ヤングケアラー
「ヤングケアラー(若年介護者)」という言葉と概念は、1980年代にイギリスで生まれたものである。元々は、家族にいる高齢者、障碍者、病人などの介護を担う若年層を意味していたが、現在では、下に挙げる2つの年齢層カテゴリーを一つの概念にまとめて捉える傾向にある。超高齢化社会となっているか、あるいはなりつつある、日本をはじめとする多くの国々で大きな社会問題として、議論の広がりと早急な対策、支援体制の整備など状況改善が求められている。
・ヤングケアラー(子供ケアラーまたは児童ケアラー)は、「家族に介護を要する人(祖父母、親、兄弟、叔父叔母などの親戚)がいる場合に、大人が担うような介護責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている、18歳未満の子ども」のことを指す。
・また、18歳〜概ね30歳代前半の家族介護者を「若者ケアラー」(またはヤングアダルト・ケアラー)といい、ヤングケアラーと同様に家族のケアをしている若者たちのことを指す。
さらに最近では、自分の子供の育児と親・親類の介護、複数の人の介護を担う「ダブルケアラー」、「多重ケアラー」なる問題も出てきている。
日本国内の状況は次の通りである。
総務省統計局の「平成29年度就業構造基本調査」によると、15〜29歳で21万100人、30〜39歳で33万人もの人たちが家族の介護に当たっている。
ただし、この調査はあくまで日本の就業構造を調べたもので、介護者の人数を表すデータであるため、ヤングケアラーの正確な人数を把握できているとは言えない。
また、この統計には15歳未満のデータが含まれておらず、実際には15歳未満のヤングケアラーも相当に多くいるものと推測できる。
このようなヤングケアラーが生まれる原因・背景には、まず介護を担う人手が家族内にないことが挙げられる。三世代同居率の低下、核家族化、専業主婦世帯の減少(夫婦共働き率の増大)、シングルマザー、シングルファザーなど一人親家庭の増加などにより、以前から家族形態が縮小の一途を辿ってきた。そのため、家庭内に障害者や高齢者、病人の介護を担える大人がいなくなり、必然的に子供がこれを引き受ける結果になっている。また、日本経済の停滞による相対的貧困化、自己責任論の蔓延も状況悪化に拍車をかけていると言えよう。例えば、保護者が働けない状況に陥ってしまった場合、どうしても経済的な厳しさを抱えることになる。その際、要介護者の施設への入居、入院、ヘルパーの招致といった選択がしにくいこともヤングケアラーを生む原因の一つとして考えられる。未成年のヤングケアラーだと、相手が児童ということで行政の動きも鈍く、十分なサポート体制はいまだ構築されていないのが現状である。
ヤングケアラー発生における問題点と課題としては、次のような事柄が挙げられる。
・勉学・学習の遅れなどが生じる、教育機会が奪われる。
就学児童の場合、自宅では家族の介護や家事に多くの時間を費やさせられ、勉強に集中することが困難になる。介護からの肉体的・精神的負担によって睡眠不足にも陥りかねないほか、要介護者や家族の体調や都合次第では学校を休む必要も出てくるだろう。その結果、学校の授業について行けず、成績不振となる可能性がある。ヤングアダルト・ケアラーの場合でも、離職せざるを得なくなったり、仕事に就いても自分のキャリアを思うように積めなくなったりする可能性が高い。
・理解者の不在、社会的孤立を招く。
放課後や休日に友人と交流、広い社会生活ができなくなってしまうため、子供社会、一般社会からの孤立が考えられる。同年代との接触は学校のみになり、コミュニケーション不足に悩まされることもあるだろう。クラスに馴染めず、自然と教育の場から足が遠のいてしまうケースもある。
・社会的制度を受けられない。
現在、我が国には介護・看護に関する社会保障制度があるが、介護者が子供であるが故に制度を理解しきれず、適切な保障を受けられない場合がある。申請方法を含め知識がないために、本来なら担保される水準以下の生活を強いられる可能性も低くはない。
・将来に経済的影響を与える。
ヤングケアラーは介護や家事の忙しさから、中学校・高校卒業時に就職をしようにも選択肢が狭まり、思うように収入を得られない可能性も出てくる。また、介護生活の負担から心身のバランスを崩し、将来に対して希望を持てなくなってしまう無気力状態も懸念される。
現在の日本では、ヤングケアラー問題について社会的な認知が進んでおらず、社会問題という意識が低いというのが実情である。そのため、公に相談できる環境が整っておらず、地域での集まりに参加し、相談する、当事者同士で話し合うといった最低限の活動しか行われていないのが現実。ヤングケアラー問題は、日本の将来を担っていく若者が当事者となっている深刻な社会問題であり、本来であれば国を上げて取り組んでいかなければならない重要な課題ではある。とはいえ、学校や行政を巻き込んで取り組まなければならないため、予算や人的余裕がないというのが実際のところなのかもしれない。
まずは、ヤングケアラーが相談できる窓口の創設。
ヤングケアラーは身近に相談できる専門家もおらず、一人で頑張り続けてしまう若者が少なくないはず。そのさせないためにも、ヤングケアラーが困った時に相談できる窓口の設置が急務である。また、このような案件を掘り起こすための策をソーシャルビジネスの一環として行えるようにするのも必要だろう。
・ヤングケアラー(子供ケアラーまたは児童ケアラー)は、「家族に介護を要する人(祖父母、親、兄弟、叔父叔母などの親戚)がいる場合に、大人が担うような介護責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている、18歳未満の子ども」のことを指す。
・また、18歳〜概ね30歳代前半の家族介護者を「若者ケアラー」(またはヤングアダルト・ケアラー)といい、ヤングケアラーと同様に家族のケアをしている若者たちのことを指す。
さらに最近では、自分の子供の育児と親・親類の介護、複数の人の介護を担う「ダブルケアラー」、「多重ケアラー」なる問題も出てきている。
日本国内の状況は次の通りである。
総務省統計局の「平成29年度就業構造基本調査」によると、15〜29歳で21万100人、30〜39歳で33万人もの人たちが家族の介護に当たっている。
ただし、この調査はあくまで日本の就業構造を調べたもので、介護者の人数を表すデータであるため、ヤングケアラーの正確な人数を把握できているとは言えない。
また、この統計には15歳未満のデータが含まれておらず、実際には15歳未満のヤングケアラーも相当に多くいるものと推測できる。
このようなヤングケアラーが生まれる原因・背景には、まず介護を担う人手が家族内にないことが挙げられる。三世代同居率の低下、核家族化、専業主婦世帯の減少(夫婦共働き率の増大)、シングルマザー、シングルファザーなど一人親家庭の増加などにより、以前から家族形態が縮小の一途を辿ってきた。そのため、家庭内に障害者や高齢者、病人の介護を担える大人がいなくなり、必然的に子供がこれを引き受ける結果になっている。また、日本経済の停滞による相対的貧困化、自己責任論の蔓延も状況悪化に拍車をかけていると言えよう。例えば、保護者が働けない状況に陥ってしまった場合、どうしても経済的な厳しさを抱えることになる。その際、要介護者の施設への入居、入院、ヘルパーの招致といった選択がしにくいこともヤングケアラーを生む原因の一つとして考えられる。未成年のヤングケアラーだと、相手が児童ということで行政の動きも鈍く、十分なサポート体制はいまだ構築されていないのが現状である。
ヤングケアラー発生における問題点と課題としては、次のような事柄が挙げられる。
・勉学・学習の遅れなどが生じる、教育機会が奪われる。
就学児童の場合、自宅では家族の介護や家事に多くの時間を費やさせられ、勉強に集中することが困難になる。介護からの肉体的・精神的負担によって睡眠不足にも陥りかねないほか、要介護者や家族の体調や都合次第では学校を休む必要も出てくるだろう。その結果、学校の授業について行けず、成績不振となる可能性がある。ヤングアダルト・ケアラーの場合でも、離職せざるを得なくなったり、仕事に就いても自分のキャリアを思うように積めなくなったりする可能性が高い。
・理解者の不在、社会的孤立を招く。
放課後や休日に友人と交流、広い社会生活ができなくなってしまうため、子供社会、一般社会からの孤立が考えられる。同年代との接触は学校のみになり、コミュニケーション不足に悩まされることもあるだろう。クラスに馴染めず、自然と教育の場から足が遠のいてしまうケースもある。
・社会的制度を受けられない。
現在、我が国には介護・看護に関する社会保障制度があるが、介護者が子供であるが故に制度を理解しきれず、適切な保障を受けられない場合がある。申請方法を含め知識がないために、本来なら担保される水準以下の生活を強いられる可能性も低くはない。
・将来に経済的影響を与える。
ヤングケアラーは介護や家事の忙しさから、中学校・高校卒業時に就職をしようにも選択肢が狭まり、思うように収入を得られない可能性も出てくる。また、介護生活の負担から心身のバランスを崩し、将来に対して希望を持てなくなってしまう無気力状態も懸念される。
現在の日本では、ヤングケアラー問題について社会的な認知が進んでおらず、社会問題という意識が低いというのが実情である。そのため、公に相談できる環境が整っておらず、地域での集まりに参加し、相談する、当事者同士で話し合うといった最低限の活動しか行われていないのが現実。ヤングケアラー問題は、日本の将来を担っていく若者が当事者となっている深刻な社会問題であり、本来であれば国を上げて取り組んでいかなければならない重要な課題ではある。とはいえ、学校や行政を巻き込んで取り組まなければならないため、予算や人的余裕がないというのが実際のところなのかもしれない。
まずは、ヤングケアラーが相談できる窓口の創設。
ヤングケアラーは身近に相談できる専門家もおらず、一人で頑張り続けてしまう若者が少なくないはず。そのさせないためにも、ヤングケアラーが困った時に相談できる窓口の設置が急務である。また、このような案件を掘り起こすための策をソーシャルビジネスの一環として行えるようにするのも必要だろう。