ニュース&ブログ

守るべきは残される家族とヘルパー達

守るべきは残される家族とヘルパー達

吉田政弘(兵庫エリアマネージャー)



重度訪問介護の現場ではご家族と関係者一同が担当者会議という形で集まり、利用者の最期を想定した緊急時の対応を話し合うことがある。毎回大きな論点になるのは、利用者の容体が急変した場合に救急車を呼ぶか呼ばないかである。

重度訪問介護で在宅生活を送られている当事者の方は、ほとんどの場合自宅で最期を迎えたいとお考えである。ご家族も本人の意思を尊重したいと考えている場合が多い。先日の担当者会議でもご利用者の奥様が「本人が家で最期を迎えたいと言っているので、最期になりそうな場合は救急車を呼ばないでほしい。」と仰っていた。この奥様はご利用者の介護をとても献身的に行い、ご利用者のことを深く想っており、上記の発言も心から利用者ご本人のことを思ってのものである。日頃から利用者ご本人が「死にたい」と訴えていることから上記のお言葉が出たのかもしれない。

このようなご家族の発言はよくあり、そのままご本人、ご家族の意思を尊重した形で緊急時対応が組み立てられることも多いが、先日の担当者会議に出席していた訪問看護師の発言がとても印象的だったので、ご紹介したい。

「利用者ご本人の「死にたい」というお気持ちは私たち(看護師)もよく理解している。そのお考えを受けて奥様が延命となるような救急車対応に消極的になっているのもよく理解している。しかし、私たち看護師がそのような緊急時に優先的に守るべきはこれから亡くなるという方(利用者ご本人)ではなく、残されるご家族とその方に親身に関わってきているヘルパー達の方です。ドクターや訪問看護が来るまでの最短20分の間、救急車を呼ばずにその場で利用者ご本人が苦しむ姿を見て、亡くなる様子を見たら、あとあと奥様もその場にいたヘルパーさんも「あの時もっと何かできたのではないか、、、」と苦しむことになる。仮に奥様はご家族だから納得できたとしても、ヘルパーはその状況がトラウマになり、ずっと苦しむことになってしまう。ヘルパー人生が終ってしまう。ヘルパーしかいない状況の時にも救急車を呼ぶなというのはヘルパーにとってとても酷なことです。私たちはそのような現場をいくつか見てきている。奥様も、私たち(看護師)も、ヘルパーさんもご利用者には生きていてほしいと願っているし、出来る限りのことはしてあげたいと思っている。これはエゴであり、ご本人の希望ではないかもしれないが、奥様とヘルパーに悔いが残らない選択を私はしたい。そのようなトータルサポートも看護師の仕事です。」

私はこの看護師のお言葉にとても感銘を受け、視野が広がった感覚を覚えた。

介護では何よりも利用者ご本人の希望に寄り添うことが重視されるし、そうあって然るべきと私も考えている。しかし、寄り添いすぎることが時にヘルパーにとって酷な選択になってしまうことがある。

「守るべきは残されるご家族とヘルパー達」

私も重度訪問介護のマネジメントをしていく上でこの考え方を意識していきたいと思う。



【略歴】吉田政弘(1982年12月生 37歳)
H18:一橋大学経済学部卒業
H18~H27: 中小企業専門の政府系政策金融機関
(H23~H24:経済産業省中小企業庁に出向)
H27~H30:国内経営コンサルティングファーム
H30~:ユースタイルラボラトリー㈱(現職)
 高校時代に父がリストラを受けて失業した経験から経済学の勉強を志し、一橋大学経済学部に入学・卒業(H18)。
 福祉業界への就職を考えるも、給与面等現実的な問題から断念。中小企業の安定・発展に貢献するという考えから、中小企業専門の政府系政策金融機関に就職。そこで様々な業界の慣行や業界特性を学ぶ。
 H23~H24の2年間は経済産業省中小企業庁に出向。国会議論を通じた支援法、支援施策の策定プロセスや予算要求プロセスを経験し、国策の成立プロセスを体験。
 H27には企業側に立った事業再生コンサルティングを志し、国内経営コンサルティングファームに転職。そこでの介護施設再建の経験から介護業界の発展の一助を志し、自身も介護業界に身を置くことを決意。
 H30ユースタイルラボラトリー㈱と出会い、様々な重度訪問介護の現場を経験し、現在は「すべての必要な人に必要なケアを」届けるという理念の下、業界発展への貢献を目指して日々奮闘している。