ダウン症

ダウン症は. 正式名称が「ダウン症候群」(最初の報告者であるイギリス人のジョン・ラングドン・ダウン医師の名前により命名、英: Down syndrome))で、染色体の突然変異によって起こり、通常、体細胞の21番染色体が通常より1本多く存在し、計3本(トリソミー症)になることで発症する先天性疾患症候群である。多くは第1減数分裂時の不分離によって生じるほか、減数第二分裂に起こる。新生児にもっとも多い遺伝子疾患である。

症状としては、身体的発達の遅延、特徴的な顔つき、軽度の知的障害が特徴である。平均して8 – 9歳の精神年齢に対応する軽度から中度の知的障害であるが、それぞれのばらつきは大きく、現時点で治療法は存在しない。教育と早期ケアによりQOLが改善されることが見込まれる。ダウン症は、ヒトにおいてもっとも一般的な遺伝子疾患であり、年間1,000出生あたり1人に現れる。

かつてはヨーロッパを中心にMongolism(日本語では、蒙古症(もうこしょう))と呼ばれ、黄色人種に特有のものとの偏見が広がった。これはヨーロッパにおいて白人の子どもであるにもかかわらず、当時コーカソイドより劣っていると考えられていたモンゴロイドの遺伝子を持って出生したと発見者のジョン・ラングドン・ダウン(英語版)医師が考えてつけた名前のためであった。

ダウンは当初「目尻が上がっていてまぶたの肉が厚い、鼻が低い、頬がまるい、あごが未発達、体は小柄、髪の毛はウェーブではなくて直毛で薄い」という特徴を捉えて「Mongolism(蒙古人症)」または「mongolian idiocy(蒙古痴呆症)」と称し、発生時障害により人種的に劣ったアジア人のレベルで発育が止まったために生じると説明していた。しかしダウンによるこの人種差別的な理論は、アジア人にもダウン症がみられることからすぐに破綻をきたした。

1961年に19名の著名な遺伝学者が「Langdon-Down anomaly」「Down’s syndrome anomaly」「congenital acromicria」、または「trisomy 21 anomaly」の用語を用いるべきとの声明を発出したことを契機に、蒙古症の語は次第に使われなくなった。1965年ごろにはモンゴル人民共和国の代表がWHOの事務局長に対して、非公式に病名としての「mongolism」が不快であるとして将来的に使用しないように要請している。1965年、WHOは発見者のダウンにちなんで「Down syndrome(ダウン症候群)」を正式な名称とすることが決定した。2012年、3月21日を国際連合が世界ダウン症の日に認定。21番染色体トリソミーにちなんで、それが障害名として正式なものになった。