ポリオ(小児麻痺)
ポリオ(Acute poliomyelitis、急性灰白髄炎)とは、ポリオウイルスの中枢神経感染により生ずる四肢の急性弛緩性麻痺(acute flaccid paralysis:AFP) を典型的な症状とする疾患であり、かつては小児に多発したところから小児麻痺ともよばれていた。
ポリオウイルスは、抗原性の異なる1型、2型、3型の3種類がある。ポリオウイルスの自然宿主はヒトだけであり、糞便中に排泄されたウイルスが口から体内に侵入し、咽頭や小腸粘膜で増殖し、血流に入る。そこからウイルスの一部が脊髄を中心とする中枢神経系に到達し、増殖して脊髄前角炎をおこすと、典型的なポリオ症状が現れる。感染から発症までの潜伏期間は4~35日間(平均15日間)である。
ポリオウイルスが感染しても、90~95%は不顕性感染(感染後も無症状で経過するもの)でおわる。4~8%はカゼのような症状(発汗、下痢・便秘・悪心・嘔吐などの胃腸症状、咽頭痛・咳などの呼吸器症状など)にとどまる不全型で、感染者の約0.1%が典型的な麻痺型(弛緩性麻痺: AFP)をあらわすにすぎない。
典型的な麻痺型ポリオは、1-2日のカゼ症状の後、解熱に前後して急性の弛緩性麻痺が四肢に現れる(脱力型麻痺)。麻痺の部分は痛みを伴うため、カゼで発熱したこどもが解熱し始めた晩に背中の痛身を訴え、翌朝突然下肢の麻痺が現われることが多い(麻痺型患者の約50%が筋拘縮や運動障害などの永続的後遺症を残す。定型的麻痺では、合併して嚥下障害、発語障害、呼吸障害を生じることがある。死亡例のほとんどは、急性呼吸不全によるものであり、死亡率は、麻痺型となった小児の約4%、成人で約10%である。
ワクチン接種によってポリウイルスの感染を予防する事が最も重要である。ポリオに対する有効な治療法はない。ポリオワクチンには、経口生ポリオワクチン(Oral polio vaccine:OPV)と不活化ポリオワクチン(Inactivated polio vaccine:IPV-注射による接種)がある。
現在我が国では生後3ヶ月以上90ヶ月未満の間(生後3ヶ月~18ヶ月が標準投与年齢)にOPVが2回、主に集団接種方式で投与されている。使用されるワクチンには、1型、2型、3型の3種類のポリオワクチンが含まれており、凍結保存されていたワクチンを使用直前に融解・混和し、0.05mlを経口的に服用させる。1回の投与では3種類のウイルスが必ずしも腸管内で同じように増殖するとは限らないので、いずれの型に対しても免疫を効果的に成立させるため2回目の服用が行われる。2回目の服用では1回目の服用で免疫が成立しなかった型のウイルスのみが腸管で増殖し、それに対する免疫が獲得される。
我が国では1981年以降野生株によるポリオの発生はないが、1997年より国際的基準に一致したポリオ根絶証明のための国内調査を改めて行い、2000年8月にWHOに対して我が国のポリオが根絶されたことを正式に提示した。2000年10月には、WHO西太平洋地域でのポリオ根絶がWHOによって宣言された。
【忘れられつつある感染症系障害―ポリオ、PPS、二次障害について】
わが国では1964年にポリオ生ワクチンが集団投与(予防接種)されるまで、毎年多数のポリオ患者(ほとんどが幼小児)が発生していた。この時期に全国各地でポリオにかかり、ポリオ後遺症をもった人たちは、現在それぞれの分野で活躍しているが、これらの人たちが50~60歳前後に達したころに手足の筋力低下、しびれ、痛みなどの症状が発現して、日常生活ができなくなったとの事例がしばしば報告されている。これはポストポリオ症候群(PPS、またはポリオ後症候群、ポリオ後遅発性筋萎縮症)と呼ばれるものだ。
PPSの際にしばしば現れる筋・関節の痛みやしびれは、追加して出現した筋力低下のために、その近辺の末梢神経や筋・関節に余分の負担がかかるために生じると考えられ、ポリオ罹患により発生した後遺症の経年後二次障害として理解されている。
ポリオワクチン集団接種開始前、1950年代にわが国では、進駐米軍が持ち込んだウイルスによるポリオ大感染があり、現在、その時期に罹患した人たち(60歳~70歳代後半)がPPSに苦しんでいる。
また、昭和50~52年(1975~77年)生まれの人が乳幼児期に受けたポリオワクチンは効果が弱く、50%ぐらいの人の免疫力が低いことが分かっている。その人たちはこれから親になって、子どもがポリオワクチンを受けた時に、子どもから感染してポリオを発病する恐れがある。海外のポリオが流行している地域に旅行する場合にも、感染リスクが高い。該当する人は、近くの保健所や医師会に問い合わせて、もう一度ワクチン接種を受けるほうがよいだろう。昭和50~52年前後に生まれた人たちも、念のために接種を受けることが望ましい。
ポリオウイルスは、抗原性の異なる1型、2型、3型の3種類がある。ポリオウイルスの自然宿主はヒトだけであり、糞便中に排泄されたウイルスが口から体内に侵入し、咽頭や小腸粘膜で増殖し、血流に入る。そこからウイルスの一部が脊髄を中心とする中枢神経系に到達し、増殖して脊髄前角炎をおこすと、典型的なポリオ症状が現れる。感染から発症までの潜伏期間は4~35日間(平均15日間)である。
ポリオウイルスが感染しても、90~95%は不顕性感染(感染後も無症状で経過するもの)でおわる。4~8%はカゼのような症状(発汗、下痢・便秘・悪心・嘔吐などの胃腸症状、咽頭痛・咳などの呼吸器症状など)にとどまる不全型で、感染者の約0.1%が典型的な麻痺型(弛緩性麻痺: AFP)をあらわすにすぎない。
典型的な麻痺型ポリオは、1-2日のカゼ症状の後、解熱に前後して急性の弛緩性麻痺が四肢に現れる(脱力型麻痺)。麻痺の部分は痛みを伴うため、カゼで発熱したこどもが解熱し始めた晩に背中の痛身を訴え、翌朝突然下肢の麻痺が現われることが多い(麻痺型患者の約50%が筋拘縮や運動障害などの永続的後遺症を残す。定型的麻痺では、合併して嚥下障害、発語障害、呼吸障害を生じることがある。死亡例のほとんどは、急性呼吸不全によるものであり、死亡率は、麻痺型となった小児の約4%、成人で約10%である。
ワクチン接種によってポリウイルスの感染を予防する事が最も重要である。ポリオに対する有効な治療法はない。ポリオワクチンには、経口生ポリオワクチン(Oral polio vaccine:OPV)と不活化ポリオワクチン(Inactivated polio vaccine:IPV-注射による接種)がある。
現在我が国では生後3ヶ月以上90ヶ月未満の間(生後3ヶ月~18ヶ月が標準投与年齢)にOPVが2回、主に集団接種方式で投与されている。使用されるワクチンには、1型、2型、3型の3種類のポリオワクチンが含まれており、凍結保存されていたワクチンを使用直前に融解・混和し、0.05mlを経口的に服用させる。1回の投与では3種類のウイルスが必ずしも腸管内で同じように増殖するとは限らないので、いずれの型に対しても免疫を効果的に成立させるため2回目の服用が行われる。2回目の服用では1回目の服用で免疫が成立しなかった型のウイルスのみが腸管で増殖し、それに対する免疫が獲得される。
我が国では1981年以降野生株によるポリオの発生はないが、1997年より国際的基準に一致したポリオ根絶証明のための国内調査を改めて行い、2000年8月にWHOに対して我が国のポリオが根絶されたことを正式に提示した。2000年10月には、WHO西太平洋地域でのポリオ根絶がWHOによって宣言された。
【忘れられつつある感染症系障害―ポリオ、PPS、二次障害について】
わが国では1964年にポリオ生ワクチンが集団投与(予防接種)されるまで、毎年多数のポリオ患者(ほとんどが幼小児)が発生していた。この時期に全国各地でポリオにかかり、ポリオ後遺症をもった人たちは、現在それぞれの分野で活躍しているが、これらの人たちが50~60歳前後に達したころに手足の筋力低下、しびれ、痛みなどの症状が発現して、日常生活ができなくなったとの事例がしばしば報告されている。これはポストポリオ症候群(PPS、またはポリオ後症候群、ポリオ後遅発性筋萎縮症)と呼ばれるものだ。
PPSの際にしばしば現れる筋・関節の痛みやしびれは、追加して出現した筋力低下のために、その近辺の末梢神経や筋・関節に余分の負担がかかるために生じると考えられ、ポリオ罹患により発生した後遺症の経年後二次障害として理解されている。
ポリオワクチン集団接種開始前、1950年代にわが国では、進駐米軍が持ち込んだウイルスによるポリオ大感染があり、現在、その時期に罹患した人たち(60歳~70歳代後半)がPPSに苦しんでいる。
また、昭和50~52年(1975~77年)生まれの人が乳幼児期に受けたポリオワクチンは効果が弱く、50%ぐらいの人の免疫力が低いことが分かっている。その人たちはこれから親になって、子どもがポリオワクチンを受けた時に、子どもから感染してポリオを発病する恐れがある。海外のポリオが流行している地域に旅行する場合にも、感染リスクが高い。該当する人は、近くの保健所や医師会に問い合わせて、もう一度ワクチン接種を受けるほうがよいだろう。昭和50~52年前後に生まれた人たちも、念のために接種を受けることが望ましい。