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『究極理論への夢』スティーヴン・ワインバーグ(著)/小尾伸弥&加藤正昭(訳)/ダイヤモンド社

『究極理論への夢』スティーヴン・ワインバーグ(著)/小尾伸弥&加藤正昭(訳)/ダイヤモンド社

高山力也(甲府サービスマネージャー)



学生時代の私の友人の一人に、スティーヴン・ホーキング博士(この方もALSでしたね)の熱烈なマニアがおりました。当時は彼を始めとする同級生と一緒に、夜な夜な安酒を片手に宇宙論や世界の仕組みについて語り明かしたものです。

現代物理学における基本相互作用は「重力」「電磁気力」「強い相互作用」「弱い相互作用」の4つですが、本作の著者であるスティーヴン・ワインバーグは、このうち「電磁気力」と「弱い相互作用」を統合するワインバーグ・サラム理論を完成させ、その功で’79年にノーベル物理学賞を受賞した人物です。
ちなみに一般に馴染みの薄そうな相互作用を解説しますと、「強い相互作用」は原子核を構成する陽子(本来なら陽子同士は同じ磁荷なので反発します)や中性子をまとめる力で、「弱い相互作用」はベータ崩壊(中性子が崩壊して陽子と電子およびニュートリノを放出すること※1)を引き起こす力のことです。

そこで著者がいわくには、この世界の理を説明するに、4つの相互作用というのはちょっと複雑過ぎるそうです。この世界の始まりを想像するにしても、いきなり陽子と中性子からなる核子の周りを、極めて調和的(=電子殻※2)に電子が回る構造をもつ原子が誕生したのは不思議といわざるを得ません。よって、これら全てを統一して説明できるさらなる理論が存在すると主張しています。
著者がこのような考えに至った根拠とは、この世界はより「シンプル」かつ「エレガント(秩序だった美しさ)」に成り立っている筈との確信でした。各素粒子が4つの相互作用に支配されて動いている様子を説明するためには、さらにその上で支配する理論が存在するに違いないと考えたわけですね。

より「シンプル」で「エレガント」なものに基本原理を見出す著者の見方には、何やら魅力を感じます。例えば介護技術一つとっても、無駄のない流れるような手技を目の当たりにしますと心動かされますものがありますから。

本作自体は、著者であるS.ワインバーグ博士が自身の理論を証明する超巨大素粒子加速衝突器(SCC)を作るための研究資金を募る目的のものに過ぎません。ですが万物・神羅万象に「エレガント」を求める著者の主張には少なからず説得力があるのではないでしょうか。

※1 より正確には、電子(ベータ粒子)と反電子ニュートリノを放出するβ‐崩壊や、陽電子と電子ニュートリノを放出するβ+崩壊などがあります。
※2 電子軌道の内側から2n*2(つまり最も内側のK殻であれば1の2乗である2に2を掛けた2が、続くL殻であれば2の2乗である4に2を掛けた8が、さらにM殻であれば3の2乗である9に2を掛けた18が、その軌道で振舞える電子の最大数)となり、この法則を基に元素の周期表は作られています。