旅行の楽しみ

渡邉由美子



東京の都心でも紅葉が美しくみられる季節となり先日は、文京区にある六義園を散策してきました。

このような小さな旅行は、無計画な私にはとても向いている遊びの一つです。

もう少し本格的に旅行がしたいと思う時には、普段は電動車椅子を使うところを、手動車椅子を使って旅行に行きます。電動車椅子で行けないことは無いのですが、飛行機の場合は分解して機内の荷物として積み込まなければならないので、私には少しハードルが高く、やったことがありません。手動車椅子にすることで、事前に飛行機会社に連絡をしたり、鉄道会社に手配を頼んだり、事前準備を綿密にすれば、とても快適に旅行をすることが可能な時代になってきていると感じられる昨今です。

東京は全国の物産が買えたり、現地のお店が東京に出店していたりして、現地まで行かなくても旅行気分を味わう事は出来ますが、ボランティアさんを複数頼んで現地まで足を運び、現地の景色や観光地の実際を見ながらおいしいものを食べるのは至福のひとときです。

今は、探せば宿泊先にもバリアフリールームと呼ばれる段差が無くて手すりがあって部屋の中も車椅子が動けるスペースを確保したホテルや宿が増えて、十年前から比べれば、行けないことは無いという気持ちにさせてもらえる様になりました。 しかしながら惜しいことに、バリアフリーとは言っても、自宅で使っているような介護用リフトはさすがに無いのです。そこまで完備して貰えたらより重度な方も旅行できる条件が整い助かるのですが…。

そこは二人介護で上半身と下半身をもって一、二の三と抱えて、トイレに行ったりベッドに移ったり、車椅子から移乗したりしなくてはならず、労力のかかる課題として今も残っています。車で行くのに便利に出来ている宿泊先では、介護用リフトがある宿も存在はします。しかし、電車と徒歩しか手段のない私は行ったことがありません。

一般的に考えるバリアフリーとは、まだまだ、全く立てない寝返りも難しい重度障害者が旅行をしたいという願いがあるということは、想定されていない事を感じます。そんな既存の概念を変える為にも、体力が続く限り行動し続けていきたいと思っています。

三十代頃までは現地のホテルであるものを駆使して、貸してもらい、手動車椅子を大浴場のギリギリまで入れさせてもらい、濡れても大丈夫な肘掛け付き・背もたれ付きの椅子を浴場の中に調達して、そこで体を洗ってもらった後、足元が滑るので、介助するボランティアさんも気合を入れて、滑らないように気を付けながら、打たせ湯・ジャグジー湯・露天風呂など、様々なお風呂を楽しむ経験をしたことがあります。なんでも私にはできない、大変だから辞めておこう、と思ってしまえばそれできっと経験出来なかった事になって終わっていたと思います。

でも、最新の注意を払い、ホテルや周りで入浴しているお客さんたちにも協力してもらって、無事に達成できれば、連れて行ってくれたボランティアさんたちも私も、得難い一生の宝物的な経験となり、何よりのお土産となるのです。

これから、過去に行った仙台旅行について披露したいと思います。

仙台駅の近くにホテルを取り、一泊旅行を計画しました。その際、どうしても普段の習慣が抜けず、仙台駅に向かい目的地へ移動しようと思った時の事でした。

目的地に近い駅はエレベーターも無く、まだバリアフリーが未成熟であることが判明し、本当は前の日から何時何分の電車に乗って目的地の最寄り駅に行きたいということを連絡しなくてはなりませんでした。一昔前は、毎日やっていたことでしたが、すっかり計画を立てて動くということを近年忘れていた私は、時間のかかる方法で移動することとなり、久々にどう動いたら目的が達成できるか、頭をフル回転させて考え、何とか行くことが出来て、島々を巡る遊覧船に乗ることができ、水面に飛んでくるかもめをみて、太陽が水辺に差し込み、キラキラと水面が輝いている風景を見られた時には、何とも言えない感動に包まれることが出来ました。帰り、駅まで戻るときには、久しぶりに普通のタクシーに移乗して、車椅子を折りたたんでトランクに乗せることもしました。様々な現地での出会いも醍醐味であると実感しました。

体の障害が重いからと諦めず、一度きりしかない人生をこれからも大いに楽しみたいと思っています。

勇気をもって社会参加すると、普段の視野の狭いルーティンの生活では実現できない、新しい発想や発見が生まれます。私の経験からすると、旅行は案ずるより産むが易しの典型で気分転換もでき、明日からまた頑張ろうという活力を生み出してくれます。

旅行に限らず、重度な障害者が人生楽しむことも、柔軟に当たり前の権利として認められる世の中であってほしいと切に願います。遊んでいる様に思われますが、旅行に出ると、介護するボランティアさんのスキルもぐんと高くなり、日常生活においても良質の安全な介護を受けられるようになるという最大のメリットがある事を私は知っています。そんな観点から挑戦し続けていきたいと思っています。

私は次回、どこへ行こうかなぁ?

渡邉由美子
1968年6月13日生まれ 51歳
千葉県習志野市出身
2000年より東京都台東区在住
重度訪問介護のヘルパーをフル活用して地域での一人暮らし19年目を迎える。
現在は、様々な地域で暮らすための自立生活運動と並行して、ユースタイルカレッジでの実技演習を担当している。

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