自殺関与と同意殺人

日本の法の下において自殺関与・同意殺人罪とは、刑法第202条に規定されている罪の総称である。個別には、人を教唆して自殺させる自殺教唆罪(簡単に言うと「自殺しろ」など言って人を自殺させようとすること)、人を幇助して自殺させる自殺幇助罪(自殺のための道具や場所、知識などを提供すること)、人の嘱託を受けてその人を殺害する嘱託殺人罪、人の承諾を得てその人を殺害する承諾殺人罪(同意殺人罪)を言う。なお、マスコミ、あるいは社会一般的に、殺害報酬としての金銭の授受があった上で、被害者からの嘱託を受け殺害行為を成すことを「嘱託殺人」と表現する場合がある。

自殺関与と同意殺人の区別は、行為者が直接手を下したかどうかで決まる。自殺を決意した人に毒薬などを提供するのは自殺関与で、本人の依頼を受けて毒薬を飲ませるのは同意殺人となる。判断が難しい場合もあるが、同一構成要件内の犯罪なのでその区別はさほど重要ではない。

自殺関与とは、他者の自殺を教唆・幇助した結果、自殺が未遂ないしは成立することである。

自殺はその未遂も含めて処罰されないのにも関わらず、自殺関与が処罰されることの理由は次に述べる通りである。自殺が処罰されない理由の主張は2つあり得る。それは、自殺は違法行為だが、刑法の責任主義の観点から責任が阻却されるため処罰されないとする主張と、自殺は違法ではなく、違法性が阻却されるため処罰されないとする主張である。 前者の主張は、違法行為である自殺に関与した者をその共犯として考えて処罰の対象とできると説明される。後者は、自殺は違法ではないとするので共犯云々は関係なく、その際、本人には自己の生命を処理する自由があり、生命のあり方を決める事ができるのは本人だけだという考えに立脚し、他人の意思決定に影響を及ぼし生命を侵害する行為自体を違法と見做し処罰の対象にできると説明される。

自殺幇助罪とは、自殺を決意した人に対し自殺を容易にする援助を行うことである。

同意殺人とは、被害者が自死に対して真摯な同意を他者である同意者に与えている場合に、その人を殺害することを指す。

殺人罪よりも同意殺人の方が、刑が軽い。その理由は、被害者の同意があるので違法性の程度が低い(違法性減少事由)と考えられとして説明される。

嘱託殺人罪とは、被害者の積極的な依頼を受けてその人を殺した場合に発生する地味である。

承諾殺人罪(同意殺人罪)とは、行為者が被害者に対し殺害の申し込みをして、被害者がこれに同意・承諾し、それにより殺害した場合を指す。

錯誤の問題について
被害者が自殺を決心する過程や、殺害に対して同意を与える決心をする過程で錯誤(誤った判断)があった場合、当該殺害行為をどのように扱うかが問題となる。 心中を持ちかけ、後から追死すると騙して自殺させた場合には、自殺の決意は「真意に添わない重大な瑕疵がある意思」であり、自殺者の自由な意思決定に基づくものではないとして、殺人罪の成立を認めた判例がある(昭和33年11月21日)。 この判例は、追死するという事が本質的に重大な事実であり、それに対する錯誤があるので自殺の決意は真意に基づくものではないと説明されているが、学説の中には死という結果それ自体に対しては錯誤がないから、重大な瑕疵があるとは言えず、自殺教唆罪が成立すると主張するものもある。

着手時期(実行日時)について
同意殺人罪の着手時期については、殺人罪と同じで、まさにそれを実行した時期である。自殺関与罪については、自殺の実行行為開始時であるという説と、自殺を教唆・幇助した時であるという説が対立している。両者の違いは、自殺関与が処罰される根拠の違いと深く関連している。

自殺関与を共犯と理解するなら、通説的見解である共犯従属性説により、正犯が実行に着手しないと共犯も成立しないので、自殺関与罪の着手時期は自殺の実行開始時であると説明できる。一方、自殺関与を独立した犯罪と理解するなら、その犯罪行為の実行時、即ち自殺を教唆・幇助した時であると説明できる。

両説の違いは、自殺を教唆・幇助された者が、決心しながら翻意して実行しなかった時に生ずる。前者なら犯罪不成立だが、後者なら自殺教唆・幇助の未遂罪が成立する事になる。

(参照、引用: Wikipedia、Weblio、東京弁護士会資料、他)