ぼくはのっぽの大リーガーだった – 前世記憶をもつ野球少年の、真実の物語 キャシー・バード/釘宮 律子

石丸偉丈

ALS(筋萎縮性側索硬化症)は通称「ルー・ゲーリック病」とも言われる。
これはかつて大リーグで活躍したルー・ゲーリックというドイツ系アメリカ人選手が、ALSに罹患したことに由来する。

今回はALSで亡くなったルー・ゲーリックについて、興味深い事例が書かれたドキュメンタリー本について紹介させていただきたい。
(ネタバレが多いので、ネタバレを好まない方は、申し訳ありません)

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最近、「僕はのっぽの大リーガーだった」という本が、キャシー・バードさんというアメリカに住む2児のお母さんによって書かれ、注目されている。

野球が好きで好きでしょうがないクリスチャンくんという少年と、お母さんのキャシーさんたち家族を巡る物語で、
注意深く事実を書き記した書物だ。

クリスチャンくんは幼児期から野球があまりにも大好きで、
毎日毎日、徹底的に野球の練習をし続け、
野球のユニフォームしか絶対に着たくない、という性質を持ちながら、
家族には野球好きがいなかったという。

お母さんが、彼の野球好きに四六時中つきあわされる羽目となり、
息子のあまりの野球熱にほとほと手を焼いている中で、
ある晩、クリスチャンくんが不思議なことを言い出した。

ベットの中で「ママ・・・ぼく、のっぽの野球選手だったの」
と話し始めたクリスチャンくんに、
文法の間違いを訂正し、
キャシーさんは、「そうね、いつかのっぽの野球選手になるわ」
と伝えて、その会話は終わったとか。

しかし翌日また、
「ママ、ぼく、のっぽの野球選手だったの」と言い出すので、同じように返すと、
クリスチャンくんは不満そうに、
「ちがうってば!ぼく、のっぽの野球選手だったの—パパみたいにのっぽの!」
と、再び主張。
文法間違いではなく、明らかに、過去に自分がのっぽの野球選手だったことを述べているようだと思いつつ、
伝統的なキリスト教徒のキャシーさんは、息子が言っていることを受け止め難く、衝撃を受けたとか。

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あまり詳細に書くとネタバレが過ぎるので、
その後の要点を書くと、
彼は、1900年台前半の大リーグの様子を詳細に語り、
ネットなどで調べると息子の語りが真実にことごとく合致することを確かめていったキャシーさんは、
とうとう、過去の大リーガーチームの写真をプリントアウトし、本人に確認。
そして、えくぼが特徴的な選手をクリスチャンくんが指差し、
調べてみると、「ルー・ゲーリック」という選手だったとか。

クリスチャンくんもえくぼが特徴的で、
ルー・ゲーリックもものすごい練習の虫だったと判明。
クリスチャンくんの打撃フォームも、真似たわけでないのに、ルー・ゲーリックとかなりそっくりで、
また、有名なベーブ・ルースに、クリスチャンくんが「こいつは嫌なやつだ!!」と強い嫌悪感を示してしていたが、
実際、ベーブ・ルースとルー・ゲーリックは後年非常に仲が悪かったとも判明。

様々な側面が怖いぐらいに一致を見せるので、
悩みながらも、丹念に事実関係を調べ続けたキャシーさんは、
クリスチャンくんが話すことが事実と判断せざるを得なくなり、
その記録を纏めたのが「ぼくはのっぽの大リーガーだった」(原題:THE BOY WHO KNEW TOO MUCH)となる。

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アメリカのバージニア大学では、イアン・スティーブンソン博士を中心とした、
子どもが生まれ変わりについて語る事例を詳細に検討し、数千件のデータベースとして纏められている研究がある。
「前世を記憶する子どもたち」というタイトルで、その研究が纏められているが、
スティーブンソン博士はすでに故人であり、
あとを継いだジム・タッカー博士が、この本にも登場する。

前世を記憶しており、それを詳細に語る子たちの特徴は幾つかあるが、
彼らの検証によると、
・幼少期の方が記憶が鮮明なことが多い(大きくなるに連れ忘れる傾向がある)
・記憶している子は、前世で事故死や変死をしたケースが多い
・夜寝る時に語ることが多い
・前世で怪我をした場所などに痣があるケースが見られる
・「自分がかつて大きかった頃」といった形で話すことが多い
・特技や嗜好、興味関心などを引き継いでいるケースも多い
などがある。

スティーブンソン博士グループの検証は非常に詳細であり、
子どもが作り話をしていないかどうか等を確認するため、
詳細な情報をすべて記録し、
それらを出来る限り、実際に語られた場所や人物を訪ねて検証するという努力を重ねてきた。

スティーブンソン博士グループの検証に丁寧に触れれば、
「生まれ変わり」という現象が、
迷信や非科学的話ではなく
実際の人間存在の一側面であると言わざるを得なくなる。
その驚くべき根気強い検証の蓄積は、人類史的な資産といえるだろう。

「のっぽの大リーガー」本のクリスチャンくんの事例は、
スティーブンソン博士グループが検証してきた事例群の傾向と非常に合致している。

ルー・ゲーリックはALSによって、30代に早い死を迎えたが、
改めて超野球好きで、元気な、才気あふれる少年として生まれ直したのだとすれば、
非常に興味深く、また、ある種の希望を感じさせられる。

生と死の問題は、どのような時代においても避けがたい重要テーマで、
誰しもがいつか死を迎える。
その生死の問題について、21世紀を迎えた今、
スティーブンソン博士の研究を重要な契機として、
「生まれ変わり」が実証的に確認されていく流れは止めがたいものになっている。

このクリスチャンくんとキャシーさんのような事例は、
今後さらに報告・検証されることが増えるだろう。
そして、生まれ変わりの仕組みを実証的に検証することが一般化されてゆき、
その死生観の中で、今の時代と人生をしっかりと生きていくあり方が、21世紀後半には常識になるのではないだろうか。

ちなみにこの本は、ハリウッドで映画化がされており、遠からず公開されるようだ。
私は個人的に10代の頃から生まれ変わりについて四半世紀ほど研究し続けてきたが、
この物語を通しても、人間存在の根本的な仕組み・生まれ変わりの仕組みが広く知られ、
検討される流れが強まっていくことを、楽しみにしている。

とても読みやすく面白い本なので、少し分厚いですが、ぜひ多くの方にご一読をお勧めします。


【略歴】
1972年神戸生まれ。早稲田大学第一文学部卒。在学中に障害者運動の旗手の一人である安積遊歩と出会い、卒業後すぐに安積と同じ骨の弱い障害を持つ愛娘宇宙(うみ)を授かる。猛烈な家事育児介助とパートナーシップの日々は、「車イスからの宣戦布告」「女に選ばれる男たち」(共に太郎次郎社刊)に詳しい。資格持ちヘルパーとして長年介助の仕事をしながら、フリースクール運営や、Webサイト作成・システム構築業に従事。2011年の東日本大震災・原発事故以降は、「こどもみらい測定所」代表、全国の測定所のネットワークの「みんなのデータサイト」事務局長・共同代表を務め、放射能測定・対策活動に奔走。2018年初頭からユースタイルラボラトリー・土屋訪問介護事業所の社内システムエンジニアとなり、長いケア領域の経験とWeb関連技術のスキルを生かして活動中。安積とは紆余曲折の末パートナーシップを解消し、今は新家族と猫と暮らす日々。

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