でこぼこ道を歩く~介護の魅力~

でこぼこ道を歩く~介護の魅力~

城谷平



 12月中旬、中野坂上の事業所で実施された勉強会「ケアに苦痛が生じるとき ~障害当事者と介護従事者の相互リスペクトの関係を目指して」に出席した。楽しみにしていたのが古本聡さんと平田真利恵さんのお話だったけど、経験に裏打ちされキャラがたったお二方のお話は期待にたがわぬもので、ウィットもユーモアもあり重くなりがちなところを楽しく聞かせてもらった。

 古本さんが必ず口にする“対等”という言葉は重い。介護現場での介護者と被介護者間の意思疎通の難しさはよく聞く。仲良くなれ、でも、ため口はダメ。その塩梅が難しい。そんな時にユーモアの出番がある。ユーモアって対話には不可欠だ。ひとを和ませる笑いはいい。

 僕も介護従事者としてのささやかすぎる現場体験があるけれど、技術面以外の要素は現場では大きいと思う。誰もが口にする“相性”の問題だ。自分のことを白状すれば、これがダメで現場を一日でクビになったこともある。こじれて長引いたりすると…苦痛ってそういうときにおこるだろう。

 こればかりは努力して向上するものでも改善するものでもない。反面、技術は下手でもなぜか相性がよく仲良くなるなどということさえも起こる。うまくできなくとも教えてもらっているうちに、相互理解が深くなる側面すらあったりする。だからといって…という問題は残るのだが。

 お二方が口をそろえていわれたのが「介護の人材は無尽蔵ではない」という認識だった。人材は限られており、介護する側される側が、歩み寄る、必要があるということだ。「いい人に会いたい」。双方で実は同じゴールを見ている。

 自分が、この世界に入ろうとしていたころのことを思い出す。幸いだったというべきか、僕の周りには例えば、僕がいるライターの世界に近いデザイナーさんが一念発起して介護の仕事を始めていたり、ライブハウスで歌っている女性の妹さんが介護の仕事で頑張っていたりした。歌のヒントになったりするらしい。みんな望んで、でこぼこ道を歩いて今に至ってる。そんな様々な人が僕を導いてくれた気がする。

 やってみたけど、うまくいかずに辞めてしまった人も多かった。子育てでやめた女性もいた。そして、今はやめていても「いつかまたチャレンジする」と口をそろえる。不思議なくらい。多くの人がこのままでは終わらないと強い思いをを抱いていた。ある女性は、現場で暴力を受けたことを打ち明けてくれた。傷ついてもいた。でもその人も、また現場に戻るんだという強い意志を持っていた。そういう声が僕を引っ張った。

 それだけの魅力があるからだろう。

 介護の仕事は難しいし、厳しい。汚れ仕事も多い。他人様の命がかかる場合も普通だ。ちょっとしたことでケガさせてしまうかもしれない。のしかかる責任が怖い。なのに、お金だってそんなにいいわけでもない。初任者研修を一緒に受けたいわば同窓生の多くが、こんな難しい仕事が自分にできるのか?こわい。疑問を持ちおののき、たじろいでいた。僕もそうだった。

 でも、向こう岸は見えなくても、怖くとも跳んでみた。そう決心して現場に出ている。だから、自分の決心は何よりも大事に思える。こんな自分が今ここにきているんだ。

 「心を折らないでください」。これもお二方の言葉だった。

 心を折る、とは格闘技の世界から出た言葉だ。負けてはいけない。負けていられない。せめて投げないでいよう。

 双方にミスマッチがあるとも思わない。介護する側と、される側はお互いの姿が見えなくとも、見つめあっている。ベストマッチでなくとも考え見つめていれば、いい出会いは来る。今がダメであろうと、悲観はしていない。僕は結構、現場を楽しんでいたりするから。


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