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私の子育て日記② 強いること

私の子育て日記② 強いること

高浜敏之



子育てをしていると、ときおり娘たちの意に反することを強いることがある。

つまり、本人たちがやりたくないことをしてもらったり、やりたいことを止めることがある。

例えばチャイルドシートのベルトをするとき、予防注射を打つとき、ほしいおもちゃをもぎ取るときなど。

時には烈火のごとく怒り、天地がひっくりかえるのではないかというくらいの勢いで号泣することもある。

私たち家族は休日によくみんなで海にいく。

なじみの浜辺にはよく野良犬が登場する。

犬をみると長女は、あ、わんわん!といいながら駆けつけていく。たいがい勢いに押されてわんわんが退散するのだが、近づくのを無理やり止めようとすると

ギャン泣き、必至である。

どうしたら娘たちの激しい抵抗運動に出会うことなく気に入らないことをやってもらうか、または気に入ってることをやめてもらうか、日々試行錯誤している。

そして、そんななかで、ケアの現場の経験をたびたび思い出す。

デイサービスやグループホームで働いているとき、お風呂に入りたがらないご利用者様にいかにお風呂に入ってもらうか、それは私たちにとって1大ミッションである。

重度訪問介護の場合は当事者主権と自己決定が徹底しており、そもそもサービスユーザーの判断能力が前提となってサービス関係が成立しているのでシンプルだった。

原則は、いわれたことを忠実にやる、である。

しかし、ご利用者様が認知症や重度の知的障害を持つ場合は、ただただ言われたことをそのままやってたら重大な事故やトラブルに発展しかねない。

なのでケアする人とケアされる人のコミュニケーションや関係性が双方向的で複雑な感じがする。

ご本人の意向を最大限尊重し、うしろからサポートしつつも、時にご本人のQOLを高めるためにリードしていくような、時に意に反することを強いる場面も求められる。

そういった意味で介護と育児は、そっくりだな、と改めて思う。

前に出たり、後ろに下がったり、横に並んだり、柔軟なポジショニングを通じてお互い最もいい関係性をつないでいく。

人間関係の本質に迫るとても深い営みだと思う。

そしてこのケアの営みは、リーダーシップの本質ともまさに重なる。

入社オリエンテーションでもリーダーシップの本質はリードすることとサポートすることであり、それには強さと優しさが求められる、と説明させていただいてる。

ケアと同じだ。

つまりケアの営みとはリーダーシップをとることでありリーダーシップをとるとはケアするということなのかもしれない。

世の中には、「どうやったらいいリーダーになれるか」的な情報が氾濫しているが、個人的には「それを知りたいなら、介護や育児に参加してみてはどうか」と提案したくなるし、チームメンバーにはよくお話させていただいてる。

話を育児に戻すと、強いること、は一歩間違えると虐待に発展しかねない危険な行為だ。しかも多くの虐待がそうであるように、強いること、は子供のため、という大義のもとに正当化される。実際チャイルドシートのベルトをはめるのを嫌がってる娘に、状況によっては力ずくで対応せざるをえないとき、抵抗してた娘の力がその抵抗が無駄だとしった瞬間に力がスーッと抜けていくのだが、まるで自分が虐待加害者になってしまったような罪悪感を覚えることがある。

この虐待にも転じかねない行為を、適切なケアや正しいリーダーシップに変換するにはどうしたらいいか?

まだ答えは見つからないが、まずは言語非言語を問わずコミュニケーションを絶やさないこと、そして時に、待つ勇気、を持つことかなと思う。

コミュニケーションはときに煩わしい。待つことはときに周囲の環境とのリズムの祖語をきたすため葛藤を引き受ける勇気が必要だ。

正直面倒なことばかりだとも思う。

しかし、この面倒な道を通ることが、子供のためという大義のもと親が虐待加害者になってしまったり、部下のためという大義のもと上司がパワハラ加害者になってしまったり、自分の生活のためという大義のもとサービスユーザーがケアハラスメントの加害者になってしまったり、というすでにあたりまえとなってしまった残酷な風景を社会の中から減らしていくことにつながると思う。

娘のために、チームメンバーのために、そして自分自身のために、あらためて思う。

面倒くさがらずに対話をしていこう、時に、勇気をもって、待つ、という選択をしよう、と。

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高浜敏之
土屋訪問介護事業所GM。ユースタイルラボラトリー株式会社COO。全国障害者在宅生活支援事業者連絡会代表。慶応義塾大学文学部卒。哲学科美学美術史学専攻。20代は様々な職業遍歴を経て、30歳で重度訪問介護というサービスと出会い、福祉の仕事をスタート。それと同時に日本の障害者運動のパイオニアである新田勲さんが代表を務める全国公的介護保障要求者組合の事務局を担うことに。30代はホームレス支援、移住外国人労働者支援など社会的マイナリティーの権利回復運動にコミット。その後東京都中野区にあるグループホームでの介護職員を経て2012年5月にユースタイルラボラトリー株式会社の立ち上げに参加。デイサービス土屋中野坂上の管理者、生活相談員を経て土屋訪問介護事業所やユースタイルカレッジを立ち上げる。現在は土屋訪問介護事業所を統括しながら事業者ネットワークの発起人として活動する。趣味はボクシング、アート、文学、など。