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『すべての「見える化」で会社は変わる』長尾一洋(著)/実務教育出版

『すべての「見える化」で会社は変わる』長尾一洋(著)/実務教育出版

高山力也




よく知られていますように、訪問介護は「孤独な戦い」と言っていいでしょう。確かに在宅のサービスに入るとき、多くの場合で通常ヘルパーはたった一人です。
ですが一人の特定のご利用者様のサービスを形にする上で、まず間違いなく「チーム」で対応することになるかと思います。複数の枠を請け負った場合は勿論ですが、ただ一つのみの枠を請け負った場合でも、何らかのアクシデントが生じたときに備えバックアップが必要だからです。
つまりあるご利用者様にサービスを提供することになったならば、それは必然的に新しいチームが構築されるということを意味します。

本作の著者である長尾氏は、チームが円滑に機能するために必要なことを「コクピット」に例えています。
飛行機が安全に飛行するためには、コクピットの計器類に必要な情報が表示されなければいけませんが、同じようにチームを構成する全てのスタッフに情報共有されていることが重要であると説いています。

まず冒頭で、このような情報共有(=「見える化」)のメリットとして、以下のようなものを挙げています。
・ ビジョンや戦略が身近になり、社員のモチベーションがアップする
・ 会社に共感する若い人が増え、採用活動にとってプラスになる
・ 社内で統一した問題意識を醸成するこよができる
・ 長期・中期・短期の取り組みに一貫性が生まれる
・ クレームやトラブルなど、想定外の情報を即座につかむことができる
・ 内部統制、コンプライアンスが徹底できる
・ 事前に必要な手を打てる先行管理にシフトできる
・ 社員に対する公正公平な評価が可能になる
・ 社員が経営者の目線、意識を持って仕事に取り組めるようになる
・ 社員同士、部門間のコラボレーションが促進される
・ 業務の進め方や仕事のノウハウなどのナレッジを蓄積できる
・ 社員の思考力を日々訓練していくことができる


また本作では「やると決めたことはきっちりやる風土づくり」が大事で、そのために「人の評価」の重要性を強調しております。
「よい企業風土や文化がなかなか醸成されない会社」は「頑張って仕事をしている人が馬鹿を見ることが多く、そうしたことが放置されている」そうです。
これはチームで仕事をする上でも、非常に示唆に富んだ内容だといえます。

本作曰く、「トヨタは付加価値の源泉である工場の「見える化」を進め、日々改善を繰り返して最強の会社になりました」。その上で「21世紀の工場は人間の頭の中」であるとし、各スタッフの「頭の中」にあるものを「先考」すべきと説いています。
さらに「仕事上の相互信頼を生むためには、その人の仕事の内容や成果を知らなければなりません。どういう仕事をしているのかはもちろんのこと、どんな考えで仕事に取り組んでいるのか、そこでどんな結果を出し、それをどう考えているのかといったことです」。正にこれこそチームで仕事を取り組むため最も重要なものだと思います。 これらを実現する上で、著者は「モニタリング」もっと具体的にいえばIT化された「可視化日報」によるリアルタイムのやり取りの重要性を説いています。


翻って現場のことを、末端のスタッフにすべて丸投げしてはいないでしょうか?「ご利用者の状態の変化」や「スケジュール変更」などの必要な情報はちゃんとチーム全体に行き渡っているでしょうか?日々刻々と変わる現場の変化を皆で的確にとらえているでしょうか?
現場での情報共有がなされていなければ、その現場で何が問題になっているのかすらわかりません。
はっきりいってスタッフ一人一人でできることはたかが知れています。関係者全員の英知を結集する必要があるのです。本作のいう「ナレッジ・コラボレーション」によって、本物のサービスが初めて提供できるようになるのでしょう。



【略歴】高山力也
某国立大学大学院を修了後、H11年に当時まだ珍しい再生医療を扱うバイオベンチャーに就職、先端医療領域での新規事業立ち上げに携わる。その後、生殖補助医療領域でのMRを経て、H19年大手ITベンダー系の事業会社に転職、バイオテクノロジーやヘルスケアを専門領域として投資活動や大学との共同研究を手掛ける。またその傍ら、医療経済などに関する見識も深める。H21年に独立、診療所や介護施設の開設支援コンサルを手掛け始める。このときの経験から介護・福祉領域での仕事のやりがいに目覚め、弊社ユースタイルラボラトリー株式会社にはH29年5月より参加。名古屋事業所や北九州小倉事業所など日本全国各地での新事業所立ち上げに関り、現在は土屋訪問介護事業所甲府を担当している。