ミトコンドリア病

ミトコンドリアの働きが低下することが原因でおこる病気の総称。遺伝子の変化に由来する場合と、薬物などが原因でおきる場合とがある。

ミトコンドリアが持つ全身の細胞の中にあってエネルギーを産生するはたらきの低下により、細胞の活動が低下することで発病する。ミトコンドリアはほぼ全ての細胞に存在し、細胞のはたらきの低下や細胞自体の消滅がどの細胞にも起きる可能性があるため、いろいろな症状が現れることになる。けいれん、脳卒中、精神症状、発達の遅れなどの脳の症状、物が見えにくい、音が聞こえないなどの感覚器の症状、運動ができない、疲れやすいななどの筋の症状など、比較的エネルギーを多く必要とする神経、筋、心臓などの臓器の症状が現れやすいと考えられている。またミトコンドリア病の症状の特徴は、あらゆる年齢層に、あらゆる症状が、あらゆる組み合わせで現れることと言える。

ミトコンドリア病の臨床経過は、急性に現れる場合、ゆっくり症状が現れる場合、ゆっくり改善する場合、ほとんど変わらない場合などあらゆる経過があり得るため、将来予測はたいへん難しいというのが現状である。

多彩な症状を示すミトコンドリア病の治療の考え方として、現状では2つの方向がある。現在現れている症状を把握し、その症状に対する治療法がある場合にはそれを積極的に行うことが重要である。各臓器の症状があるときは、専門医を受診し対症療法が必要となる。

一方、ミトコンドリアのはたらき自体を回復させる原因療法についても様々な試みがなされている。ミトコンドリアの中でエネルギーを作る過程(代謝系)に必要な栄養素やビタミンを補充するものである。ただし、ミトコンドリア内の代謝系は複雑で、ある栄養素やビタミンを大量に補充したからと言って簡単に代謝のはたらきが上昇することは難しいと考えられているため、まず本来の食事から摂る栄養素をバランス良いものにすることが治療の基本となる。

また、世界中の研究者・医師が新たな治療法の確立をめざして研究している。すでに10種類以上の治療薬候補の有効性や安全性が臨床試験で試されている。臨床試験の結果、安全で有効な薬剤が保険薬として承認され、多くの患者に使われるようになる。日本においては、保険薬として承認された薬剤の第一号はタウリンで、MELASの脳卒中発作の抑制に適用とされ、2019年3月に承認を受けた。

ミトコンドリア病に罹患した場合、基本はミトコンドリアに負担がかからない生活をすることが必要となる。生活リズムを整え、睡眠を十分に取ること、栄養のバランスの良い、ビタミンを多く摂る食事にすることが大切。ミトコンドリアに悪い影響を与えると考えられる、飲酒、過食や飢餓は避けたほうがよい。また感染を契機に症状が悪化するケースもあるため、家族を含めカゼをひかないようにすること、インフルエンザなどの予防接種も重要となる。

参照情報:
難病情報センター ミトコンドリア病(指定難病21)
https://www.nanbyou.or.jp/entry/194