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『おバカさん』遠藤周作/角川文庫

『おバカさん』遠藤周作/角川文庫

高山力也(甲府サービスマネージャー)



ドストエフスキーの『白恥』という作品をご存じでしょうか?『罪と罰』などで知られるロシア作家のドストエフスキーが究極の善人とは何であるかを描いたものです。
今回ご紹介する『おバカさん』は、遠藤周作ヴァージョンの『白恥』といってもいいかも知れません。

本作の主人公はガストン・ボナパルトというフランス人。氏姓からもわかるようにどうもナポレオンの末裔のようです。
かの英雄、ナポレオン・ボナパルトの末裔は底抜けのお人よしぶりを随所で発揮します。
例えば、お寿司屋さんでナプキンの代わりにふんどしを首に巻いちゃったり・・・。そんなガストンを巴絵は「近代的魅力に全く欠けたウドの大木」と嘲ります。
しかしながらそんなガストンが「素直に他人を愛し、素直にどんな人をも信じ、だまされても、裏切られてもその信頼や愛情の灯をまもり続けていく人間」として、殺し屋の遠藤やその仇である小林といった悪人にも救いの手を差し伸べるのです。
本作は、真の救いをもたらす存在とは何かという意味において、私たちに重要な示唆を与えてくれることでしょう。

ちなみに遠藤周作は手塚治虫や永井豪の漫画で有名なスター・システムを採ることが多く、この愛すべきガストンはそのまんま同じキャラで『悲しみの歌』という作品にも登場しています。勿論こちらもおススメの名作です。
果たしてガストンはキリストの再来なのでしょうか?その答えは読者一人一人の中にあると思います。