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新型肺炎、コロナウィルスについて

新型肺炎、コロナウィルスについて

安積遊歩



ニュージーランドにいる娘が日々、その地の状況を教えてくれる。感染者が200人を超えた時点で、死者が全くいない状態で、女性首相がロックダウンを決断。その決断について、ライブ会見を行った動画も送ってくれた。画像を見ながら、涙が流れた。

「一人一人の生きること、暮らし、命を守るために、この決断が必要なので、協力をお願いしたい」と心から呼びかけているのだった。そして、「皆から来る全ての質問に答えていく」と、自分の子どもを寝かしつけた後に、フレンドリーに語っていた。

昨年クライストチャーチで起きた、イスラム教徒の人々に対するテロ事件への彼女の対応も見事だった。そして今回も、「リーダーシップをとるとはどういうことか」というモデルを示してくれた。

まず何が大切か、彼女はよく知っていた。感染を拡大しないためにロックダウンを選び、その為には休業補償を無条件で、全ての人々にするというのだ。

給料の80%から100%を、オンラインの申請一つで受けつけ、次の日には振り込まれたと言う。もちろん、ITを使って在宅で仕事をする人や、家に閉じこもることのできない医療や福祉の仕事に従事する人、農家さんやスーパーマーケットのレジ打ちの人や、町の中の清掃を担ってくれている人々は除かれるが、その対策の見事さに、今のところ国民からの批判の声は聞かれない。

それどころか、できる外出はスーパーマーケットや薬局への買い物、その他に家の近くを散歩するだけだ。その散歩の時に人とすれ違って2m以内で話すことも、罰金刑が課せられる。

日本人は、あまりに従順で、首相が学校を休校する、と言っただけで、何の保障もないまま、学校が閉鎖された。だから、働く親たちは凄まじい苦難を強いられた。そのずさんな要請によって、学校に行けなくなった子供たちは学童保育に集中し、学童保育の職員たちが悲鳴を上げ続けたと聞く。

日本政府の、命や暮らしを全く大切にしないこのあり方は、2011年の3月11日から、そしてその前からも、ずっと続いている。

私は福島出身だから、福島県に作られた10基の原発が本当に不安で、チェルノブイリの後には11か国の大統領や首相に手紙を書いた。既にどの国に書いたかは忘れてしまったが、返事が来た国だけは覚えている。オーストラリアとカナダとニュージーランドである。その時にもニュージーランドの対応は見事で、原子力を持ち込ませないし、一切使わない法律を制定した。ニュークリアフリーロウである。その時の首相が直筆で返事をくれたのだった。

かの国では今回のコロナへの対応についても、原子力に対する対応についても、人々の生きる権利、命と暮らしを守ることこそ政治である、という言ってしまえば当たり前のことが、当たり前に行われている。しかし、当たり前でない政治を見続けてきた私たちは、自分で自分の命を守るしかない、と究極に思わされている。

そして、80%から100%の休業補償がオンライン一つで可能になる、などということは発想もできなくて、ひたすら働いて、それでもクビになり、若者の中にはホームレスになる人も多いと聞く。

私は、この国で生きるということは常にサバイバル状態だと思ってきた。だから、心から人を信頼するということを自分で作っていくしかない、と多分、生後1年くらいで思い決めた。(家族は愛情に溢れていたが、骨を強くするという事で、医療が虐待に等しい男性ホルモンの投与を2年間に渡ってしてきたので。)

全てのシステムは常に抑圧的で、間違いをし続ける。日本国籍といわゆる健康な身体を持っている人たちは、教育も医療も企業の在り方も与えられたものに満足し、常に「文句を言うな」と言われ続けているかの様だ。

例え様々な理由で差別され、酷い扱いを受けても、政治は黙っていても命や暮らしを守ってくれるものだ、という思い込みや幻想がある。それを持つ人の方が多数派なので、多様な声を上げることは難しくさせられている。

私は隔離されることが本当に嫌いだから、新型肺炎で重症化しやすいハイリスクグループにいる、という自覚を持って行動している。幼い時に医療から「長生きしない」と言われ、良くても20歳までだと言われた人生が、64歳まで生き延びることができた。その間に、自分の身体は自分で見ると決め、様々な自分でできる医学を学び、自分の身体に実践した。ほとんどの駅に全くなかったエレベーターを、通行人を信頼し、仲間と共に諦めず作り続けた。遺伝的障害を持つ人は子供を産んではならない、という差別的な優生保護法の1996年の撤廃にも貢献した。そして遂にはその同じ年、思いもかけず同じ身体の特質を持つ娘も生んだ。彼女は車椅子を使う初めての正規留学生として、4年間大学で学び、卒業し、今は仕事をしている。

彼女と話しながら思ったのは、このコロナ対策で最も問われていることは何か、ということである。それは、自分の人生にリーダーシップをとること、つまり生きようとする意欲と力、そして自分で考えて行動することを取り戻すということではないだろうか。

日本は感染がそれほど広がっていないと言われ、イタリアやスペイン等の惨状をよそに、なんとなく安心するムードが広がっている。そして、対策として集団感染を封じ込めることに成功したと言われ、これまた従順に桜の季節だからと花見に行っている人もいる。首相夫人でさえ花見をしたと言うのだから、そののんびり感は呆れるを通り越して、絶望的にさえ思えてくる。

私たち障害を持つ人、その当事者と関わる人たちの中には、そんな浮かれ者はいないだろうが。この世界的大惨事の中で、今こそ私たちの当事者性を生かし、自分の命、暮らしを守ることを考えていこう。この場合の「当事者」と言うのは障害を持つ人だけでなく、そこに関わる介助者、そして家族、友人全部である。

そして最後に、政治ができることをもう一度繰り返して、書いて終わりにする。

1、これ以降の感染拡大をしないために、早急に東京のロックダウンを検討すること。
2、そのために、東京に住む全ての人たちに将来的ベーシックインカムを構想しながら休業補償を行うこと。その財源として企業が溜め込んでいた内部留保の放出の要請等も検討すること。
3、重症化しやすいハイリスクグループの人々の命を守るということで、医療、介助、介護に関わる人たちの賃金を1.5倍から2倍にすること。ハイリスクグループの医療、介護、介助に関わる人の賃金はそれでなくても低賃金である。この事態を熟慮し、低賃金を改善することで、互いの命と暮らしを守っていく。

これらのことを実現するために、一人一人が真剣に政治に声を届けていこう。政治にお任せであったり従順であることは、危険なことである。政治家はその地に暮らす人々の声を聞き、人々の命を守るという重大な使命を持つ素晴らしい仕事なのだ。

参考まで、ニュージーランドの首相のスピーチをここに紹介する。


【略歴】
1956年、福島県福島市生まれ。生まれつき骨が弱いという特徴をもつ。22歳で親元から自立。アメリカのバークレー自立生活センターで研修後、ピアカウンセリングを日本に紹介。障害者の自立生活運動をはじめ、様々な分野で当事者として発信を行なっている。
2019年7月、NHKハートネットTVに娘である安積宇宙とともに出演。