「慣れてきたころに緩みが生じ、トラブルにつながります。初心の気持ちを忘れずに取り組みましょう。」
介護の現場のみならず、多くの企業や会社の研修で、このような言葉を耳にすることが多くなってきました。
実際に、私が介護現場に出て、支援を初提供してから約1か月が経ちました。それほど多くの利用者の方を見たわけではありませんが、それぞれの生活、それぞれの障害を自分の目で見ることができました。
町でたまに見かける車椅子で移動される方、目が見えにくく白杖を使っている方、いわゆる障碍者と呼ばれる方を見かけることがあっても、普段の生活の中では、あまり接する機会はないでしょう。介護の仕事では、そういった方たちの生活に介入し、人生を豊かにする人生のサポーターのようなものだと思っています。
私たちは、体がかゆいと感じたら腕を動かし、しっかり掻くことができます。ですが、麻痺があって自由に動かせないので、誰かに掻いてもらったり、我慢しなければならない状況に陥っている場合も多くあるはずです。
腕や足のみならず、指先一本ですら自由に動かせない。そんな制約で過ごす方のストレスを私たち介護従事者が緩和しなければなりません。
最初のうちは、いろんな要素が相まって、利用者の方を知りたい、寄り添って何かしてあげたいという気持ちを念頭に支援を行っていくと思います。
ですが、どんどん慣れていき、1年、3年、5年とどんどん慣れていくうちに、そういった気持ちが片隅に追いやられていってしまうのではないかと、私は懸念することがあります。慣れにも良い慣れと悪い慣れがあります。ケアに時間を要すると、かえって負担を増やしてしまいます。なので、少しでも負担を軽減するために慣れて、ケアの効率化を図り、時間のみを短縮することは良い慣れです。
一方で、単に手技に慣れ、丁寧さを欠き、ケアが作業になっていってしまうのが悪い慣れです。入社後に研修を受けた時に、ある講師の方が「ケアを行うときは、利用者の方の顔や表情をしっかりみてください」とおっしゃってました。私は、この言葉がとても印象的で、支援をするときに最も心がけています。
私たちが、相手をしているのは人です。ケアとはすなわち生活の質上げるための一つの手段です。何も考えず、するべきことだから行うだけではケアとは到底呼べないでしょう。
私は、正看護師の免許を持っています。ここで書いたことが、いつか自分に重なってしまわないように、「初心忘るべからず」を肝に銘じ、支援に臨んでいきたいと思います。