地域生活を支える ~社会参加活動はいばらの道?生き甲斐?part2~

渡邉 由美子


今回からは、現在に至るまでに行ってきた日中活動についてその時のエピソードを交え、重度な障がい者がどのように地域社会に出て一般社会の健常者と交り合い、自らの人生の質を上げてきたか?について書いていこうと思います。

上手くいかないことが続き、生きる希望も意欲もすべて失った私が立ち直れたきっかけは、地元で知り合った一人の施設指導員のアドバイスがあったからでした。

若い頃は怖いもの知らずであった私は、向こう水にアクティブに生きる道をいばらの道と知りながら不屈の精神で活動してきました。活動先は基本的に無かったのですが、かろうじて捻り出したのが図書館に本を借りに行く形に似た形態の障がい者版カルチャーセンターでした。そこでは主に、加齢に伴う障がいの人々が余生を過ごす形の手作業として籐のカゴ編みや皮工芸、ステンドグラス、陶芸等で作品を作り福祉祭りなどの関係団体イベントで販売し、それが売れれば売れた分の商品代金から原材料費を引いてわずかな工賃を手にするシステムでした。安全管理をする管理者はいましたが、介護者がいないので学校に引き続いて母親の全面的な関与は必須要件となり、車での送迎、昼食の介護、排泄介護も必要になりました。

私自身が楽しそうにしていないことも大きな理由でしたが、在席としては4年程いました。しかし、真面目に通ったのは最初の1,2年でその後はいるかいないかわからない存在となりました。

そんな経験をした私はもっと広い視野で動いていく必要性をひしひしと痛感しました。
先ずは、「家族に頼らない行動を自分でする」を目標に移動の保障を求める車椅子ガイドヘルパーの制度を作って欲しいと地元自治体に働きかけ、駅の階段の解消を市議会に要望し陳情する活動を一人で精力的に行いました。

それと平行して学生ボランティアの緩やかな連帯を作り始め、やりたいことの実現を一つ一つ可能にしてきました。

とにかく家から一人で出られるようになった私は、堰を切ったように先ず地元の民間や個人も含めた拠点を巡り、私の身体状況や能力で可能な社会参加活動があるのか?ないのか?模索し続ける日々が始まりました。その活動は現在も続いています。

そんな中で先ずは一つの福祉作業所と出会いクッキーやパウンドケーキの販売の活動を得て、やり甲斐と生き甲斐を大いに感じながら楽しく暮らすことが可能になってきました。

販売ルートの開拓にとても苦労しました。あらゆるイベントを探し販売しました。冬は温かい飲み物と共に食べるイメージがあるのでよく売れますが、夏は冷たいものに目がいきパウンドケーキはさっぱり売れず、夏に早く売ってしまわないと品質上問題が出てくるのでとても悩みました。出店した場所が目立つようにという意味も含めパラソルをかけていたのですが、販売する者は炎天下で販売しパラソルは商品にかけるようにしたり、保冷剤やクーラーボックス、氷などを用いて品質管理に努める事が一番大変でした。安心・安全な商品でなければ、信用問題も色々あります。食品を扱うことの困難さを痛感することとなりました。

お客様は冬の寒さの中での販売をしていると、とても大変なことと認識し、「寒いのに大変ですね。」と言って同情し全種類まとめ買いなどして下さることが多々ありました。でも本当は、夏の猛暑の中、商品も売れず時間が長いことの方がよほど大変でした。

一昔前のことなので今ほどは暑さも過酷ではなかったとはいえ、皆さんがかき氷を美味しそうに食べている横でパウンドケーキやクッキーを売る難しさを実感しました。

冬は、当たり前ですが、お祭りやイベントはほぼ開催されません。その為販売先が無いのです。そこで人の多い大きめの駅の街頭にキャンピング用の机を広げ、唐突に商品を並べて「買って下さい。」とか重度障がい者の社会参加の為に行っている活動であることを拡声器でアピールして、通りすがりの人々に販売をしていました。

そうこうする間に物を売り、多少でも利益を得るという活動に対しては、道路使用許可書が発行されないということになりました。そこでめげずにクーラーボックスに商品を入れ、駅で人待ちをしている人に声を掛けたり、信号待ちの人に声を掛けたりしながら町の人とコミュニケーションや重度障がい者への正しい理解を広げてもらう啓蒙啓発活動も込みで、かなりゲリラ的に行商で販売活動を継続しました。世間の風は基本冷たいので罵声を浴びせられることもありましたが、その反面暖かく声を掛けて下さり「今度はこの場所にいつ売りに来るのですか。」と確認して毎回沢山買って下さる常連さんも出来ました。こんなご時世の中でも認めてくださる方もいるという心強さを感じ生きる勇気が湧いてきました。

その後一人暮らしを立ち上げる事が出来たのは、このケーキ売りの活動で得た資金を活用できたことが踏み切る原動力となりました。

次回は自立生活センターの活動の時代を書いていこうと思います。


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