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すばらしいチーム9

すばらしいチーム9

吉岡理恵



当社では職員のキャリアアップは早いと思います。そして、ステップアップのポジションチェンジのタイミングで、所信表明のような挨拶をしてもらう機会を設けることが多いです。そして、過去数名の方が、同じような内容を盛り込んでいることに気づきました。それは、「これまで自分は皆さんに助けられてきたし、自分も皆さんを助けてきた、今後も助け合う関係でいてほしい」という一節です。この一節が登場すると「人」という漢字が思い浮かび、こういう思いを自然と口にできる方の作るチームはいいチームなのだろうなと思っています。今回は助け合い、という視点でこのテーマに取り組んでみたいと思います。

訪問介護という仕事は日常生活に何らかの困難を抱える方の生活をサポートするという仕事なのですが、職員間は助け合っている、の一言に尽きると思います。当社においては、利用者の支援に穴をあけないという使命感が誰しもに当然のこととしてあり、この事業そのものの特質から支援をキャンセルするということに対してはあってはならないことだという心理が他法人の事業所と比べても特に強く働いています。そのためどこそこの利用者に本日支援予定だったスタッフを派遣できなくなった、という事態に対してまさにチームとして対応しています。まず担当コーディネーターは、スタッフからのやむを得ないのは分かっているけどできれば耳にしたくなかったキャンセルの一報が届くと、その利用者の支援に関わっているスタッフと他事業所にくまなく声をかけることになります。しかしながらすんなり代替スタッフが見つかることはまれで、たいていは条件つきになります。開始時間には間に合うが終わりの時間までいられないと言われてしまうこともあれば、その逆もありますので、代替可能スタッフの方が早退することになれば早退の時刻から本来の支援終了時刻までは、別のスタッフを手配しなくてはなりません。また、代替可能スタッフを、その日は本来他の利用者に派遣予定だった場合、その代替可能スタッフの他の利用者に対する代替スタッフを探すということになります。よって、代替の代替の代替の代替、というような何連鎖ものやりくりをする必要性が生じることもあり、場合によっては、一人のスタッフのやむを得ないキャンセルにより、2~30人の人間とのやり取りを数時間のうちにすることになります。しかしながら、当然このやり取りは一人ではできないので、仲間に手伝って貰わざるを得ません。管理者と一緒に、何人ものコーディネーターに、それぞれのコーディネーターに紐づく個々のスタッフに声をかけてもらう業務を負担させることになります。この、自分には落ち度がなくても他者に追加業務を負担せざるを得ないこと、場合によっては目の前のチームメイトに今夜の支援をお願いするという非常事態がわりとよくあるのがこの事業の特色なのかなと思います。表向きには、私たちの仕事は利用者の日常生活の支援であるということになっていますが、裏向きには職員間の支援=助け合いも同じ割合で発生しているのが実情だったりします。

介護現場における職員間の助け合いが以上のようなものであれば、事業所内の管理業務での助け合いもあります。人と人の仕事なので、自分の担当利用者と自分との関係がどうしてもうまくいかないこともあります。こちらが誠意をもって発言した一言が、相手の状況と環境にその時にマッチしていないと、自分だけでなく関係者全員の心痛を引き起こす相手のヒステリー状態を生むことがあります。そうなったとしても、利用者の支援に私たちは穴があけられないので、誰かが自分の代わりを務めなくてはなくてはなりません。自分の気持ちも利用者の思いも同じ方向を向いていたとしても、利用者からあなたが気に入らないの、ということになってしまったら、代替の担当者を探して、代替の方に頭を下げて担当変更をお願いすることになります。代替の担当者は、上司、同僚、部下の誰かということになりますが、自分が自分であるがゆえにどうしようもできないことは、人の手を借りざるを得ないですし、同じような状況が誰にでも起こりうる、というのがこの仕事です。これが管理業務での助け合いといえます。

また、事業所には職員がいて、職員と職員の間で不仲の種があるというのはどこの組織でも同じだろうと思います。現場スタッフの代替も利用者の担当変更も、いつ誰がどのようなタイミングでどのような表現を用いて新任候補の方に依頼するかによって、本来依頼できたことも依頼できなくなることがあります。そして、新任候補の方の今抱えている仕事の負担を考慮しながら円滑にスピーディに、新しい仕事を新任候補の方にお願いするのは管理者の業務です。これは管理者が一人一人の職員の状況を把握しているからこそできることであり、これができる人が管理者になっているともいえるかもしれません。

当社は全国的な組織になったので、50を超える事業所があり、そこには事業所間での助け合いもあります。事業所の管理者が何らかで職務を続けられないこともあり、そうなると同一事業所内からの管理者登用というのが美しいのですが、これもそうそううまくいかないこともあります。というのも後継者の方には、それなりの介護現場経験、管理業務経験を当社自体が求めていますし、どれだけ本人が望んだとしても会社が信頼するに足る人物でないとお任せすることができかねてしまいます。管理者はその事業所の顔となる立場ですから、愚痴のようにあちこちで会社の批評批判をする人にはふさわしくなく、職員と職員の間に立って仲裁することができない方、自分が自分であるがゆえにどうしようもできないことに対して頭を下げて人に頼むことができない方にも管理者業務の依頼はできかねます。これは、利用者、職員、関係各所といい関係を築くことができないと、何百人の利用者と二千に近い職員の生活と命を危険にさらすことにもつながるという危険性を、当社が絶対的に回避したいという意志の表れといえるかもしれません。よって、後継の人材が今はいないということになると、異動の手段をとることもあります。後継の方がもともといたチームとしては人材の送り出しは貴重な戦力を失うことになるので痛手です。それでも、当社内の他の事業所がもっと痛手をこうむることになるのなら、当社全体の利益を今は優先し自分たちの傷は自分たちで癒すことを受け入れる、これが組織としての助け合いといえるでしょう。

組織のリーダーとして働いている方は、ときに組織という抽象的物体と働いているというような錯覚をお持ちになるようです。組織は見えても、そこで働いている人の顔が見えないといった感覚でしょうか。このようなリーダーは人材の流出の危機に鈍感です。知らず知らずスタッフの気持ちを自分からもチームからも離していってしまいます。そして助け合いの必要が生じたとき四面楚歌の状態になってしまうようです。そう考えると、いつでも助け合える環境、というのがいいチームの条件の一つなのかもしれません。介護現場での利用者を支援するチーム、事業所としてのチーム、組織としてのチームがあり、チーム内で、チーム間で助け合うことがいつでもできるようになれば、すばらしいチームとなるでしょう。理想は大きくありたいですが完全なるすばらしいチームができあがることは実際には難しいかもしれません。それでも今日あの人を助け、あの人が助けてくれた、という身近な助け合いがあれば私は十分だと思っています。それが実は一番の幸せなのではないかと思うのです。


吉岡理恵

1981年東京都生まれ、東京都立大学経済学部卒業、大学在学中にオーストラリア、マッコーリー大学に公費留学、帰国後法律系事務所でOLとして働く、2014年東京都職場体験プログラムを機にESLのデイサービス、ユースタイル諏訪ノ森で介護職デビュー、2016年より常勤職員として土屋訪問介護事業所の重度訪問介護事業に参加し各地のマネージャーを務め現在に至る、2018年介護福祉士登録、OL時代にフルマラソンに挑戦し完走8回、趣味は料理と読書