脳性まひの二次障害

●脳性まひ二次障害の症状
脳性まひには」痙直型、アテトーゼ型、硬直型、失調型の種類がある。アテトーゼ型とは筋の緊張は強いが、筋そのものは正常。顔面や四肢の筋肉の不随意運動(アテトーゼ)があり、四肢の運動は自己の意志によらず、目的もなく行われる。目的のある動作をしようとする時や精神的に緊張している時に、アテトーゼが強く出たり、不自然な姿勢を取ってしまうのが特徴。二次障害を発症しやすいのが、このアテトーゼ型脳性麻痺である。

二次障害とは、成人障害者、とくに脳性まひの人に見られる既存の障害(一次障害)の悪化・重度化や、新たに出現する障害のことで、しばしば動作能力の低下をともなう。例えば、手足の痺れ、頸の痛み、よく転ぶ、ふいにものを落とす、排尿機能の変化、肩のこり、腰痛、関節痛などの身体症状のほか、イライラ感、物忘れ、うつ状態など、精神疲労の訴えもあり、症状は幅広くさまざまである。二次障害の原因となる二次的疾患はさまざまだが、頸や肩、腕の痛みの場合には、頚椎症、頸肩腕障害などの疾患が疑われる。その他、脊柱側わん症と胸郭変形、変形性股関節症、関節拘縮、ポストポリオ症候群などもよく観られる疾患である。これらの症状は進行し、速い人だと40,50代で既に寝たきり状態に陥ることもある。

30歳前後から始まる人が多いが、早い人では20歳代から症状が現れる場合もある。多種多様な症状や動作能力の低下は、軽度の障害のある人よりも中度以上の障害を持つ人に、また年齢が高くなるほど多くみられる傾向がある。しかし、就労している人の場合には、その職種や労働条件のちがいによって症状の発現の仕方が異なる。


●脳性麻痺二次障害の予防、進行遅延及び緩和対策
脳性麻痺二次障害の予防、進行遅延及び緩和には生活全体に関わる総合的な対策が必要である。予防及び進行遅延を図るには、疾患や機能障害に対する治療的アプローチだけではなく、二次障害を生み出さない、悪化させない生活と労働の環境と条件を整備することが大切だ。つまり、その人の生活全体に関わる総合的な対策が必要であることがポイントになる。

以下、働いている障害のある人を念頭に、のぞましい生活や労働のあり方について述べておく。

まず仕事(職場)については「作業の内容、作業時間は適切か」「長時間の同一姿勢の保持を防ぐため休憩時間に臥位で疲労をとるなどしているか」、「机やイスの高さ、障害に応じた自助具やコンピュータの入力装置など環境が整備されているか」など、その人の障害の種類や程度に応じたきめ細かい対応が必要である。

生活面では、睡眠や食事をしっかりとって、規則正しい生活を送ることとともに、運動不足の解消と体力づくりが必要。始業前のストレッチや昼休みの運動など有効である。

もちろん医療機関との連携も欠かせない。例えば、歩きにくくなったなどの症状が、いつから始まったのか、なにかきっかけがあったのかなど整理しておくことは、二次障害の早期発見と治療方針を決めるために大切なことである。

「障害だからしかたがない」とあきらめずに、体の症状や生活を見つめなおすことが重要である。


ポストポリオ症候群(ポリオウィルス感染後遺症としての小児麻痺における二次障害)
日本ではずっと以前からポリオはあったと思われるが、昭和32~35年にポリオの大流行があり、その後ワクチンの普及により患者は激減し、昭和40年代よりほとんどその新たな発症をみなくなった。しかし、昭和20~30年代にポリオに罹患した人々が次第に中高年に近づくにつれて、筋力低下、関節拘縮、四肢体幹の変形、痛み、歩行障害の悪化、日常生活動作(activities of daily living;ADL)の制限などの機能障害や能力障害を生じてきた。この病態がポストポリオ症候群(post-polio syndrome;PPS)である。

すなわちPPSでは、通常通り社会生活や日常生活を送っていたポリオ罹患者が、発症から10~50年の安定期の後に新たな筋力低下、筋萎縮、筋・関節痛、易疲労感、歩行障害、嚥下障害などのさまざまな症状を生じる。PPSの発症は、ポリオ罹患者の28~64%と言われており、わが国でのPPSの発症率は、人口10万人あたり18.0人と報告されている。発症要因としては、加齢、過重労働、廃用、過用、体重増加などが考えられている。

また一般的にポリオ患者は「頑張り気質」が多いと言われ、勤勉家が多く、仕事も熱心であり、手を抜くことができずに無理を強いる傾向にある。これがよりいっそう過用を進行させている。リハビリテーション科医がポリオ罹患者の病態を適切に診断し、生活指導などの介入を適切に行うことにより,PPS発症を防ぎ,あるいは悪化を防止することが重要である.