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介護・介助サービスを利用する側にも厳守すべき作法がある その2

介護・介助サービスを利用する側にも厳守すべき作法がある その2

古本聡



4. 何が心地よくて、心地悪いかをはっきり言葉で伝える
介護・介助者から見れば、利用者の身体は所詮他人のものです。他人の苦しみは他人の苦しみ、他人の快は他人の快。どこがどう痛いか痒いかなんて、他人には「言って貰わなきゃ分からない」ものです。

それに、きちんと相手に伝えないと、相手のスキルもアップしません。「言わなくても、それ位分かるでしょ!」の以心伝心のようなことは、夫婦や家族間でも通用しません。夫婦は他人、家族及び介護・介助職は考えも精神文化も違うと思えば、「言わなきゃ通じない」。そして「言えば分かる」相手として捉えるべきではないでしょうか。

最も困るのは、「言っても聞いてもらえない、または伝わらない」場合ですよね、これはコミュニケーションあるいは介護・介助職の資質に問題があります。こういうときは、遠慮なくヘルパーさんをチェンジしてもらいましょう。夫婦だって親子だって同じです。相手と良い関係を維持していこうと思ったら、心地悪いことだけでなく、心地好いこともきちんと伝えるのが大事です。文句ばっかり言っていても、人間関係も自分の生活の質もどんどん悪くなっていくだけですからね。

5. 相手が受け入れ易い言い方を選ぶ
相手にとって愉快ではないことを伝えるには、ちょっとした技術が要ります。「自分さえ黙っていれば、ここは丸く収まる」と不満を口にしない利用者さんが多い一方で、手榴弾のような必殺的な言葉を相手に投げつけてしまう人も結構いるようです。イヤなことはイヤだ、とはっきり言うべきなのは確かですが、しかし、相手に受け入れ易い言い方で表現することは大切な事項です。そして、感情的になって言い過ぎることも要注意です。相手を傷つけることなく、相手の非を認めさせる。これがオトナのテクニック、というやつです。

ここで肝要なことは、正当な苦情や批判、「例えば、痛いので、〇〇をこういう風にもう少し工夫をしてくれ」などの建設的な申し入れは大いに伝えるべきですが、「チッ」と舌打ちをする、相手を睨み付ける、口を利かない、「バカ」、「のろま」、「親の顔が見たい」などといった相手の人格をも否定する言動は絶対に慎むべきでしょう。これは、利用者として、あるいは障害者としてNGである前に、人間としてNGです。

6. 馴れ馴れしい言葉づかいを拒否する 親しくなれば、言葉遣いも変わります。日本語には赤の他人との関係をつくりだすために、本来、親族に対して使われることばを転用するという用語法さえあります。介護施設、あるいは訪問介護でもしばしば問題になるのが、介護・介助職員が入居者や利用者に対し「~君」、「~ちゃん」と呼んだり、「アーンして」など、赤ちゃん言葉で話しかけたりすることです。筆者自身も何度もこのような状況を経験してきました。やはり、利用者さんの人格を尊重して「さん」付け呼称が常識的ですよね。もし、そうでないなら、そう呼んでもらえるように要求しましょう。きちんとした施設や事業者なら、職員をそのように教育・訓練しています。

利用者の方としては、言葉遣いも敬語・丁寧語を崩さないのがお互いのために良いでしょう。敬語・丁寧語は、相手との間に一定の距離を置く技法です。これを使いつづける限り、「私はあなたとの距離を必要以上に縮めるつもりはありませんよ」というメッセージが伝わります。
こういう儀礼的な距離が必要なのは、介護・介助業務が相手との接触を伴い、身体の隠しておきたい部分をも相手に曝け出す、一つの人間関係だからです。一方で距離を保てない関係は、もう一方で一定の距離を設けておくことでバランスをとる方が良いのはないでしょうか。

7. 介護・介助してくれる相手に、過剰な期待や依存をしない

親しくなれば甘えが出ます。仕事で関係している以上に、相手にもっと深く踏みこみたい気持ちがつのります。介護・介助される側の心得の中では、「感謝や好意は、言葉と態度でのみ常識的に許容される範囲内で伝える」というルールを守るのも大切なことです。相手に踏み込めば踏み込むほど、相手に対する期待と依存は膨らんでいき、過剰なものになっていきます。実際に働いている介護・介助職の人たちに聞くと、利用者さんの笑顔や感謝の言葉が何よりの手ごたえ、やりがい、だと言われます。関係性の度合いとしては、これぐらいが丁度良いのではないでしょうか。

他にも介護を上手く受け入れるために役立つ心得はたくさんあります。介護を受ける側もノウハウを身につけて、心地良い介護を受けられるように改善しましょう。

つづく


【略歴】 昭和32年生まれ、脳性麻痺1種1級、6歳からの5年間余、旧ソ連の障がい児収容施設での生活を経験した最初で最後の日本人。早稲田大学商学部卒、大学院生だった25歳より英語とロシア語翻訳会社を経営。16年4月よりユースタイルカレッジにて障がい当事者としての講話を担当。