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『日常の中の戦争用語と平和』

『日常の中の戦争用語と平和』

安積遊歩



日本は、平和だと言われている。しかし、平和とは簡単に言えないほどに自殺者も病気も多い。特に若い人が死んでいる国だ。なぜそうなのかを考えてみた。例えば、若い人が追い詰められている状況に「受験戦争」がある。点数で若い人の価値をはかり、点数が良くなければ幸せにはなれないと教え続けて、無益な競争を煽る。そこで命を落とす子、つまりこの時期の自殺や病気も諸外国に比べたら非常に多いことだろう。

「企業戦士」という言葉もある。企業の内外で戦う人達のことで、つまり企業で働く人の日常そのものが戦いであるということだ。また、「男は一歩家の外に出れば7人の敵がいる」という言い方もある。これもまた男性社会がいかに戦場かを物語っている。 日常の中に戦争に関する言葉を見ていこうとするとほかにも結構ある。例えば、誰かの側に立って発言したときに「後方から援護射撃ありがとう」とお礼を言われて驚いたことがあった。なるほど、射撃は全くしたつもりは無かったが、たしかにそういう言い方もある。

軍資金という言葉もある。戦場で軍資金が尽きると負けてしまう。そんな中、この言葉は簡単によく使われている気がする。 その勝利は人の命を殺めてもということだから、この言葉を使いまくっている社会というのはやはり戦場に近い。ことほど左様に日本語の中には戦場で使われる言葉が多い。

学校で当たり前に行われている号令もまた戦場のようだ。中学生になると社会に出た時のために号令に従うことがますます必要になると言われるが、一体どんな社会に出ると、号令に従う態度が役に立つというのか。それはまさに「軍隊社会」に適応する訓練だ。言われたことはたとえ人のため全ての生命を脅かすような仕事であっても、仕事だから従わなければならないという論理で、マインドで、この社会は進んでいる。

今アマゾンやシベリアで火災が起きている。この火災は地球温暖化をさらに加速させている。火災は食肉や木材産業から起きている。その産業にいると、余りにも複雑な仕組みで自分のやっていることが次世代の命を脅かしていることになかなか気づけないのだろう。

しかし、現実の環境破壊は「私たちは次世代の子供たちに戦争を仕掛けている」と言われるほどに切迫してきている。

介助の場は戦場ではない。しかし、全く新しい仕事の関係には、今までの仕事のモデルが当てはまらないので、様々な混乱を産んでもいる。重い障害を持つ人があまりに自分の体が辛く、次々に自分の必要を通して来ようとするとき、言われたことには従わなければならないか、あるいは可哀相な人なのだから少しでも応えてあげなければという、中高で培われた服従心か、戦場で生まれたナイチンゲール精神等が使われる。

しかし利用者と介助者は敵と味方でもなければ、全くの同士でもない。立場は真逆だが、お互いに徹底的に必要な存在。今までの関係にモデルがないので、その場にある2人は混乱しながらもクリエイティブにならざるを得ない。ある部分は親しい友人でもあり、ある時にはビジネスライクな上司と部下の立場になったり。トイレ介助の後にはプライベートな秘密をさりげなく共有する不思議な関係でもある。


本当の平和とは何か。

上記に見てきたように、日本に本当の平和はまだまだない。だからこそわたしは介助関係の中に、本当の平和をつくりだしたいという気概と期待がある。未来への戦争を仕掛けているというような日常を見直して、コマーシャリズムに振り回されない生活をすること。つまり、様々な事に敏感になり、誰をも排除せず命を大切にするために、私たちは介助関係の中からさらに考え行動することができると思うのだ。


【略歴】
1956年、福島県福島市生まれ。生まれつき骨が弱いという特徴をもつ。22歳で親元から自立。アメリカのバークレー自立生活センターで研修後、ピアカウンセリングを日本に紹介。障害者の自立生活運動をはじめ、様々な分野で当事者として発信を行なっている。
2019年7月、NHKハートネットTVに娘である安積宇宙とともに出演。