『それでも家で暮らしたい…』


S様(パーキンソン病 60代 女性)は、ONの時はその限りではないが、
OFF(無動)の時は何もできなくなり、声を出すことも難しくなる。
いつOFFになるか予測はつかず、急に動けなくなる。

S様の地域では重度訪問介護がなかった。訪問看護さんが緊急時対応していたが、広い地域をみるには限界があった。
冬、もしも倒れた場所が悪かったら…そんな不安がよぎり、急遽自費サービスで支援開始。
しかし、自費では全日の支援が難しかった。

『あー今日は暖かい布団で眠れる…今日はお腹いっぱい食べられる…今日は安心して眠れる…』

支援に入るとS様は嬉しそうに言った。
どうかS様が『当たり前の幸せを当たり前に感じられるようになりますように…』そう願わずはいられなかった。
いろんな方の協力があり、重度訪問介護がスタート。
程なくしてパーキンソン病の新薬を試すことに。
以前よりONの時間が増えた。S様ってこんなふうに笑うんだ!
それまで顔の筋肉も動かせなかったことに気づく。
それなりに全ての時間ではないが安心した生活を過ごせるようになった。
しかし、そんな生活は長くは続かなかった。

S様は腎臓病も患っていた。次の冬、また大雪だったら、どうやって透析に通うのか。透析ができる病院にこれから先ずっと入院することを勧められる。

『病院に住めば安心かもしれない。でも、私は透析に行けなくて例え死んでも、それでも、それでも一日でも長く家で暮らしたい。』

命を守りたいDr.、家で暮らしたいS様…
生命とは…尊厳とは…
とても難しい問題。

ONの時間が増え、区分が下がるかもしれないと。そしたら支援はどうなる?最近は不安を抱えて暮らしている。
S様はOFFになりながらもか細い声で言った。

『私には何もできない。ただできるのは、転ばないように気を付ける事。少しでも体を動かす事。家で暮らしたいと最後まで言い続ける事。そして、私の為に支援してくださる皆さんの為にも、一日でも元気に、笑う事。それが私にできる皆さんへの唯一の恩返しです。』

涙が流れても自分で拭うこともできない。鼻水をかみたくても自分でかむこともできない。

『動ける時間があることは、悪いことですか?』

特定疾病の一つ、パーキンソン病には日内変動があり、動ける時間がある。誤解を受けやすく、軽視されがち。
私たち介護職員は、一、介護職員としてS様に寄り添っていきたい。
冬、住み慣れた地域、家で生活できる方法はないか、あらゆる手段を模索中。
全ての必要な人に必要なケアを…この言葉を胸に、今日も一日前を向いて頑張りたい。

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