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非営利組織の経営  ピーター・F・ドラッカー(著)

非営利組織の経営  ピーター・F・ドラッカー(著)

吉岡理恵




この本を読んだのはちょうど1年くらい前、転勤先の地でたまたま立ち寄った古本屋のBook Off、当時の私は「ソーシャルビジネスは政府と非営利組織ができないことをやるものだ」、という社内の新入社員オリエンテーションで視聴するマイケル・ポーター氏の「なぜビジネスが社会問題の解決に役立ちうるのか」の動画でのフレーズに、なんとなく興味を抱きつつも、では株式会社のように売上の伸長とコストカットを求めなくていい非営利組織はどのように運営されているのだろうかと漠然と疑問を抱いていました。数百円で買い求めたこの本は、私に子供の頃以来の、夢中になって夜更かしをして本を読む、事態を招いたのでした。裏表紙にある創刊2007年の記載と、原理主義は疑問ですねという上司の言葉に、私は温故知新でいいのですと反論して、その感動を伝えたことも覚えています。本書は、当時私が取り組んでいた広域エリアの事業運営の課題に、一つ一つ解決案を提示してくれるかのようでした。本書評では、以下にそのいくつかをピックアップしたいと思います。

①リーダーシップ:リーダーシップとは模範になること。リーダーは常に成長が必要で、組織の役割について大きなビジョンをもち、自らの役割について考えることができなければならない。そして組織はミッションのために存在し、ミッションは社会を変え人を変えるために存在する。組織に人を引き付けるものは高い基準である。ミッションは長期目標からスタートすべき。そして成果を中心に考えること。
考察:すべての必要な人に必要なケアを。ある日を境に会社の理念、すなわち会社の社会に対するミッションとして掲げられるようになったテーマです。壮大すぎて口に出すのは気恥ずかしいと今でも思っていますが、このフレーズで人を引き付けることができるなら何度でも言おう、このフレーズ通りにすべての必要な人に必要なケアが届けられるのは難しくとも、目指す過程で一人でも多くの方が必要とするケアを受けられたと実感できるなら、社会を変えたことになるのではと思いました。とはいえ理念は立派でも実際のリーダーシップは難しいです。転勤して分かりましたが、誰も見ず知らずの東京人を信用したくないのです。信用できるのは組織の方向性で私はその代弁者。そう思うと気は楽になりました。あとは模範的なリーダーであることと成長すること。成長はブラッシュアップ、模範になるかどうかは自分ではなく他人が決めることだと開き直り、発言、態度、表情、人の目と心に感じられる部分は今日のベストパフォーマンスを目指しました。

②組織は戦略:組織の成果は改善とイノベーションの戦略。顧客にとって大事なこと、彼らの心をとらえるにはどうしたらよいか考えること。改善のためにいかなる戦略を持つか、いかなる分野で新しいことを行うか、目標を設定し、そして働く。目標は明確にすること。課題は、顧客にとって大事な何を行うことができるか。
考察:顧客は利用者だけでなく従業員もです。上司も顧客だと当社の社長に言われたことがあります。この仕事をしていくうえで、一番大事なのは人です。同じ組織にいるスタッフが何を望み、どう働きたいか。スタッフが難しい課題に直面したときに、一緒に取り組む、自分が引き受ける、取り組む姿を後方支援する、のどれがそのスタッフにとってその時一番大事なのかを自分なりに考えようと努めました。

③組織の成果:情報型組織では、あらゆる者が、上司と同僚に対し情報を与え、教育する責任を負う。全員が自らを理解してもらう責任を負う。そのためには、自らが負うべき貢献と成果についての責任を考え抜き書き留めること。それらのことが上下横の人たちに理解されるようにしなければならない。これが相互理解。
考察:組織を導くうえでスムーズだなと思うのは、合意形成=相互理解ができているときです。根回し、という言葉は負のイメージがありますが、集団の中で個人を孤立させないこととも言えますし、根回しの基本である一対一のコミュニケーションは信頼関係を醸成する有意義な手段だと思います。情報化社会では、どこから情報が降ってくるか分からないので、必要と思われる情報をとりあえず提供し受け取ることは役職に関わらず大事であり、いろいろな方が情報を提供してくれる環境があることは素敵だなと思います。

④人的資源:人からどれだけ引き出せるかによって組織の成果が決定する。不得意なことで何かを行わせず、エリート扱いせず、近視眼的に育てないこと。教育においては、ゆっくり、何度でもやらせてよいが質は落とさないこと。チーム編成とは、メンバーの強みをフルに発揮させ、弱みを意味のないものにすること。組織はスターを必要とする、スターは脇役に助けられる存在。だが、スターが歌いだすと全体が輝き、別次元に突入するという双方向の関係。組織の成果を中心に置くこと。 考察:個人の人生経験に優劣はなく、誰もが貴重な人生を歩んでいます。一人一人の知識や経験のストックは、いつ組織で芽吹くか分かりません。とはいえ、足りないと思われることは学習が必要で、学習の過程で合格のラインを落とさないということが大事だそうです。そこに到達するまで焦らずに再挑戦の機会を与えるということに、その方への信頼と期待が込められていると思います。

⑤コミットメント:組織とビジョンを共有するから人は組織で働く。各自が組織と自らを成長させるには何に集中すべきかを問わなければならない。成功に必要なものは責任。ミッションへの貢献を通じて自らを大きな存在にし、自らを尊敬できる存在にすること。成果をあげる道は、自らがもっているものを使って成果をあげること。 自分が何によって憶えられたいか、という自己刷新を促す問い。
考察:自らを尊敬できる存在にする、という表現は聞いたことがありませんでした。何が成功で失敗かが分からないのが人生であり社会なのでしょうが、分からないからとそのままにするのは得策ではないでしょう。分かろうとする、ということで自分の理解の幅が広がります。理解の幅が広がるとは、視野が広がると言い換えてもよいでしょう。

最後に
この本については、目から鱗、という言葉がぴったり当てはまりました。株式会社と非営利組織、水と油のような関係だと思っていましたが、当社のソーシャルビジネスの一端を担う上では、それぞれのスタイルを大豆とにがりのように必要不可欠な存在としてはじめて、社会貢献というミッションが果たせるような気がします。



吉岡理恵

1981年東京都生まれ、東京都立大学経済学部卒業、大学在学中にオーストラリア、マッコーリー大学に公費留学、帰国後法律系事務所でOLとして働く、2014年東京都職場体験プログラムを機にESLのデイサービス、ユースタイル諏訪ノ森で介護職デビュー、2016年より常勤職員として土屋訪問介護事業所の重度訪問介護事業に参加し各地のマネージャーを務め現在に至る、2018年介護福祉士登録、OL時代にフルマラソンに挑戦し完走8回、趣味は料理と読書