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ALSの皆様の在宅生活

ALSの皆様の在宅生活

高山力也




みなさん、今日は。甲府の高山です。

今回は土屋訪問介護事業所にとってとても関係の深い、ALSという疾患についてお話したいと思います。
私はこれまで二十数名ほどのご利用者様のサービスに入ってきましたが、そのうちの半分くらいがALSのご利用者でした。

ALSとは日本語で「筋委縮性側索硬化症」と呼ばれる病気で、筋肉に信号を送る神経が侵され徐々に身体の機能が働かなくなる進行性の難病のことです。
似たような疾患に筋ジストロフィーというのがあるのですが、こちらは筋肉そのものが衰えてゆく病ですね。
発症の原因はまったくの不明で、今のところ症状を劇的に改善させる治療法も見つかっておりません。
日本ALS協会HP(http://alsjapan.org/)によりますと、現在日本国内に約9,600名のALSの方がいらっしゃるそうです。

進行のスピードにはかなり個人差が大きく、発症からわずか半年でほぼ全身が動かせなくなるケースもあれば、数年経ってもまだ手足が動かせるケースもあるなど様々です。
また初期症状が極めてあいまいなため、発症してからしばらくの間はALSだとわからず、色々な診療科を受診して回ることも少なからずあると聞きます。
ALSが進むと自力で身体を支えることが困難になりますので、基本的にベッドで寝たきりの生活になります。
さらに嚥下機能も衰えてきますので、ある段階で胃瘻増設や経鼻経管栄養などを検討することにもなるでしょう。
そしてやがて横隔膜の機能にも制限がでますので、ついには気管切開をして人工呼吸器を装着するかの決断を迫られることになります。

私たちがサービスに入るALSのご利用者はすでに人工呼吸器を装着されている方が多いです。
このようなご利用者は例えば気管に痰がたまっても自力で排出できないため、適宜吸引カテーテルで吸い出してやる必要があります。
本来なら痰の吸引は医療的ケアに該当し医師や看護師しかできないのですが、土屋訪問介護事業所から派遣するヘルパーは特別な資格をもっているためこの医療的ケアにも対応可能です。

それでは弊社がサービスに入っているALSの方の日常について簡単にご紹介しましょう。

1.一日の基本的な過ごし方
先ほども触れましたように、ALSの方はベッドで寝たきりの状態です。大抵は背中の部分が動く介護用のベッドを使用しており、日中はベッドはやや起こした(ギャッジアップした)状態で過ごされることが多いようです。
そしてご利用者によって最も安楽な姿勢というものが決まっていることが多く、クッションやバスタオルを巻いたものなどを利用してそれを保持します(これをポジショニングといいます)。
ただずっと同じ姿勢をとっていると身体のどこかが痛くなってきますので、そのときはご家族やヘルパーを呼び体位交換(身体の向きを左右に替えること)や背抜きなどを行います。
また手足を動かさないままだと固まってしまいますので、定期的に手足を動かしたりすることもございます。
その他に口の中に涎が溜まったり、気管や鼻の中が詰まってきた場合などには、痰吸引などの処置を行ったりもします。

2.コミュニケーション
気管切開をされている方は基本的には喋れません。
また気管切開をされていなかったとしてもろれつが回らず言葉での意思表示が困難だったりもします。
そこでALSのご利用者との意思疎通は、基本的には「透明文字盤」と呼ばれるものを通じて行われます。
透明文字盤とは透明なプラスティックの板に50音表が載ったものです。
かなり進行が進んでも目だけは比較的まだ自由の利くことが多いですので、ご利用者に伝えたい文字を見つめてもらい、その文字を一つずつ拾ってゆくことで言葉にしてゆきます。
あるいは伝えたい事柄がパターン化してきたご利用者だと、50音ではなく「トイレ」や「暑い」などの記号だけの文字盤を使う方もいらっしゃいますね。
それからPCで意思疎通をされるご利用者も増えてきました。
私が現場でよく見かけるのは「意思伝達装置」や「視線入力装置」といわれるものです。
意思伝達装置は単一のON操作だけでPCを操作するシステムのことで、日立の「伝の心」がもっとも有名です。
また視線入力装置は文字どおりご利用者の視線をカメラでキャッチしてPC入力するもので、例えば「トビー」などが挙げられます。
どちらもご利用者とPCモニターとの位置関係が重要で、ちゃんとセッティングできるようになるまで多少の修練が必要かもしれません。
これらの意思伝達装置や視線入力装置はテレビやネットと繋げることもできますので、それで一日を過ごされる方も多いようです。

3.食事・栄養
お食事は稀にまだそれほど振興の進んでいない方で刻み食を経口摂取される方もいますが、ほとんどのケースで胃瘻あるいは経鼻からの経管栄養となります。
滴下筒やシリンジを使って指定の栄養剤と水分を大体1~3時間くらい掛けてゆっくり注入します。
栄養剤の量とカロリー、それに水分量は記録にとっておくのが普通です。
ちなみにこの経管栄養も医療的ケアに含まれますので、一般のヘルパーではやっちゃいけないことになっておりますが、土屋の登録ヘルパーは対応可能です。
なかにはごく少量ですが、口からスプーンでコーヒーなどを嗜まれる方もいらっしゃいます。

4.排泄
基本的にはオムツやパッドで対応しますが、小さいほうに関しては中には尿カテーテルを挿してバルーンに貯めたり、尿瓶を常時股の間に装着したりで対応されるご利用者もいます。
また排泄のタイミングをある程度自分でコントロールできる方だと、差し込み便器などで対応することもあります。
消化器系の働きも徐々に弱ってゆきますので、あまりに便のでない日が続いた場合には、訪問看護師に浣腸・摘便をしてもらうこともあります。

5.入浴・清潔保持・更衣
入浴は多くの場合で訪問入浴のサービスをご利用されていることが多いですが、入浴用の車椅子に移乗してのシャワー浴のご利用者もいらっしゃいます。
また訪問入浴だと毎日入浴するというわけにはいきませんので、特に夏場などは毎日こまめに全身を清拭して清潔を保つようにしています。
着衣ですが、ALSの方ですと前面にボタンのある「前開き」のパジャマかシャツをお召しになることが殆どですが、仮に気管切開をしていてもTシャツ(伸縮性のあるものなら)とかでも特に問題なく着脱できます。

6.外出
ALS、特に人工呼吸器を着けた後では外出は難しいと諦めてしまう方も多いですが、重度のALSの方でもちゃんと準備さえすれば勿論外出は可能です。
ただし痰吸引や経管栄養といった医療的ケアを始め、排泄や電源の確保など何でも揃えられる自宅とは条件が違ってきますので、あらかじめ必要な物品をリスト化したりシミュレーションしたりといった事前準備がやっぱり重要になるでしょう。

以上かなり大雑把ではありますが、大体このような感じでALSの方は在宅での日常生活を送られているんじゃないでしょうか。
24時間365日誰かが見守っている必要がありますが、弊社サービスのご利用者は日中帯はご家族が交代で看て、夜間帯をうちのサービスに任せるケースが多いようですね。

次回は、入院生活や施設での生活から在宅への移行について触れてみようかなと思います。それではまた!



【略歴】高山力也
某国立大学大学院を修了後、H11年に当時まだ珍しい再生医療を扱うバイオベンチャーに就職、先端医療領域での新規事業立ち上げに携わる。その後、生殖補助医療領域でのMRを経て、H19年大手ITベンダー系の事業会社に転職、バイオテクノロジーやヘルスケアを専門領域として投資活動や大学との共同研究を手掛ける。またその傍ら、医療経済などに関する見識も深める。H21年に独立、診療所や介護施設の開設支援コンサルを手掛け始める。このときの経験から介護・福祉領域での仕事のやりがいに目覚め、弊社ユースタイルラボラトリー株式会社にはH29年5月より参加。名古屋事業所や北九州小倉事業所など日本全国各地での新事業所立ち上げに関り、現在は土屋訪問介護事業所甲府を担当している。