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女性の身体~セクシュアリティとジェンダー~FGMからの考察1

女性の身体1~セクシュアリティとジェンダー1~FGMからの考察1

安積遊歩



女性の身体は極めて二面性がある。1つは、セクシュアリティ。そしてもう1つはジェンダーだ。セクシュアリティは、身体の仕組みや機能を言うが、ジェンダーは社会的な性と訳され、その時代、生まれた場所、文化、伝統のなかで本当に過酷な扱いを女性の身体は受けてきた。

どの時代も男性のほうに暴力的な力があったから、常に女性は暴力によって支配され続けてきた。特に戦争の中では、女性の身体は、兵士をはじめ従順な人間を産むための機械であったり、男性の欲望を満足させるための性奴隷として扱われた。

今でもそうした扱いのなかに、FGM(女性性器切除)という、虐待、拷問とも言える恐るべき悪習がある。 これはあまり知られてはいないが、世界の女性人口の27人から30人に1人がされているといわれている。アフリカを中心として、中近東やアジアのインドネシアやマレーシアなどにもあるという。女性の身体に対するあまりに凄惨な暴力であるにもかかわらず、長い歴史の中で告発に立ち上がるにはまさに命がけだった。現在でも毎日8,000人の少女たちが、明日にでも、FGMをされるかもしれないところに追い詰められているという。私はこれを10代の終わり頃に知ったのだが、あまりの訳の分からなさと恐ろしさに、行動することは無論、継続して考えることもやめた。

しかし、1994年に北京で世界女性会議が開かれ、そのなかで被害者たちの告発があり、日本でも1996年、「FGM廃絶を支援する女たちの会」が立ち上がった。私はそのときから会員となった。まさに私が40歳で宇宙を産んだ年。優生保護法廃止とFGMを廃絶しようとする日本の支援組織の誕生のその3つは、私にその後も優生思想を問い続ける力をくれている。

FGMは遠いアフリカの出来事で、日本では関係ないと思っている人が多い。しかし実のところ、私たちは精神的にFGMを受け続けているのではないかと思うことがときどきある。セクシュアリティ、つまり身体のなかにある大切なクリトリスを切除される痛みと並べて考えるのも大袈裟すぎると思われるかもしれないが、私たちは女性であるということで、様々な不平等を強いられてもそれに黙り続けるか、その不平等を甘受して男社会に合わせていくかの二者択一を常に強いられ続けている。

例えば、化粧。人間には誰にでも好奇心と変装願望があるだろうから、ちょっとした化粧ならきつく言うつもりは全くないが、若い女性たちが化粧をしないで会社に行くと色々言われるので、それを聞きたくもないし、従わないことによって生じる不平等な扱いに立ち上がることも難しいという声をよく聞く。さらに、周りからの声に疑問を感じているのなまだしもだが、凄まじい消費社会の中で美意識まで購買意欲を煽るために利用しようとする美容産業に捕まって、多くの女性が自ら率先して化粧を求めていく。化粧品の多くは、動物たちに過酷な動物実験を強いて生まれているし、原材料の数々も様々な環境破壊の生み出す要因にもなっているに違いない。要するに、あまりの無知が残酷なシステムの継続を促進する。

それはもちろん、化粧品だけではない。例えば、日本には労基法の中に生理休暇という項目がある。これは戦後の女性が労働者として立ち上がる中で、輝かしくも勝ち取ってきた女性の権利として重要なものだ。ところが、最近はそれを行使している人にはほとんど会ったことがない。行使どころか、そうした権利があることさえ知らない若い人が多い。その代わりに、男並みに働くことを求められて、低用量ピルを服用する。女性の身体は、男性とは違い、命を産む性である。一か月に一回は、自分の身体と向き合ってほしいという身体からの要求として生理があると私は思っている。生理休暇が登場したのは、そうした身体があるからだ。しかし、残念ながら生理休暇は多くの人から忘れ去られ、当事者である女性たちでさえ、特に若い女性たちはその権利を知らない人が多い。

この2つの例は、私には精神的FGMにさえ思えるのだ。ジェンダー指数が110位以下に留まり続ける日本の女性の身体。また、中絶の自由は戦後、女性自身の力で勝ち取ってきたが、その中絶における具体的な技術は残酷を極めている。掻爬法という技術は多くの国々ではまったく時代遅れとなっているが、日本ではその手術がメインである。モーニングピルの普及や正しい性教育がなされないだけではなく、女性の身体を様々に犠牲にして男社会が跋扈し続ける日本。私たちが私たち自身の身体を本当に大事にしようと思えば、食べ物の荒廃も避けられるだろう。

アフリカの少女たちはあまりに凄まじい抑圧に、つまりFGMを受けなければ結婚もできないし、人として生きられないという社会があった。凄まじい抑圧、差別である。しかし、私たちは自分の身体は自分のものであるという認識を少しずつは広げてきた。精神的FGMから自由になるために、徹底的に自分の身体をどのように大切にしたいかを知り、セクシャルオブジェクトとして立たされることから自由になっていこう。


【略歴】
1956年、福島県福島市生まれ。生まれつき骨が弱いという特徴をもつ。22歳で親元から自立。アメリカのバークレー自立生活センターで研修後、ピアカウンセリングを日本に紹介。障害者の自立生活運動をはじめ、様々な分野で当事者として発信を行なっている。
2019年7月、NHKハートネットTVに娘である安積宇宙とともに出演。