でこぼこ道を歩く~呼応する言葉~

でこぼこ道を歩く~呼応する言葉~

城谷平



 介護の仕事をやってる人なら、呼応というのか、感応というのか。響き、感じることが確かにあるはず。

 令和新選組の山本太郎さんのコメント。「今あなたが苦しんでいるのはあなたの責任ではありません」。

 「あなたが苦しんでいる理由」として代表的には昨年十月から10%に引きあげられた消費税増税だが、持てる者からは少なく、持たざる者からは広く多くとるこの国の税金聴取の方針は、庶民を苦しめる大きな要因で、山本氏は少なくとも5%への減税、最終的には廃止を目指している。

 片方では大企業は歴史上最大ともいわれる内部留保をため込んで離さない。消費税減税の財源?お金はいっぱいある。それをうまく流そうという話だ。

 景気浮揚にエンジンの役目を大きく果たすのは個人消費だから、消費税減税は間違いなく景気浮揚に大きく寄与するだろうと思われる。

 とマクロの視点から見るけど、山本氏、我々介護業界にも温かい目配せをしてくれている。令和新選組は共産党と共同で市長選候補を担ぎ、山本氏も応援しているが、新しい取り組み方針の中で、働く人の最低賃金増はもちろん、「交通費」の負担軽減措置をあげている。僕はうれしかった、初めて介護の仕事をしたとき、この自前が原則の交通費なんとかならないものか、と痛切に思っていたからだ。介護の仕事をしている人なら、交通費の問題が“効く”というのは痛いほどわかると思う。

 山本氏の言葉に素直にうなずけるのは、ここ数年、安部政権下でさかんにいわれた言葉、“自己責任論”に真っ向からぶち当たり正面突破を図る気迫が伝わるからだ。また、同じように我々庶民を重苦しくさせた言葉が“生産性”だろう。

 ※「LGBTには生産性がないから」、有名になってしまった言辞を、総理大臣のお気に入りといわれる比例第一位の女性議員が杉田水脈さんは述べている。ほとんどおぞましい。幼稚園の待機児童の問題には「そんな問題は存在しない」とほとんど謎のコメントを出している人だ。ご本人の政治家としても生産性はどうなのだろうか。

 ※また、ある元旧大蔵官僚である自民党女性議員・片山さつきさんは,故ケネディ大統領の有名な演説をパクッたうえで「天賦人権論はやめるべき」という恐ろしいことも述べている。

 生産性とは経済用語で人(ひと)に対して使う言葉ではない。例えば製造業でモノつくりに際して、無駄をなくし効率を上げてコストダウンを図り採算の向上を目指すものだ。人手不足解消を狙うものでもある。それがいつの間にか、人そのものがコストとして扱われ、人を減らせば効率が上がるかのように言われだした。

 ぼくはある大手製造業の社長が、リストラという言葉が流行語のようになった時期、ちょうど今話題のカルロスゴーン氏について「人の首切りやれば有能な経営者であるなどとは何事だ」と憤って話されたことを覚えている。

 山本氏の言葉に戻る。
 「役に立たなければ生きる価値はないといわれる世の中に今はなっています。大きく間違っている。ひとは、役になんか立たなくても存在する価値があります。そんな生きててよかったと思うことができる世の中にしなければいけない」。

 残念ながら京都市長選では、令和新選組と共産党が推す福山氏が惜しくも敗退した。でも山本氏も共同で推進しようとした政策を暇があればチェックしてほしい。介護職にいて、ここを改善したらかなり楽になる、とあなたが願っている項目が含まれているから。本来、職種に限らない庶民の願いなのだが。

 この文章の冒頭、感応という言葉を書いたけど、最初からある言葉が念頭にあった。

「生活者」。この前の当社勉強会で古本聡さんが自らのことをそうおっしゃった。無能な僕にも響いた。「人間生きてるだけで価値がある」。僕が言っても響かないかも知らんが。



【プロフィール】 1955年、佐賀県唐津市呼子町生まれ。いつのまにか還暦は過ぎ、あのゴジラよりは1歳年下。介護の仕事に就いたきっかけは先年亡くなった親友のデザイナーの勧め。「人助けになるよ」との言葉が効きました。約二十年くらい前に飲み友達だった大家が糖尿病で体が不自由になり、一昨年暮れに亡くなるまでお世話。思い出すとこれが初めての介護体験でした。今はその亡き大家のうちにそのまま住んでいます。元業界新聞記者、現ライター。

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