ニュース&ブログ

新型コロナウィルスと私たち  マドリードの医師の動画

新型コロナウィルスと私たち  マドリードの医師の動画

吉岡理恵




ちょうど2か月頃前の2月中旬、横浜港にダイヤモンド・プリンセス号が寄港してニュースで取り沙汰されていたとき、私はその横浜に行きました。観光客も多く、赤レンガ倉庫では季節のイベントをやっていて、密集・密接の倉庫内を物珍しさで縦断したことを覚えています。あれから2か月、こうも社会が変わるとは思いもよりませんでした。

そして今、刻々と増加する感染者数を見ていて、私自身が感染するかもしれないこと、私自身が今現在感染している可能性があること、だとしたら他人に絶対に感染させてはならないことを強く心に誓っています。報道の通り、このウィルスは無症状の人もいれば重篤化して死に至る人もいます。これは、一か月前に一緒に食事をして、おしゃべりをして、笑いあった人と、永遠にそれができなくなるかもしれないということなのです。そして、さらに惨いことにこのウィルスにより命を奪われた場合、ご遺体との対面も叶えられないのです。

各国の医療現場で、人工呼吸器の置き換えが行われているようです。もしそれが、自分の大事な人だったなら、今一緒に働いている同僚だとしたら、思い出を一緒に作った人だったなら、その人の命が年齢・性別・体調を記した識別カードによって、生きられる、生きられないを選別され、生きられない方に区分けされてしまったら、いずれ本日の死亡者数+1のカウントにされてしまうということです。

医療崩壊がおこるということは、自分を、家族を、診てもらいたいと診察に訪れても、見向きもされなくなるということです。自分に医療関係者の親族・友人がいたとしても、自分だけはと多額の治療費を提供できたとしても、診療の順番が永遠に回ってこないかもしれないということです。毎日40度の熱があっても、咳が止まらなくても、検査も治療も受けられなければ、入院もさせてもらえないことです。その症状が、コロナウィルスによるものであってもなくてもです。

外出をしないこと、手洗い・うがいをすること、換気をすることで、感染と医療崩壊のリスクが避けられるとしたら、今私たちはこれらをやらない理由はないと思います。

そして、このような医療の危機が可能性として想定されてしまった今現在、各地の感染症指定医療機関で治療にあたっている医療・看護従事者の方々の勇気と行動に心より敬服し、医療・看護従事者の方々の感染予防と心身の健康に今以上の策が講じられ、必要な物品が手配され、その方々への誹謗中傷が一切なされないことを切に願います。

また、こうした社会的変容の最中にあっても、以前と変わらず利用者様の生活を介護現場で支えてくださっている職員の皆様にも心より御礼申し上げます。ありがとうございます。管理者・マネージャーの方々におかれましても、刻一刻と緊張感を増す情勢にあって、チームメンバーの心理的不安の軽減、健康面を配慮してのシフト調整、コロナウィルス対策における土屋訪問介護事業所としての指針の理解と周知にご尽力いただいていることに感謝いたします。私自身としては、広域マネージャーとして、介護現場で利用者様の生活を守ってくださっている職員の方々、各地事業所のリーダーシップを担う管理者・マネージャーの方々、そして利用者様とそれぞれのご家族に、感染経路不明の罹患者が出たとしても、適切な対応が迅速に落ち着いてできるようにより多くの情報に触れ、万が一の事態が起こった時の方針設定に根拠の説明ができるよう、そしてその納得が得られるよう努めて参ります。

土屋訪問介護事業所としては、特別措置法による各知事の緊急事態宣言に基づく行動をいたしております。不要不急の事業所への出勤はいたしておりません。対面で行っていたミーティングや採用面接のほとんどをオンラインで行っております。オンラインミーティングについては、今までそのツールや機能を知ってはいましたが、実用することへのためらいがあり導入が遅れておりました。この度、必要至急でやってみたところ、まだ一か月足らずですがオンラインもリモートもリアルでありバーチャルではないという感触で、新奇なものへの心理的な敬遠とWi-Fi接続環境以外、個人的には不便も不都合も感じておりません。むしろ移動時間が減ったことで、業務が濃縮されているように感じます。これらのツールが利用者様の通常のモニタリングやケアカンファレンスで使われたとしても、従来と遜色がないように思いますので、ケアマネージャーや相談支援員の方々にもこうした状況下における柔軟な対応の一つとして推奨させていただきます。

最後に、命の選別というテーマが掲げられてしまったことにこのウィルスへの本当の脅威を感じました。命が、自らの命、家族の命、友人の命、市民の命、都道府県民の命、国民の命、全世界の命、人類の命と、視野に入る命から地球全体の命へと壮大なスケールで繋がっていることを実感したときに、マドリードの医師の動画を目にしました。患者数の増加と人工呼吸器の不足により、時間をかければ回復できるかもしれない高齢の重症患者に取り付けた人工呼吸器をまだ患者の心臓が動いているにも関わらず外して、若い患者に付け替えなければならないという苦悩の現状を訴えたメッセージでした。

医師のメッセージとマドリードの窮状そのものに悲痛な思いを抱くとともに、これまで重度訪問介護に関わる中で耳にしてきた命の選別というキーワードが今ここで結びついてしまったことに情けなさと恐怖を感じました。そして、地球の裏から発せられたメッセージであっても情報はリアルタイムで誰にでも入手できますが、施策や方針はそれぞれのリーダーに委ねられているのだということも分かりました。

情報は多方面から発せられ、方針はときに無理が生じることもあるので、今できること、やれること、そしてできない理由とやれない理由を丁寧に洗い出し、今を、そして1か月、3か月、半年、1年を乗り越えられるような予防と対策に柔軟に応じていきたいと思います。


※吉岡理恵プロフィールはこちら