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私の子育て日記① らしさからの自由

私の子育て日記① らしさからの自由

高浜敏之



40台半ばを過ぎて2人の娘を授かった。

現在長女は2歳、次女は5か月になる。

先日も二人の合同誕生日会をやったばかりだ。

長年ケアメンをやってきた私は、子供が生まれたらずぶずぶのイクメンになることを目指していたが、実はさほど育児には関われていない。

長女が妻の体に宿ったタイミングで土屋訪問介護事業所の全国展開が始まり、日本中を行脚する日々がスタートしたので、娘が誕生したあとも私のイクメン時間は週末に限られていた。

なので日々育児を全面的に担ってくれてる妻に私が育児について記してるなど知れたら、たいして手伝ってくれてもないのになにを偉そうなこと書いてるのよ!と逆鱗に触れることは必至である。

というわけで、パートタイムイクメンという立場で、たいした経験もないことを前提に、いたって控え目に、イクメン時間の経験について感じたことを書いていきたい。

まず初めに、ケアメンとイクメンの経験を通じて得られた貴重な果実がある。それは、男らしさの病、からのちょっとした快癒である。物心がついたころには、男らしさと女らしさの区別があり、自分を男らしさの鋳型にはまるよう、まさに自分自身を調教してきた。

男らしいとは、強いこと、決断力があること、タフであること、無口であること、理性的であることであり、女性的であるとは、優しいこと、繊細であること、配慮に満ちていること、よくおしゃべりをすること、情緒的であることと、無意識に刷り込まれていた。悲しいから涙を流したり噂話に興じるなどは女性のふるまいであり、男子たるものそんなことはあってはならない、自分にも他人にもそんなことは決して許してはならない、そんな風に思っていたし、いまだに無意識にはそんな価値観の残滓が見え隠れする。

そんな価値観の延長でボクシングというスポーツに熱中したり、堅牢なロジックを振りかざしたり、自分自身の感情を沈黙させたりする所作が染みついた。

しかし、青年期に哲学や社会学やフェミニズムなどを学ぶなかで、自分がジェンダーバイアスの犠牲者になりその結果他者や自分自身を傷つけていることを知り、それが生きづらさの原因にもなっており、どうしたら自分が男らしさの呪縛や囚われから解放されうるかなどを思いめぐらし、さまざまな行動にも移していった。

ケアという仕事を選択することは、私にとってはそんな、男らしさの呪縛からの解放プロジェクトの一つだった。そして今現在はソーシャルビジネスのマネジメントを担いケア現場から距離のある所に身を置くようになった私にとって、育児にコミットすることは男らしさの呪縛からの解放というライフワークの重要な場面でもあり、気力と体力の許す範囲でかなう限り参加したいとも考えている。

そんなわけで週末を中心に妻と共に子育てを担っているのだが、いつも再確認させられることがある。

それはすなわち、ケアをずっとやってきた私より、クリエイティブの世界にずっといた彼女の方が、だいぶ子供のケアが得意である、ということだ。

特に細かな変化に対する気づきのレベルが全然違う。

実はこの感覚はグループホームやデイサービスで高齢者の方々のケアに携わっていたときもたびたび抱いた。

女性と男性では気づき力がまるで違う。

多くの男性は、天性の鈍感さがある。

これが脳の男女差に起因するのか、それともジェンダー秩序に基づく性別役割分業の結果なのか、その両方なのか、分からない。もちろん個人差があり男性より鈍感な女性も、女性より敏感な男性もいるにはいる。

しかし残念ながら私はこの例外に属さないことは自他ともに認めることだ。

しょっちゅう女性の先輩スタッフに怒られたものだ。

なにボケっとしてるのよ!○○さん立ち上がりそうじゃない!転倒したらどうするのよ!!

諸先輩の教育の成果もいまいちであり、相も変わらず鈍重さは変わらない。いまは先輩スタッフに代わって妻の指導を受けている。

ちなみにパートタイムイクメンの時間は実に楽しい。時折妻から降ってくる叱責は痛いが、全般的に最高にハッピーな時間だ。

このハッピーな時間を通じて、ぜひさらなる能力開発、他者の存在に心から関心を抱き微細な変化に気づく感度を高めたい。

それは人間らしさの証のようでもあるし、兵士養成プログラムが無感動の主体を形成することから始まるのだとしたら、その逆をいく、子育てはまさに平和を作る主体の創造過程といえるかもしれない。

私にとってビジネスフレームワークを習得してマネジメントに運用し成果の最大化を図ることは非常に重要なタスクでありそこから学習されることは多大なものがあるが、イクメンタイムを通じた人生の学びにはかなわないというのが率直な感想である。

というわけで、二人の娘は人生で最も大切なことを教えてくれる師匠のような存在だ。

最大限のリスペクトを持って彼女たちと今後もおつきあいさせていただきたいと思う。


高浜敏之
土屋訪問介護事業所GM。ユースタイルラボラトリー株式会社COO。全国障害者在宅生活支援事業者連絡会代表。慶応義塾大学文学部卒。哲学科美学美術史学専攻。20代は様々な職業遍歴を経て、30歳で重度訪問介護というサービスと出会い、福祉の仕事をスタート。それと同時に日本の障害者運動のパイオニアである新田勲さんが代表を務める全国公的介護保障要求者組合の事務局を担うことに。30代はホームレス支援、移住外国人労働者支援など社会的マイナリティーの権利回復運動にコミット。その後東京都中野区にあるグループホームでの介護職員を経て2012年5月にユースタイルラボラトリー株式会社の立ち上げに参加。デイサービス土屋中野坂上の管理者、生活相談員を経て土屋訪問介護事業所やユースタイルカレッジを立ち上げる。現在は土屋訪問介護事業所を統括しながら事業者ネットワークの発起人として活動する。趣味はボクシング、アート、文学、など。