ニュース&ブログ

金城一紀 『対話編』 (新潮文庫)

金城一紀 『対話編』 (新潮文庫)

Kisaku




ー以下、『対話編』本作よりあらすじを引用ー


ーー本当に愛する人ができたら、絶対にその人の手を離してはいけない。なぜなら、離したとたんに誰よりも遠くへと行ってしまうからーー。最初で最後の運命の恋、片思いの残酷な結末、薄れていく愛しい人の記憶。愛する者を失い、孤独に沈む者たちが語る切なくも希望に満ちたストーリーたち。真摯な対話を通して見出だされていく真実の言葉の数々を描いた傑作中編集。ーー


さて、本作は、

・『GO』 ・『SP(警視庁警備部警護課第四係)』
  ・『フライ・ダディ・フライ 』
  ・『BORDER』

などの代表作で知られる、金城一紀の恋愛小説です。

知るひとぞ知る小説家、金城一紀ですが、本作『対話編』は、3つの物語で構成されおり、どの章も、それぞれの主人公が、出会った人物たちの、その恋人との愛と別れの物語を、第三者として「対話」を通して受け継いでいく、というシンプルなつくりになっております。

第1話の「恋愛小説」では、語り手である青年が、大学時代に出会った、「幽霊」「死神」と呼ばれる数奇な運命を背負った学生との対話を思い出す、という物語になっており、

「永遠の円環」という第2話では、余命が間近に迫った大学生である「僕」が、自身の病室にふいに訪れた、正体不明の同級生「K」に、恋人の仇をうつため復讐代行を依頼する、という内容で、

第3話の「花」では、脳に動脈瘤の疾患を抱えてしまったあるサラリーマンが、退職後、大学時代のゼミの先輩を通してある弁護士からドライバーを依頼され、その弁護士「鳥越氏」から、ドライブのさなかに亡くなった元妻「恵子」との失意と後悔の物語を明かされた、という物語で、どの章もそれぞれの「対話」によって、色彩豊かに描かれております。


さて、一見シンプルな構成のこの作品ですが、『SP(警視庁警備部警護課第四係)』(岡田准一、堤真一主演ドラマ・映画化)や、『BORDER』から見る、作者の元々の持ち味である、暴力要素の色濃いハードボイルドな世界観から一転して、ストーリーの展開や、登場人物の物語などが、かなり鮮やかで、切なくあまく、ロマンチックな恋愛小説になっております。

私は昔、金城一紀にけっこうハマったクチですが、今時を経て、こうして読み返してみると、まるで人さまの純情な恋愛を覗き見しているような感覚になり、見ているこっちが照れてしまうような、気恥ずかしさを少し感じる一方で、純文学的ともいえる、とてもキレイな表現には、やはり包み込まれるような世界観を感じます。

例えて言うならば、「ミルク100パーセントのロイヤルミルクティー」のような、あまーい世界にハマる人はハマってしまうかもしれませんね。本を読み終えたあとは、まるで自分が1つの恋を遂げたような、そんな気持ちにさせてくれる一冊です。