で終わってしまった。犯罪よりはましだと自分たちを慰めていた節がある。

ユースタイルラボラトリーの立ち上げに参加し、土屋訪問介護事業所を運営していくなかで、結果を生み出すためにはビジネスは最適手段であり、私たちが嫌悪したマーケットはユーザーとサプライアーの満足を最大化する機能を有していると思うようにもなった。

マイケルポーターが語るように、ソーシャルビジネスは高度な資本主義の形態と理解できる。

しかし一定の警戒も必要と考える。ミイラ取りがミイラになる可能性は皆無とはいえない。

モラルを失ったビジネスは二宮尊徳が言う通り他者の利益を踏みにじるリスクがある。

マーケットに働く神の見えざる手を語った、自由主義経済学の始祖であるアダムスミスは経済学者であると同時に倫理学者でもあり、主著のひとつである「道徳感情論」でシンパシー(共感)の重要性について語った。

シンパシーはバラバラになった個体をつなぐ。これも大切なリソースだと思う。

全国事業者ネットワークも立ち上がりつつある。

福祉事業を担う方々や現場のケアに邁進する人たちは利他的で尊敬に値する方々ばかりだ。

しかし、私たち同様に皆さん自分たちの想いを実現するだけの十分なリソースを有しているようには思えない。

今後は他事業者の方々とのネットワークを構築し、様々なリソースをシェアしていくことでさらなる大きな問題解決に向けて共に邁進したい。

そして、シンパシーとつながりの力を証明していきたい。


高浜敏之
土屋訪問介護事業所GM。ユースタイルラボラトリー株式会社COO。全国障害者在宅生活支援事業者連絡会代表。慶応義塾大学文学部卒。哲学科美学美術史学専攻。20代は様々な職業遍歴を経て、30歳で重度訪問介護というサービスと出会い、福祉の仕事をスタート。それと同時に日本の障害者運動のパイオニアである新田勲さんが代表を務める全国公的介護保障要求者組合の事務局を担うことに。30代はホームレス支援、移住外国人労働者支援など社会的マイナリティーの権利回復運動にコミット。その後東京都中野区にあるグループホームでの介護職員を経て2012年5月にユースタイルラボラトリー株式会社の立ち上げに参加。デイサービス土屋中野坂上の管理者、生活相談員を経て土屋訪問介護事業所やユースタイルカレッジを立ち上げる。現在は土屋訪問介護事業所を統括しながら事業者ネットワークの発起人として活動する。趣味はボクシング、アート、文学、など。