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土屋人(旅ガラス)日記2~世界に誇る新幹線だが…~

土屋人(旅ガラス)日記2~世界に誇る新幹線だが…~

古本聡




世界に誇る新幹線だが…

駅員:「お客様、このお時間ですと、15時39分のひかりにはお乗せできません。20分ほど後の15時53分のこだまでしたら大丈夫ですが・・・。」

私: 「それは困る。こだまは途中でひかりに追い抜かれて、結局、東京到着が30分も後になってしまう。このひかりに乗りたい。しかも、発車まであと15分もあるじゃないですか。東京に着いた後でラッシュに巻き込まれたくないので急ぎたいんですよ。」

駅員:「でも、これからお世話する係員を手配しないといけませんし。その時間が・・・。」

私 :「私はこの改札に発車23分前に着きました。いつも20分くらい前を目安に来ています。今日は、あなたが、私の前のご老人の対応をなさっていたのでこの時間になってしまったわけですよね。しかも、この改札ブースと自動改札機付近に4人も駅員さんがいらっしゃる。誰か一人が私についてきてくれれば乗れますよ。乗降用の渡し板を取りに行く時間が無かったとしても、私の車いすは、電動は電動でも、簡易電動ですから、スイッチを切り替えれば普通の手押し式になります。取っ手を少し後ろから押していただければ簡単に乗れます。」

駅員:「電動は電動ですので、私たちにとっては重すぎるんです。動かせません。それに、車椅子のお客様には、できれば乗車日の2日前には予約手続きをしていただくか、十分に時間の余裕を持って来ていただかないと・・・。」

これは、先日、ユースタイルカレッジ静岡での講話を終えて帰宅しようとしたときのJR静岡駅での、若い女性駅員とのやり取りです。
最初の「お乗せできません」という言葉、そして中盤の「私たちには重すぎるんです」という発言にも、私の頭の中ではカチン、カチンという音が軽く鳴ったが、最後の「十分に時間の余裕を持って来ていただかないと」に反応して私の全脳内に鳴り響いた音は、まさに、母音にさえ濁点が付いた「ガヂ~~ン」でした。

私 :「今何を言った?!要するに、車いすの人はどうせ暇だろうから、あなた方が無理なくスマートに仕事ができるように、“十分に時間の余裕をもって駅に来るべき”、ということですか? 穿った物言いはしたくないが、そう解釈されてもしょうがないぞ。東京駅でも名古屋でも、仙台や新潟でも、急いでいる時には手で押して乗せてもらっています。中には、わざわざ、手動に切り替えるよう頼まれることさえあるんです。重くはありませんよ。」

自己嫌悪を感じながらも、私はこう大きめの声で言ってしまいました。
私は声のボリューム調整が、発語障害があるため上手くできません。特に感情的になった時はさらに下手になります。ですから、あの時の声は、自分が思っていたよりもだいぶ大きかったでしょう。

すると、それまでその光景を傍観していた、自動改札機の傍にいた50代の男性駅員が、私の議論相手に目配せをして、そこでようやく彼女は係員を呼ぶべく電話を掛けたのでした。そう、それまでは手配らしきことは何もしてなかったのです。

お世話係は10秒ほどで改札に来ました。その時点で、列車発車まで10分ほど。

いやはや、ドッと疲れました。良く起こることではあるのです。特に、研修を終えた新人駅員が配置される時期には。何に疲れるかって、こういう場合、いくら正論を言っても、周囲は誰も我関せずを決め込むか、迷惑顔を向けて来ることに、です。いつも四面楚歌、そして孤軍奮闘・・・。

去年の12月3日、障害当事者参議院議員の木村英子さんが国土交通相に、新幹線バリアフリー改善について申し入れをされた旨の記事を読みましたが、状況が少しでも良い方向に向かい、移動の自由が確保されることを強く願っています。孤軍奮闘をしなくてもいいように。


【筆者プロフィール】
古本 聡(こもとさとし)
1957年生まれ 脳性麻痺による身体障害1種1級
旧ソ連で約10年間生活。内5年間を現地の障害児収容施設で過ごす。
18~24歳の間、障害者運動に加わり、障害者自立生活のサポート役としてボランティア、介助者の勧誘・コーディネートを行う。
大学卒業後通訳・翻訳会社を設立、2019年まで運営。
2016年からユースタイルカレッジの重度訪問介護従業者養成研修統合課程での実習/講話を主に担当。
現在はユースタイルラボラトリー社員。
妻、娘の三人家族。