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「社会を変える」を仕事にする―社会起業家という生き方 駒崎 弘樹(著)

「社会を変える」を仕事にする―社会起業家という生き方 駒崎 弘樹(著)

吉岡理恵




ソーシャルビジネスという単語を知らない方は当社の職員ではいないと思いますが、この言葉を当社に入社してから耳にした、という方は意外と多いのではと思います。かくいう私もその一人で、つい数年前までこの横文字を知らずにいました。そして、日本のソーシャルビジネス界の代表格が本書の著者の駒崎弘樹さんが代表理事を務めるNPO法人フローレンスです。

駒崎弘樹さんは1979年生まれだそうで、私とほぼ同世代の方です。1980年前後生まれの世代は、日本の失われた時代の中に10代のほぼすべてが含まれていて、内容はよく分からなくても新聞、テレビ、世間話、大人が口にする話題には常にネガティブな言葉が飛び交う時代に育ちました。そしていい学校に行くために、いい会社に入るために努力する、という神話のような人生の目標設定が、いい会社自体がなくなってしまうかもしれない、いい会社に入ってもリストラされるかもしれない、という事実をもって空疎化していった時代でした。しかしながら、いつの時代でも有能な人というのはいるもので、この失われた時代にまったく失われていない熱意を抱く同世代の方が、日本の新しいビジネスの形態を作り上げたことは、同世代の人間として誇らしい気分にもなります。

NPO法人フローレンスは、病児保育をソーシャルミッションとして掲げている団体です。フローレンス・ナイチンゲールのファーストネームを掲げたこの法人は、子供が風邪をひくと親は子供を保育園に預けることができないため、親は致し方なく不定期に突然会社を休むことになり、結果として育児と仕事の両立ができなくて困っている、そういう親がたくさんいる、という社会問題の解決のために設立されたそうです。本書は設立者の駒崎さんが、アメリカ留学時代に、異国からみた日本の有様に悲哀の感情を抱き、漠然と日本の役に立ちたいと思ったこと、そのアメリカで事業化したNPOを目の当たりにしたこと、ご自身のお母さまとのやり取りからこの社会問題に気付き、その解決を決意したこと、がテンポのよい回顧録となっていて、分かりやすく読みやすいです。本書を読んでいると若いお兄さんの起業ごっこ、とも感じられますが、現在進行形で駒崎さんが手がけていることは、まさに社会を変えていることだと思います。またつい先日も、子供の重度訪問介護利用の検討について寄稿されていて、私たちが重度訪問介護の現場で見聞きしていることと同じテーマに疑問を抱き、その解決を課題にされていました。

本書を読んで、そして時折目にする現在のフローレンスの取組みを見て思うのは、著者の駒崎さんは法人の設立当初と変わらぬ思いで本気で社会をよくしたい、と思って今も多方面にアンテナを張って活動していらっしゃるということです。そして、意欲と行動と能力があれば、社会を変えることができるということを実践している、日本のソーシャルビジネスリーダーのロールモデルといえると思います。



吉岡理恵

1981年東京都生まれ、東京都立大学経済学部卒業、大学在学中にオーストラリア、マッコーリー大学に公費留学、帰国後法律系事務所でOLとして働く、2014年東京都職場体験プログラムを機にESLのデイサービス、ユースタイル諏訪ノ森で介護職デビュー、2016年より常勤職員として土屋訪問介護事業所の重度訪問介護事業に参加し各地のマネージャーを務め現在に至る、2018年介護福祉士登録、OL時代にフルマラソンに挑戦し完走8回、趣味は料理と読書