ニュース&ブログ

介護・介助サービスを利用する側にも厳守すべき作法がある その1

介護・介助サービスを利用する側にも厳守すべき作法がある その1

古本聡




介護・介助サービスを利用する側にも厳守すべき作法がある

介護・介助職員による利用者に対する虐待がしばしば取り沙汰されますが、実は利用者側からの暴力・暴言といったケースも介護の現場では存在します。所謂、「ケアハラスメント」です。それでも今はまだ、「介護・介助サービス」、「利用者側」、「心得」などのワードでネット検索をしてみても、利用者側(本稿では特に身体障害者を指す)が心得ているべき作法、ルールについては何の情報も得られません。しかし、ネットで見つからないからと言ってそんなものは無い、あるいは不必要だという訳ではありませんよね。それは、あるんです。そして、そのような「作法」は、筆者が若かりし頃の障害者自立生活黎明期にさんざん議論されて、不文律のような形ながらも、ほぼ確立していたのです。もしかすると、介護・介助というものが制度化され、ビジネス化されてきた過程で、忘れられかけているのかもしれませんね。

ケアハラスメントが大きな問題になったり、ケアサービス利用者側からの強烈すぎる言葉の暴力や、根拠は薄いがヤマアラシの針のように尖った拒否反応などに晒され、経験の浅いまたは年齢的に若いケアラーが、ショックと失意から離職していくのを見ていると、筆者としては、ここに今一度、若い時に取り決められていたルール事項を思い出しながら述べてみようと思います。

先ずは、ケア利用当事者自身が当然のこととして、自分の心と身体の状態について詳しく把握し認識していなければならない事項を見ていきましょう。これらの事柄を深く知っておくことは、介護・介助を受ける際により高い満足度を得るためには絶対に必要なのです。

1. 自分の心と身体の感覚に忠実かつ敏感になる
自分を知らなければ自己表現なんてできません。さらに、自分の障害を自分の一部として客観的に見つめて、動かない身体部位や、動けないことからくる心の苛つきを、できる限り冷静にかつ科学的に把握することが大切です。これは、障害当事者が自らを障害者としてはっきり認識し、他人に、特に障害を持たない人たちにどこが、どういう風に痛いのか、苦しいのか、辛いのか、そういう痛みがあるとどのような心境になるのかについて情報を伝えようとする際に、予めしておかなければならない自己分析です。こうして身体と心の痛みや苦しみを言葉にして説明できるようにしておけば、介護・介助者のスキルの高低や業務経験の多少にあまり影響を受けずに、一定の介護満足度は得られるはず。
介護・介助される側は、「自分の痛み・苦しみは、経験豊富なヘルパーさんでさえも100%理解できる訳ではない」、という事実を認識すべきなのです。他人なのですから当然と言えば当然ですよね。でも、だからこそ、ケアを受ける側は、自分の心身の状態についてケアをする側にできる限り多く伝えなければならないのです。痛みや快感のツボは千差万別。自分の身体を自分で知ることが先ず大事ですが、それを相手に伝えるのはその次に大事です。どちらの側にとっても、ケアは一人で完結する仕事ではないからです。

2. 自分にできることと、できないことを明確にする。
介護・介助を受ける側は、赤の他人のヘルパーに介助される自分の状態を中々受け入れきれないのかもしれません。昨日まで親御さんや気心が知れた人たち、あるいはマニュアル通りの仕事をする施設職員に頼ってできていた事柄が、今日、ヘルパーさんに交代したとたんにできなくなったり、満足度が変わってしまうのですから、その状況を認めるのは相当に難しいはずです。そのせいで、できないこともできると言ったり、つい無理をしがちです。無理をしたって自分が困るだけです。ひいては介護・介助する人への不満も大きくなり、人間関係も悪くなってしまいます。できないことはできない、と冷静にはっきり言いましょう。
また、このことを心得ていないと、「失われた能力を補い、残された能力を活かす」こともままならず、身体の調子を崩して残存能力まで失くしてしまうことも考えられます。そんなことにでもなったら、困るのは自分自身です。

3. 不必要な我慢や余計な遠慮はしない
他人に世話されることに慣れていない人達は、我慢や遠慮を美徳と考える傾向があります。我慢強い人は痛みにも強いが、そのせいで、病気に罹ったり、生活の質が落ちたり、はたまた障害が悪化してしまう恐れさえあります。心にも身体にも、不必要な我慢は何の得にもなりません。

もう一つ大事なことは、余計な遠慮をしないことです。プロの介護・介助者にとって、介護される人が余計な遠慮をしたり過剰に恥ずかしがったりすると、これほどやりにくいものはありません。病気なら自分の裸体も医者の前で晒せるし、下半身を看護師さんに洗ってもらうことも受けいれられますよね。それと同じです。

相手はプロで、自分は介護が必要な状態、とわりきって、遠慮なく介護を受け入れましょう。キツイことを言うようですが、他人に頼る以外に選択肢のない人なら、プロの介護を潔く受けましょう。

つづく

【略歴】 昭和32年生まれ、脳性麻痺1種1級、6歳からの5年間余、旧ソ連の障がい児収容施設での生活を経験した最初で最後の日本人。早稲田大学商学部卒、大学院生だった25歳より英語とロシア語翻訳会社を経営。16年4月よりユースタイルカレッジにて障がい当事者としての講話を担当。