2020年、年頭にあたり思う事

渡邉由美子



2020年、年が明けたと思ったらあっという間に一週間が過ぎようとしています。

今年はオリンピックイヤーということで世間はお祭り気分満載な感じが今からしています。それはそれで一生に一度あるかないかということなので、開催されれば私自身も興味を持ってテレビ観戦して楽しむことになると思います。

しかし、その一方でお正月休みが最大で九日間あった影響で生活が本当にできない人たちが街にあふれ、助けを求めたことに対して手を差し伸べたのは越年越冬活動を毎年行っているNPOを中心とする団体でした。公務員がお休みであることをとやかく言うつもりはありませんが、このようなことは年末年始だから急に起こっているのではなく、日常的に困窮してしまう状況な部分も多々あることに対して、公の機関が手立てを講じぬまま休みに入るから問題が深刻化するのです。

それに対して具体的に手を差し伸べた団体はまず温かい食事を無償で提供し、衣類を配り、身体を壊している人には保険証の有無や自己負担金が払えなくても医療を提供することから始め、日常的に生活の根本を立て直していくための生活相談・労働相談にも乗って、一日も早く今の苦しさから抜け出していく事を一つ一つ丁寧に最後まで支援していっているのです。

私は浅草に程近い所に住んでいるので、山谷地区での活動を見聞きすることがあります。突然の派遣切り、そして日払いといわれた労働賃金の未払いなどが重なって本当に住む所も無い、食べるものも無いという状態に陥ってしまう人が後を絶ちません。年末に炊き出し活動場所を通りかかった時、配食を求める人の長い列が絶える事なく続いていました。こんな状況に陥っている人たちがいる中で、行政機関は閉庁九日とはどうしたものか?と考えてしまいました。

クリスマスやお正月は楽しい行事であることが一般的のように商業施設は各商戦に躍起になり、購買意欲を掻き立てています。そんな陰で子供にサンタクロースが来ない家は沢山あり、普段の食事にも困っている人々が多くいる社会をなんとか変えていかなければならないと思い、障害者運動のみならず他の社会問題に対する運動にも勤しむことを私にしかできないライフワークとしてやり続けていきたいと実感しています。

年始になってから高齢の私の親がどうしているかと気になり、数時間介護者と共に帰省しましたが、父は今年84歳、母は80歳を迎え、さすがに年を重ねたことを随所に感じる数時間を過ごしてきました。頭ははっきりしていてそれなりの社会的役割もまだ継続できているので、同じ歳の高齢者と比べれば元気といえるのかもしれません。

しかし、娘から見れば年のせいで足があがらなくなり、すり足で歩いていたり、椅子から立ち上がるのにふらつく姿を見ていると、ひやりとする場面が増えてきました。今の介護保険制度では要支援1になるかならないかといったところのように私には見受けられ、ここでも社会保障制度の不備を思わずにはいられませんでした。国は介護予防に力を入れると言いつつも、今の両親のような状況から介入することは実際難しい現状の中、姉たち夫婦が今年上半期中に両親と同居を始めることになっています。結局家族介護をあてにする日本の福祉のあり方を抜本的に変えていきたいと思う瞬間でした。

最近後を絶たない凄惨な社会問題としてもう一つあるのが子供の虐待です。何故死に至るまでその状態を誰も止める事が出来ないのか?怒りを禁じ得ません。

そんな様々な社会問題が山積する世の中で日産の元社長のカルロス・ゴーンは15億円の保釈金を払ったまま、プライベートチャーター機でレバノンに罪を逃れるため国外逃亡をやってのけています。国民の関心が年末という方向に向いている時を見計らってスーっと逃亡し、それに関与させられた人たちが罰せられる。本当にこの日本は何かがものの考え方としておかしくなってしまっていることを強く感じます。

私は自分が重度の脳性麻痺者であり、自立生活(ヘルパー制度をフル活用して一人で生きる)を継続・発展させることが現実は精いっぱいなので、普段はなかなかそれ以外の社会問題に触れる機会や関わる機会を持てずに暮らしていますが、様々な問題が社会にはあり、困難さという意味では根っこは皆一緒で、問題が見えていても解決しがたいという難題ばかりです。

こんな社会を少しでも良い方向に変えてどんな境遇にある人でも生きやすい社会を実現していくために、今年もぶれることなく障害者運動をメイン活動として取り組む中で社会問題を解決できるよう努力を続ける一年としたいと思います。

また軍事を目的とする防衛費の使い方にもメスを入れ、警察の犯人の取り逃がしに始まる不祥事などの問題や、消費税を増税しながらも本当に必要な場所に適正に使われることが少ないことなどを一つ一つ適正化していきたいと考えています。税金を払う人もそこから生活を助けてもらう人も皆が納得して必要な場所に行きわたる、希望の持てる一年になるように地道な活動を積み重ね、本年も地域で生きていて良かったと思うことのできる年にしたいと思います。



渡邉由美子
1968年6月13日生まれ 51歳
千葉県習志野市出身
2000年より東京都台東区在住
重度訪問介護のヘルパーをフル活用して地域での一人暮らし19年目を迎える。
現在は、様々な地域で暮らすための自立生活運動と並行して、ユースタイルカレッジでの実技演習を担当している。

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