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心的外傷と回復  ジュディス・L. ハーマン (著), 中井 久夫 (翻訳)

心的外傷と回復  ジュディス・L. ハーマン (著), 中井 久夫 (翻訳)

高浜敏之



本書はつながりを取り戻すことに関する本である。 すはわち、公的世界と私的世界とのつながりを取り戻す本である。 レイプ後生存者と戦闘参加帰還兵との、被殴打女性と政治犯と、 多数の民族を支配した暴君が生みだした強制収容所の生存者と自己の家庭を支配する暴君が生みだした 隠れた小強制収容所の生存者とのコミュニケーションを図る本である

そう序文に書かれた本書は言わずとしれたトラウマ関連書籍の歴史的名著である。

私はちょうど10年くらい前にホームレス支援活動に専心し、その延長で治療共同体の取り組みに関心を持ち、社会運動と精神的解放をいかに接続していくか、諸活動のなかで模索していた時に友人の紹介でこの作品と出会った。

特に目を引いた概念が、サバイバーズミッション、である。

トラウマサバイバーが自らの回復プロセスの中で同様に傷ついた他者のサポートをしたいというミッション感覚と、その支援プロセスを通じてトラウマからのさらなる回復が果たされるという方向性をジュディスハーマンはそう名付けた。

つまり利他的行動の背後に心理的回復というある意味利己的な動機付けを発見したわけであるが、それは当時活動を共にした仲間たちの無報酬の他者支援に対する情熱の根拠のようにも思えた。

トラウマからの回復と他者の幸福を目指した社会的活動はコインの表と裏の関係にあり、サバイバーズミッションは私的なことと公的なことが出会う場所である。

すなわち、利己と利他は相反するものではなく、いずれ出会わざるをえない運命にある。

サバイバーズミッションというコンセプトとの出会いは、社会的活動に内実を、精神的解放に社会的意義を与えた。

そして、私が出会った障害者運動のリーダーたち、とくに安積遊歩さんこそは、このサバイバーズミッションを体現しており、ロールモデルであり、彼女たち/彼らのように自分も生きたい、と思い続けてきた。

自分の傷に注目することは利他的活動のモチベーションを賦活すると思う。傷を通じて深まった自己と他者の分裂はサバイバーズミッションを通じて止揚されていく可能性があるのではないかと思う。

自己と社会の全的解放に関心ある方々におすすめです。


高浜敏之
土屋訪問介護事業所GM。ユースタイルラボラトリー株式会社COO。全国障害者在宅生活支援事業者連絡会代表。慶応義塾大学文学部卒。哲学科美学美術史学専攻。20代は様々な職業遍歴を経て、30歳で重度訪問介護というサービスと出会い、福祉の仕事をスタート。それと同時に日本の障害者運動のパイオニアである新田勲さんが代表を務める全国公的介護保障要求者組合の事務局を担うことに。30代はホームレス支援、移住外国人労働者支援など社会的マイナリティーの権利回復運動にコミット。その後東京都中野区にあるグループホームでの介護職員を経て2012年5月にユースタイルラボラトリー株式会社の立ち上げに参加。デイサービス土屋中野坂上の管理者、生活相談員を経て土屋訪問介護事業所やユースタイルカレッジを立ち上げる。現在は土屋訪問介護事業所を統括しながら事業者ネットワークの発起人として活動する。趣味はボクシング、アート、文学、など。