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施設療養から在宅へ

施設療養から在宅へ

高山力也




みなさん、今日は。甲府の高山です。

前回の続きで、今回はALSの方が在宅生活をスタートさせるために必要なことについて触れたいと思います。
「退院支援」などとも呼ばれていますが、私は過去にALSの方二名を含む六名の退院支援を手掛けたことがあります。

ところで「社会的入院」という言葉をご存じでしょうか?
受け入れ条件さえ整えば退院可能である患者の入院を指し、日本では高齢者や難病の方々を中心に18.1万人もの入院患者がこの状態であるといわれております(厚生労働省資料「患者調査の概況」、2011)。
つまり本来なら退院すべきにも関わらず、院外での日常生活を送るための受け皿がないため、そのまま入院生活を強いられる患者が多数いらっしゃるということです。 これは当該患者のQOLは勿論のこと、限られた医療資源の浪費という意味でも、とても大きな社会問題であるといえましょう。

施設と在宅で何が違うかといいますと、まず施設に比べて在宅のほうが圧倒的に自由が利きます。
施設では食事の時間や消灯の時間などが厳しく管理され、また場合によっては排泄の時間も前もって決められてしまったりします。
さらに限られた人数で多くのご利用者に対応しなければいけない事情もあり、ナースコールで呼んでも必ずしもすぐ対応できるとは限りません。
そこ行きますと、在宅では食事の時間も自由、睡眠の時間も自由、トイレの時間も自由、また気晴らしに外出するのも自由です。

一方で施設の環境下では、とりあえず生活するのに必要なものが一揃い予め整っております。
例えばオムツや各種パット、吸引用のカテーテル、使い捨てのグローブやウエスの類など、ALSの方の日常を支える上で必要なものは様々です。
施設にいる限り、これらは誰かがちゃんと責任もって用意してくれています。
当然のことながら在宅で生活するなら、これらすべてを自前で用意しなければなりません。
ですので、施設から在宅に移行しようと希望したならば、まず在宅での生活を細かくイメージして事前準備をしておく必要があるのです。
「どの場所でどのように過ごしたいのか?」「かかりつけ医はどうするのか?」「訪問看護はどうするのか?」「入浴はどうするのか?」などなど。
これらをご本人の価値観にあった形で明確にするため、支援相談専専門員を中心とした退院カンファレンスの場を何回も重ねてゆきます。


1.どんな生活を送るかの具体化
自由とはいえ、在宅の生活ではそれなりの制約があります。そのうちの大きなものといえば、やっぱり障害福祉サービスを利用出来る時間数でしょう。
自治体や障害の度合いによって、支給される時間数は決められており、その中で優先順位を決めてサービス利用の時間を割り振る必要があります。
そしてそれらの意向が固まったら、支援相談専専門員にプランを作成していただき、自治体の承認を得るといったプロセスで進んでゆきます。
ちなみに土屋訪問介護事業所のご利用者ですと、基本ご家族がメインで看られるのですが、24時間365日は無理ですので、せめて夜だけはぐっすり眠りたいと夜間帯の泊りサービスを希望されるケースが多いようです。

2.事前準備
プランが固まったら、いよいよ退院のため具体的な準備に取り掛かります。
例えば「何日に退院するのか?」ですとか「ご自宅までの移送手段はどうするのか?」「必要なリソースがちゃんと確保されているのか?」「物品の消毒について」などを確認しておかなければなりません。
また在宅生活に必要な物品のリスト化も不可欠でしょう。
さらに私が関わったケースでいいますと、事前にご自宅に足を運んで動線の確認なども行っています。
経管栄養や痰吸引のあるご利用者だったら、医師の指示書や看護師による実地研修の手配も欠かせません。

3.在宅生活のスタート
このようにして在宅での新生活をスタートさせるわけですが、これまでの私の経験上でいえば事前準備さえしっかりしていればまず大丈夫です。
それでも移乗については、特に留意すべきことでしょう。ご自宅の構造上、車イスの操作が制限される場合もあり注意が必要です。なるべくなら大人数を集めておいたほうが無難でしょう。
また人工呼吸器を装着されたご利用者でも、移乗時はトラブル防止のため人工呼吸器を外すことになりますが、念のためアンビューなどを用意しておくべきです。

4.PDCAサイクルでのクオリティー・コントロール
いかに事前準備をしっかりしたとしても、想定外のことが起こりうるのが在宅生活(というか重度障害者の日常生活)というものです。
「これしか他にやり方がない」や「残念だが仕方ない」で諦めてしまうのではなく、何かもっとベターな方法はないかと現場で試行錯誤することが不可欠です。
そしてこういった試行錯誤を単なる挑戦で終わらせず、きちんと実のある形に昇華させるには関係スタッフ間の情報共有が何よりも大切でしょう。
ご利用者の生活をより良くするためには何ができるのか、関係者全体で英知を結集する必要があると思います。


大体このような形で、在宅生活への以降を進めてまいります。
もしも在宅生活を躊躇されている方がいらっしゃったら、一度お気軽にお問い合わせください。
弊社には、「スペシャリスト」が何人もおりますので。


※ 写真は私が退院支援を手掛けたALSのご利用者宅の飼い猫。いつの間にか当たり前の顔して、私の膝の上に乗ってくるようになりました(笑)。



【略歴】高山力也
某国立大学大学院を修了後、H11年に当時まだ珍しい再生医療を扱うバイオベンチャーに就職、先端医療領域での新規事業立ち上げに携わる。その後、生殖補助医療領域でのMRを経て、H19年大手ITベンダー系の事業会社に転職、バイオテクノロジーやヘルスケアを専門領域として投資活動や大学との共同研究を手掛ける。またその傍ら、医療経済などに関する見識も深める。H21年に独立、診療所や介護施設の開設支援コンサルを手掛け始める。このときの経験から介護・福祉領域での仕事のやりがいに目覚め、弊社ユースタイルラボラトリー株式会社にはH29年5月より参加。名古屋事業所や北九州小倉事業所など日本全国各地での新事業所立ち上げに関り、現在は土屋訪問介護事業所甲府を担当している。