医療的ケア

 本来なら医療行為あるいはそれに類似する行為は、医師もしくは看護師以外がやってはいけないことになっているのですが、H23年の法改正から一定の要件を満たしたヘルパーには限られた範囲において例外的に許可されるようになりました。
 このときの法改正により実施可能になった医療類似行為(以下、医療的ケアといいます)は、大きく「喀痰吸引」と「経管栄養」の2つです。

・喀痰吸引
 通常わたしたちは口や喉にたまった唾や痰などのいわゆる喀痰をくしゃみなどで排出したり、飲み込んだりして処理しております。しかしながら身体の衰えた例えばALSの患者などは、自力でそういったことができなくなります。喀痰が詰まると、最悪窒息して生命の危険にも及びます。よって喀痰が詰まった箇所に柔らかいカテーテルを挿入して、吸引器で吸い出してやることが必要です。この喀痰吸引には、吸引を実施する箇所の違いから、以下の3種類に分けられます。何れの箇所の喀痰吸引においても、吸引中の対象者は呼吸ができなくなりますので、短時間で効率よく(おおよそ10秒以内で)吸引を行うことが重要です。

・口腔内吸引
 歯茎や舌の周りの唾液や舌の上の痰を吸引することです。ヘルパーは咽頭部より深く吸引することはできません。口腔ケアの一環として行われることもあります。

 ・鼻腔内吸引
 鼻の奥にたまった鼻汁などを吸引します。鼻の中は屈曲していますので、そのカーブに沿わせて優しくカテーテルを挿入させてやる必要があるでしょう。

・気管カニューレ内吸引
 気管切開を施された対象者の咽頭部に挿入された管(これを気管カニューレといいます)の中にたまった痰を吸引することです。無菌操作で実施しなければならなく、特に清潔操作に注意を払う必要があります。少しでも異物に触れたカテーテルは、気管カニューレ内の吸引には使用せず交換するようにしてください。

・経管栄養
 嚥下機能が衰えて飲食物の口腔摂取が困難になってきた方には、胃(もしくは腸)内まで繋げた管から栄養剤や水分を注入する経管栄養が施されます。注入するものの種類や量、さらに注入時間などは医師の指示書によって定められています。注入の方法としては、シリンジでゆっくり押し込む方法やイルリガートル(滴下筒、点滴のようなもの)を用いる方法、加圧バッグを用いる方法などが挙げられます。経管栄養は、注入に用いる経路の違いから、以下の2種類に分類されます。

・胃ろう又は腸ろう
 腹部から胃あるいは腸にかけて孔を開け、その孔に栄養チューブを結合させて水分や栄養剤などを胃あるいは腸内に注入する方法です。PEGというような呼び方をすることもあります。

 ・経鼻経管栄養
鼻の穴から栄養チューブを挿入し胃まで届かせる非侵襲的な方法です。栄養チューブの先端がちゃんと胃の中まで入っているかを確認する必要があります。

 ただしこれらの行為をヘルパーが合法的に行うためには、社援発0330第43号通知に規定する研修(喀痰吸引等研修)を修了しなければいけません。その上で都道府県に修了証明書証を添付して「認定証」の申請を行い、さらに医師の指示書や利用者本人からの同意等も得る必要があります。
 また上記の喀痰吸引等研修には、可能となる医療的ケアの種類や対象に応じて、次の3種類があります。

第一号研修
 特別養護老人ホーム等の施設において、不特定の利用者を対象にすべての医療的ケアを提供することができます。
第二号研修
 特別養護老人ホーム等の施設において、不特定の利用者を対象にすることは第一号研修と一緒ですが、医療的ケアのうち限られた行為だけを提供する施設向けのものです。
第三号研修
 主に在宅で生活される特定の利用者のみを対象とするなら、気管カニューレ内の吸引を含むすべての医療的ケアを提供することができます。なお、利用者を特定させるための行為として看護師による実地研修が必要です。

 ちなみに土屋訪問介護事業所の登録ヘルパーは皆このうちの第三号研修を修了していますので、看護師による実地研修さえ経れば医療的ケアに対応することができます。