ニュース&ブログ

土屋人日記   「けやきの並木道」

土屋人日記   「けやきの並木道」

佐々木優




「けやきの並木道」  1.25.2007

湯のし屋の少し錆びついたうすっぺらい看板を風が伝った
コールタールを塗りたくった壁が
時どきそこを通るひとの輪郭をはっきりさせる
さっき耳の後ろで交わされたあいさつは
きっと何十年もずっと同じなのだろう 
ちろちろ木漏れ日 春の匂いで あの犬はまた寝ている
でこぼこ石畳の並木道 
水を撒くひしゃくの影を目で追いながら
ちろちろ木漏れ日 春の匂いで あの犬はまた寝ている

校庭に残る水溜りに さした群青色の傘は僕のお気に入り
十字を切るように振りあげた先に
できるなら一日 この安らぎが続かんことを祈る
穏やかに降り積もる時間と風の軌跡よ
この揺れる葉のように僕を和らいでくれ
ちろちろ木漏れ日 春の匂いで あの犬はまた寝ている
でこぼこ石畳の並木道 
水を撒くひしゃくの影を目で追いながら 
ちろちろ木漏れ日 春の匂いで あの犬はまた寝ている

角の電信柱が見えたら 僕らは決まっていつも駆けっこになった
兄ちゃん姉ちゃんよりも早く着こうと
でもいつも僕が最後で その度に泣いていたよ
僕の頭を何度も撫でてなぐさめてくれた
あの記憶が 昨日よりも新しい気がする
ちろちろ木漏れ日 春の匂いで あの犬はまた寝ている
でこぼこ石畳の並木道 
水を撒くひしゃくの影を目で追いながら 
ちろちろ木漏れ日 春の匂いで あの犬はまた寝ている

_____________________________

私の住む愛媛県では、「椿さん(松山市にある神社のお祭り)」を節目に温かくなると言われている。今年の椿さんも賑やかにとり行われたようで、ところどころで梅がつぼみを開かせては、去りゆく冬の余韻と、ほのかに訪れた春の柔らかさを知らせてくれる。
そして私の住む今治市、田舎町にある欅の並木道は、どこにでもあるような場所であって、ここは、私が特に好きな景色である。清々しい木漏れ日の中で車を走らせながら、ふと、ある記憶がよみがえった。

掲載した詩は、13年ほど前に私が書き残したものである。所用から帰宅して、はやる気持ちでデータを遡ると、そこに確かに残っていた。
これから少しの間の土屋人日記は、そのころ書き溜めたものを恥ずかしもなく投稿していきたいと思ふ。 旅の恥はかき捨て。