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第三回土屋訪問介護事業所連続学習会のお知らせ

第三回土屋訪問介護事業所連続学習会のお知らせ

吉岡理恵




重度訪問介護従事者の、誰もが一度は感じてしまう「あの利用者のところに行くのが苦痛…」という心境があります。そして事業所の職員がこの気持ちを言葉として発してしまうと、事業所管理者やコーディネーターはその職員の労働拒否とも取れるこの発言の理由を聞き、どう対応するかをその都度考えていきます。ほとんどのケースでは、職員、利用者、事業所のどれにも非があり、どちらの非が今回は多かった、という比重を判断して、この度の不和の解消のための話し合いを行い、一番負担のかかっていたところの軽減を検討していきます。そして事業所管理者やコーディネーターは、職員に対しては苦痛と思わせてしまったことに申し訳ないと思いつつも何かもっと方法はなかったのだろうかと思い、利用者に対しては介護労働力不足の危機意識が足りないのではないかと疑問を抱き、自分たちも介護業界の働き手ではあるんだけどな、とため息をつきます。

ご存じの通り、現行の障害福祉サービスは障害者・難病の方々が介護保障を要求し、やっとの思いで策定された制度を基盤として運用されています。この制度下で、障害当事者と介護従事者それぞれが得たものがあります。それは、障害当事者は時間、介護従事者は報酬です。これにより、障害当事者は与えられ、そして限られた時間を有効活用する必要が生じ、介護従事者はいかに高い報酬を得るかということにそれぞれの価値の置き所も定められたということはないでしょうか。

障害当事者は、20年以上にわたる障害者運動を通して自由と主権を回復し、重度訪問介護・居宅介護のホームヘルプサービスにおいては、介護従事者によるサービス提供時間を獲得しました。しかしながら、回復した自由と主権のもとに獲得したその時間の使い方が、障害当事者にほぼ一任されたことで、障害当事者としてはいかに介護従事者という資源を有効活用するかに頭脳明晰な人ほど注力し、ときにそれが介護従事者を自由自在に操るということに発展してしまったように思います。そして、居宅内というプライベートゾーンかつ一対一の人間関係のもとで起こっていることに対しては誰もが近寄りがたく、たとえ何か問題が起こったとしてもその問題の顕在化がどうしても遅れてしまうということはないでしょうか。

また、介護従事者は従業員として雇用契約を交わした法人組織で働いていく中で、各利用者宅での介護労働の負荷を比較することができるようになりました。利用者が、介護従事者の尊厳を無視するかのような態度をとったり、泣きすがるように介護従事者を慕うようになると、介護従事者の理性と感情のバランスが少しずつ崩れ始め、介護従事者としては精神的な苦痛を感じるようになります。一方で、介護従事者も人間なのだからと人と人として対等かつ相互リスペクトのもとに介護労働現場を提供する利用者に対しては今後もずっと継続して訪問したい、何らかの形で関わり続けたいと思うようになります。どんなに良心が咎めても介護従事者が利用者それぞれを比較し、介護従事者にとってより居心地のいい労働環境を求めること、そしてそれが介護従事者本人の報酬に直結するということは、これもまたこの重度訪問介護の真実だったりします。

「あの利用者のところに行くのが苦痛…」「この仕事が嫌いになったわけではないけれど、あの利用者だけは関わりたくない」という本音は訪問介護従事者が一度は思ったことではないでしょうか。この心境の背景にあるものは、居心地のいい労働環境のもとでたくさんの報酬を得たいという誰しもにどの業界にでもある願望だと思います。この願望が叶うことは永遠になくても、利用者と、事業者と、介護従事者のそれぞれの立場からの歩み寄りは求められているように思います。利用者の自由と主権を侵さず、管理職を含めた介護従事者の心身の健康と収入の保証がなければ、この制度そのものの存続がより一層難しくなっていくのではいかと重度訪問介護の一事業者としてここに問題提起をしたく、この度の学習会のテーマとさせていただきました。

皆様是非ご参加ください。

◆日時:2019年12月12日(木)

◆場所:
土屋訪問介護事業所 研修室
〒164-0011東京都中野区中央一丁目35番6号レッチフィールド中野坂上ビル3F

◆時間:19:00~21:00(開場18:30)
① 介護現場での障害当事者と介護従事者の対等な関係 (古本聡さん)
② 古本聡さん、平田真利恵さん、佐藤飛美のライブトーク

◆定員:80名

◆申込:お申込はこちらの申込フォームより事前にお申込みください。
※先着順、参加無料

【メイン講師】
古本聡(こもとさとし)さん
昭和32年生まれ、脳性麻痺1種1級、6歳からの5年間余、旧ソ連の障がい児収容施設での生活を経験した最初で最後の日本人。早稲田大学商学部卒、大学院生だった25歳より英語とロシア語翻訳会社を経営。16年4月よりユースタイルカレッジにて障がい当事者として実習/講話を担当。

【ゲスト】
平田真利恵(ひらたまりえ)さん
昭和53年生まれ、脳性麻痺1種1級。
2002年の秋、「東京で自立生活がしたい」という思いだけで九州・宮崎から上京。障害者団体で3年ほど自立支援の活動をした後、2007年女の子を出産。シングルマザーとして、介護者達と二人三脚で子育て中。地域のボランティアセンターで、イラスト作成や講演活動を行なっている。

【訪問介護従事者代表】
佐藤飛美(さとうあすみ)
昭和56年生まれ、介護福祉士
2016年、土屋訪問介護事業所の非常勤アルバイトからスタートし、現在はマネージャーとして東京エリアを中心に関東ブロックの運営に携わる。全国障害者在宅生活支援事業者連絡会東京支部長。

【主催】
土屋訪問介護事業所
ユースタイルラボラトリー株式会社
全国障害者在宅生活支援事業者連絡会