脳性麻痺

脳性麻痺(Celebral palsy,CP)は、胎児から生後4週までの間に脳(主に運動中枢系統)が何らかの損傷を受けて起こる運動機能障害の原因となる病態の一つ。現在、日本に約7万6千人いる(参照:障害者白書「障害児・者数の状況」 )。病変発生時期が生まれるまでの期間に当てはまるので、先天性の障害とされる。したがって、生後1ヶ月以降の病気や事故で起こる脳内の病変や損傷とは、明確に区別される。

脳性麻痺の種類:
脳性麻痺は、次にあげるような幾つかの種類に分類される。
痙性麻痺 ― 脳性麻痺の全分類の中で最も多く観られる型。反射神経が強調され(過敏になり)、筋肉の動きが硬くなる。
運動障害性脳性麻痺 ― この型の脳性麻痺は、大きくアテトーゼ型脳性麻痺とジストニア性脳性麻痺の2種類に分かれる。 アテトーゼ型脳性麻痺は、無意識に起きる、ゆっくりとした身もだえするような動き(いわゆる不随意運動)、ならびに筋肉の過緊張などが特徴。また、ジストニア性脳性麻痺は、四肢筋よりも体幹運動に麻痺の影響が及ぼされる。
運動失調性脳性麻痺 ― 筋肉を自発的にスムーズに動かすことができない。
低緊張性脳性麻痺 ― 筋緊張が低下状態になり、クニャクニャと垂れてしまう。
混合型脳性麻痺 ― 上記の各型の2つ以上が合わさった状態。

脳性麻痺の原因
脳性麻痺の主な原因は、胎児期の脳形成異常、脳出血、妊娠中の感染症、出生時の仮死状態、脳内低酸素状態、新生児期の黄疸、脳炎などだが、現代の医学では原因を特定できないことも多い。
生まれてすぐ脳性麻痺だと診断できるケースは稀で、発育段階で運動機能発達の遅れなどが顕著になり確認されることが多い。

原因例:
先天性脳性麻痺: 妊娠中の感染症、胎児への酸素供給不足、出生時体重約1.5kg未満の未熟児、分娩時の合併症、Rh不適合(予防が遅れたり、不適切な場合)などが挙げられる。また、先天的欠損症(脳の形成不全、遺伝性疾患、染色体異常などがある新生児は、脳性麻痺になるリスクが高くなる。
後天的脳性麻痺: 脳性麻痺児の約10%は、生後2年間に発生する脳損傷が原因。こうした損傷原因の最も一般的なものは、脳の感染症(日本脳炎、髄膜炎など)や、ひどい打撲や挫傷による頭部・脳内傷害がある。

脳性麻痺の主な症状と特徴
脳性麻痺の症状は多岐に渡るのですが、その中でもよくある症状は次の通り。
- 身体(特に手や足)の筋肉の過緊張、硬直。
- 動作が緩慢でぎこちない。
- 不随意運動(意志に反して身体が動く、急に跳ね上がる、震えるなど)。
- 体幹機能障害(姿勢が不安定、または保持することができないなど)。
- 上肢障害(腕力や握力の過不足、手先の器用さの低下など)。
- 下肢障害(立つ、歩くことが困難など)。
- 発語障害(明瞭に発語、発話することができない)。
- 嚥下、咀嚼障害、睡眠時などの無呼吸症。
この他にも、脳性麻痺によって身体の様々な部位に障害が現れることもある。
これまでのところ、根本的に脳性麻痺を治癒する方法は見つかっていない。リハビリなどで運動機能を改善したり症状を緩和し軽減したりすることができる。具体的にどのような障害が生じるかは、脳の損傷の部位や程度によって様々で、障害の重さや内容は個人差が大きい。一見しては障害があると分からないほど軽度な人もいれば、自力で座る姿勢を保てない重度の人もいる。

また、脳性麻痺そのものは進行性ではないが、脳性麻痺には二次障害というものがあり、状態が悪くならないように十分な予防・現状維持のためのケアが必要。
二次障害とは、これも脳性麻痺の型や症状の重軽によってかなり広い範囲の差異があるが、不随意運動により常に頸部および肩、背中の筋肉に力が入っている状態な為、経年とともに頸椎が圧迫され、脊髄麻痺を発症すること。冒される頸椎が何番かにもよるが、背中や腰のひどい痛み、肩こり、手足のしびれ、感覚の喪失が起こりえる。3番頸椎より上がやられると、横隔膜が麻痺してしまい、最悪の場合、窒息死、ということもあり得る。
ちなみに、脳性麻痺者・児は、通常ではない動きの特徴から知的障害との合併・重複があるように思われることが多いが、実際は、この二つが重複する確率は20%程度で、ほとんどの脳性麻痺者・児は、知的障害がない。

引用元: ステッドマン医学大辞典(Stedman’s Medical Dictionary)英語版改訂第5版(本稿執筆者訳)