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地域生活を支える 新しい生活様式における“距離感”って?

地域生活を支える 新しい生活様式における“距離感”って?

渡邉由美子



5月に入り、初夏の陽気が続いていましたが、2,3日前は真冬に戻ったかの様な寒さの日でしたね。
普通に風邪をひかないようにするのも大変です。体調不良=コロナウイルス感染症を疑われて独居で暮らす重度障害者は介護者が派遣されなくなる恐怖と闘いながら日々を過ごすこととなります。

そして派遣する事業所も、やれ防護服とかフェイスシールド着用等、厳重な警戒のもとに体勢を組みなおして介護の仕事に当たることとならざるを得ません。未だに検査体制の確立がなされておらず、重度障害を持つ人が検査を容易に受けられる体制は整えられていません。

罹ったら生活そのものが破綻するという当初から変わらない状況は改善する兆しすらも見えません。5月の末に障害者のコロナ対策の進捗状況を知ることのできる会議があるので、それを聞いて自分なりの新しい対策を講じたいと思っています。

緊急事態宣言がたとえ解除されたとしても、第2波が気を緩めたとたん襲ってくるのですから…。

そんななかで、緊急事態宣言が恐らく東京でも5月中には解除される見込みが出てきました。それによって、以前のような生活が戻ってくるのかは未定です。自粛によって人の暮らしそのものが以前と変わってしまったのです。コロナ後、どんな生活になるかの予想が誰にもつかないのです。この間、3密を避けろ!とかソーシャルディスタンスを意識しろ!とか、コロナと共存の新しい生活様式を確立しろ!と繰り返し伝えられています。

それを聞くたびに私たち重度の障害を持つ人たちの生活はどうあるべきなのか?と悩まずにはいられません。

何故かと言えば、重度障害者の地域生活の介護現場においては、介護者は利用者に身体を密着させて、腰を落として四股を踏むように足を踏ん張った体勢で介護するのが常識だからです。

このようなやり方で事故の無い様に介護するよう資格を取る時に教えられているのです。実際そのようにかかわらなければ介護は成立しません。
日常生活の介護において、間隔をあけていては適切な介護にはつながりません。

そして、例えばささやくような声を聞き取るとか、目線を追って文字盤を読み取る等、繊細な作業が現場では必要不可欠です。もっと言えば、ものを言えぬ人の顔色が悪くなったことや、呼吸状態が荒くなったことを瞬時に気が付いて対応する洞察力は近くにいるからこそなしえる気付きの介護なのです。

そんな環境下で今までとは違う新しい生活をしていかなければいけないとなると、本当にどうすれば良いのかわからなくなっている今日この頃です。
また、私のように24時間365日他人の介護を受けながら暮らす者にとって距離感の問題は古くて新しい課題の一つです。

重度訪問介護は見守り待機も重要な介護の一つとして位置づけられている制度です。待機は休憩ではありません。動かずに次の指示が出るまで待っているという一つの動作であり、仕事なのです。

距離感が近すぎれば利用者はその人の存在が気になってしまいます。しかし、物を一つポロンと落としたらすぐに拾うとか、身体が傾いたらすぐに気づいて直す等が可能な状況でありながら、あたかも誰もいないというような空間を作り出すテクニックが求められる難しい領域の仕事なのです。

介護をする側である健常者の方たちには、ずーっと変な話、死ぬまで他人と気が合っても合わなくても広く浅く自分の身体が動かないという現実を克服しながら決められた日課ではなく、自分で組み立てた暮らしの実現のために無限ループのような人探し、事業所探しを、みなさんの労働と同じような大変さで生きるために行っている重度障害者がたくさんいます。

ときたま、感情があらわとなってしまい、介護者との人間関係がうまくいかなくなり、「私はもう介護の仕事はできない。あなたのわがままに付き合うのももう限界。」などの言葉とともに一人消え、二人消え、長年私の暮らしを一緒に紡いでくださっていた介護者が一瞬のすれ違いで退職されてしまうことを何人となく経験してきました。

人間だもの、許してください。あなたも一週間でよいので私と同じ環境を作りだし疑似体験で利用者の側になってみてもらえませんか?と心の中で叫びながら、また一からの介護者と生活を作り直していくことになります。

そんなに深い意味はなく、もう少しこんな生活がしたいからこんな風に私に寄り添って介護して欲しい、といったつもりが、感情がこもり、きつい言い方になってしまいそれが決定打でいなくなるのです。切ないやら悲しいやら、なんとも形容しがたい感情に見舞われます。

「24時間介護者がいると何でも人に頼めていいですね。私もそんな人がいたらいいなあ。たまには逆の立場になりたい。」と言われることはしばしばありますが、やってみてください。自分の身体が動くことのありがたみをつくづく感じると思います。

2020年は歴史に残る史上まれにみるしんどい年になりました。明るい話題や楽しいことを少しでも探して私なりに距離感というテーマで新しい暮らしを築いていきたいと思います。



渡邉由美子
1968年6月13日生まれ 51歳
千葉県習志野市出身
2000年より東京都台東区在住
重度訪問介護のヘルパーをフル活用して地域での一人暮らし19年目を迎える。
現在は、様々な地域で暮らすための自立生活運動と並行して、ユースタイルカレッジでの実技演習を担当している。