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介護者と二人三脚の子育て ~赤ちゃんを連れての外出、試行錯誤の日々~  平田真利恵

介護者と二人三脚の子育て ~赤ちゃんを連れての外出、試行錯誤の日々~

平田真利恵



私のちょっとした特技の中に「電動車椅子を運転しながら空いた方の手の腕力と全身のバランスで、ある程度の大きさの荷物は持ち歩ける」というものがある。

具体的にいうと、2人掛けのロータイプのソファーくらいまでなら近所のホームセンターで購入してそのまま自宅まで持って帰ってくる事ができるくらいである。店員さんに購入した商品が入った段ボールに取手をつけてもらうようお願いし、車椅子の足乗せの部分に上手く段ボールの角を引っ掛けて空いている方の手でしっかりと固定すれば運転自体は出来るからだ。ただ、荷物が大きいと視界が悪くなるため、いつも以上に介護者に「前から自転車が来ます・後ろから歩行者が来ます」などと声掛けをしてもらうことが必要不可欠にはなるが……。

私の介護に入って間もない人は、この状況に出会すと大抵「自分が持ちますよ」と言ってくれるのだが、外出中は介護者には瞬時に動いてもらいたいので出来るだけ荷物は持たせず車椅子の後ろに掛けるか自分で持つ。それに、大きな荷物は一見重たそうにみえるが、赤ちゃんの頃から保育園の年中さんくらいまで娘を膝に乗せて移動していた経験からすれば、まだ楽勝なほうだ。

娘は殆どベビーカーに乗ったことがない。首が座り縦抱っこができるようになった頃から、外出時にはいつも抱っこ紐でしっかり固定をして私の膝の上に座らせていた移動していたからだ。

だが、最初に買った抱っこ紐が私と子供の体に合ってなかったため、とても窮屈で子供もぐずり外出どころの話ではなく断念した記憶がある。その後も何回か試したが、上手くいかず子供の事を考えて外出時にベビーカーに乗せることも考えた。でも、車椅子とベビーカーで歩くとなると距離感が出てしまうし、介護者はベビーカーを押しながら私の方にも注意しなければならい。そうなると、自然に私たち2人の介護をしている介護者のペースの動きになっていってしまう。

幼少期に障害者施設に3年間ほど入所したのち、特別支援学校で学生時代を過ごした経験上、相手に悪気がなくても身体の動けない者を2人以上同時に見なければならない場合、どうしても主導権は介護する側になることは想像ができた。それは、今後の介護者との子育てにも影響が出ると考え、何がなんでも外出中の娘の移動手段は私の膝の上でなければならないと思い、何がいい方法がないかと模索していった。ちなみに、子育て経験のある先輩障害者の話では、子供用の自転車の椅子を電動車椅子に溶接してそこに子供を乗せて移動していたらしい。しかし。その先輩の話はあまりにも昔の話だったため、その様な改造をしてくれる車椅子業者を新たに探すとなると時間もかかるので断念した。

まだまだネットが普及していない中、毎日携帯の画面でネット検索を何時間もして「いい商品はないか」と探した。そして、使い勝手の良さそうな商品を見つけては試し、見つけては試しを繰り返した。だが、当時の一般的な抱っこ紐は赤ちゃんと大人をしっかりと固定できるように両肩と腰のベルトが分厚く太くてゴツい留め具が着いているものが多かった(アウトドア用のしっかりしたリュックみたいなイメージのもの)。子供を長時間抱っこしても負担が来ないようにと作られているんだろうけど、左右の肩の高さが違い腰の位置もずれやすい私が装着すると、子供が斜めになってしまい抱っこ紐から落っこちそうになる。それに自分では留め具が止められないから、もし外れた場合は逆に危険だった。

そんな商品が多い中、やっと自分にも使えそうな物に出会った。簡易的な抱っこ紐ではあるが襷掛けタイプの肩紐で赤ちゃんを膝に乗せた状態の時に丁度いい感じのストッパーになる形状だった。しかも襷掛けのため着脱も楽々で、何があればすぐに子供を車椅子から下ろせる優れもので、「まるで私達親子のためにあるのでは!?」と思うくらいの商品だった。「これでやっと色んな所に行ける!いっぱい遊びに連れて行ってあげられる!」ととても嬉しかった。

これをきっかけに、出来るだけ天気のいい日には外出をするようにして子供に様々なものを見せられるようにした。介護者も移動中にベビーカーを押すことがないので以前とあまり変わらないスタイルで私の動きに合わせていくことができた。ただ、トイレやオムツ交換の時はそれまで以上に時間とスペースを必要とした。それまで当たり前のように使ってきた多目的トイレの有り難みと必要性を改めて感じることが多かった。

赤ちゃんとの外出も慣れてきて、外に出ている時間も増えてくると娘は私の膝の上で寝るようになった。起きている時は、赤ちゃんといえ自分で重心を取ってくれているのでそこまでは重たくない。だが、一度寝てしまうと一気に全体重が私の肩と背中にのしかかってくる。肩紐が肩に食い込んで痛い上にそこに不随意運動が入ってくると息ができないほどの負荷がかかるのである。あまりにキツイ時に何度か介護者に「少しの間なら抱っこ代わりましょうか?」という申し出もあったが絶対に代わることはしなかった。自分がベビーカーを使わずにいくと決めた以上、貫き通さなければならないものの1つだと思っていたからである。

そんな移動の仕方を続けていたら、あるときから娘は自分で私の膝によじ登ってくるようになり、すっかり私の膝の上が定位置になってしまったのであった。しかも、かな〜り大きくなっても乗ろうとしていたような………。



平田真利恵(ひらたまりえ)
昭和53年生まれ、脳性麻痺1種1級。
2002年の秋、「東京で自立生活がしたい」という思いだけで九州・宮崎から上京。障害者団体で2年ほど自立支援の活動をした後、2007年女の子を出産。シングルマザーとして、介護者達と二人三脚で子育て中。 地域のボランティアセンターで、イラスト作成や講演活動を行なっている。