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利用者の皆様へ~土屋訪問介護事業所 利用者ホットライン開設のお知らせ~

利用者の皆様へ~土屋訪問介護事業所 利用者ホットライン開設のお知らせ~

土屋訪問介護事業所




土屋訪問介護事業所では、相談や苦情などを受け付ける利用者専用ホットラインを開設いたしました。弊所ヘルパーや担当コーディネーターに言いにくいことがありましたら、こちらのホットラインにご連絡いただきますようお願いいたします。相談・苦情はメール(宛先:satoshi.komoto@eustylelab.co.jp)で受け付けます。

この利用者ホットラインは、自らも障害当事者である古本聡が担当します。

【重度障害者支援サービス利用者ならびにご家族の皆様へ】

本文は、土屋訪問介護事業所の重度障害者支援・介護サービスをご利用になられる利用者様ならびにそのご家族様への緊急メッセージです。是非とも皆様の深いご理解を頂けますようお願い申し上げます。ちなみに、この文章の作成者も重度身体障害者であり、あくまでも当事者の目線で書いていることを、予め申し述べておきます。

さて、これまで介護現場での利用者に対する虐待は取り沙汰されてきましたが、ここ数年程、利用者側からの暴力・暴言といった、所謂「介護ハラスメント」も大きな社会問題になってきています。具体的には、介護職員に対して容姿や勤務態度をきつい言葉でなじるなどの暴言や、身体介助時に殴ったり、物を投げつけたり、噛みつくといった暴力があります。さらに男性利用者が女性職員に卑猥な言葉を口にする、胸やお尻を触わるといったセクハラも報告されています。介護従事者組合「UAゼンセン・日本介護クラフトユニオン(NCCU)」が2018年に行った調査によると、実に介護職員の凡そ80%が先記いずれかのハラスメントを受けていることが明らかになっています。また、この問題の深刻化を見て厚生労働省が2018年、「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」を作成するまでの事態となっています。弊社介護スタッフの報告ならびに離職率などから考えて、弊社介護サービス提供現場でも同じような状況が生じていると判断されます。

弊社では、このような問題の発生を抑制していくべく、介護スタッフのカウンセリングや様々なスキルアップ対策、学習会を実施し対応していますが、今般、利用者様とご家族の皆様にもその考えを弊社からお呼び掛けをさせて頂こうということになりました。

皆様に何よりも深くご理解いただきたいのは、「障害者介護の人材は無尽蔵ではない」、「それどころか、極度に不足している」という事実です。一般に「介護」と言えば、「高齢者介護」を思い浮かべる人が圧倒的に多い中で「障害者介護」は非常にマイナーな部門なのです。したがって、自ら選択して障害者の介護を目指そうとする人は、大変希少で貴重な存在だとも言えるわけです。代わりの人材はそう簡単には見つかりません。また、介護という仕事が「誰でもができる単純労働」などでは決してない、という点にも目を向けていただきたく思います。

さらに、弊社で開催されている重度訪問介護従業者養成研修統合課程の受講生は、障害当事者のことをもっと深く知りたい、介護のノウハウを学びたい、そして誠意を持って仕事に当たりたい、という大きな熱意を持つ人ばかりですが、そういう純粋な気持ちがあるからこそ、ヘルパーさんたちは、利用者側からの棘のように痛い言葉や不必要に酷な仕打ちに大きなショックを受けてしまい、心折れて、最悪の場合、志半ばで退職する、ということになってしまうのです。

私たちのこうした取り組みは、介護・介助という活動がまだ制度化されていなかった時代に、障害者解放・自立運動の中で育まれ、改善に改善を重ねてきた障害者・介助者間のあくまでも人間的な関係を構築しようとする先達者の強い理念に基づくものです。その考え方は、次の新田勲という運動家の文章に集約されています。

『重度障害者の自立生活は介助者なしでは成立・継続しません。…(中略)… 介護料を国が負担することで、「弱者は健全者と対等にものを言ったり、活動したりすることができる」関係になり、ともに差別をなく していこうとする背景ができるのです』。

こうして、双方の保障を目指す介護料要求が根気強く提起され、そして、その構想は障害当事者および賛同者、支持者らの弛まない努力により文字通りゼロから作り上げられた現在の介護制度にまで発展してきたわけですが、その具現形態の一つが、土屋訪問介護事業所が現在全力で展開している、社会的課題の解決を慈善行為としてではなく、利益を追求し事業を拡大しながら行う新しいビジネスモデル、と定義されるソーシャルビジネスなのです。

障害の有無に関係なく、人は一人で生きられません。そこに必要なのは互いに心を通わせる人間関係です。利用者・介護者の関係も同じです。さらに言えば、利用者様ひとりひとりの生活の質を高めて行こうとすることへの賛同、支援、支持、そして志を同じくすることだと、私たちは考えています。このような関係は、利用者・介護者両方が、今でも基本的には変わっていないし、変えてはならない、と考えるべきではないでしょうか。

その一方で、時代が移り、利用者側の世代も若くなっていき、以前の障害者運動の理念、利用者。介護者の基本的な人間関係像が忘れられてきてしまったのではないでしょうか。

今後、ケアハラ事案件数が増えていくと、慢性的な人材不足、高離職率により介護制度自体が崩壊しかねない、とも考えられます。また、国は基本的に福祉予算をできる限り削りたいのですから、トラブルが多発すれば、制度自体の見直しに大きく舵を切ることも、あり得ない話ではありません。元も子もなくなる、ということです。

上記を踏まえ、弊社の全介護スタッフを代表する形で利用者様ならびにそのご家族様に、次の各事項をご提案申し上げます。

1.利用者様ご自身でできること、介護職員が介入すべきことの範囲を明確にしてください。

2.介護職員へのご意見、ご要望は、冷静な言葉ではっきり伝えてください。
ここで、正当な苦情や批判、例えば、「痛いので、〇〇をこういう風に工夫をしてくれ」などの建設的な申し入れについては、遠慮は不要ですが、「チッ」と舌打ちをする、相手を睨み付ける、口を利かない、「バカ」、「のろま」、「親の顔が見たい」などといった相手の人格をも否定する言動は慎しんでください。感情的にならず、介護者に理解しやすい表現で意思を伝えてください。

3. 介護職員への信頼が、過剰な期待や依存になっていないかを検証してください。
親しくなれば甘えが出ます。仕事で関係している以上に、相手にもっと深く踏みこみたい気持ちがつのります。介護・介助される側としては、「感謝や好意は、言葉と態度でのみ常識的に許容される範囲内で伝える」というルールを守ってください。

4. 初任者や若く経験の少ない介護職員に配慮をお願いいたします。
最初から何でもできて、またやってくれる介護者はいません。経験不足や不慣れを責めたところで改善されることは何もありません。身体や命に直接的な危険がない限り、心を広く持って一人前の介護者に育てていただけませんでしょうか。もちろん、弊社とともに。

5.各介護職員の得意分野を活かした介護体制の構築にご協力ください。

6.Aさんは親切だとか、Bさんは気が利かない・・・など、介護職員同士を比べる言動をしないようにしてください。

7.介護現場でのトラブル、アクシデントについては、できる限り冷静で客観的な判断をお願いいたします。

8. 長時間勤務に際しては、介護職員に時々休憩を取らせていただけるようご配慮をお願いいたします。

本メッセージの内容をよくお読みいただき、ご理解いただけるよう切にお願い申し上げます。

【筆者プロフィール】
古本 聡(こもとさとし)
1957年生まれ 脳性麻痺による身体障害1種1級
旧ソ連で約10年間生活。内5年間を現地の障害児収容施設で過ごす。
18~24歳の間、障害者運動に加わり、障害者自立生活のサポート役としてボランティア、介助者の勧誘・コーディネートを行う。
大学卒業後通訳・翻訳会社を設立、2019年まで運営。
2016年からユースタイルカレッジの重度訪問介護従業者養成研修統合課程での実習/講話を主に担当。
現在はユースタイルラボラトリー社員。
妻、娘の三人家族。