中学生と体験するインクルーシブ教育

野村 大輔


昨年11月、神奈川県のとある中学校にて4日間にわたり利用者様のSさんと一緒にインクルーシブ運動会に同行させて頂きました。

1クラスにつき1名障害をお持ちの方が担当し、騎馬戦を柔軟な思考で行うというものでした。
1日目は顔合わせとし生徒1人1人から自己紹介。
Sさんはパワーポイントで生い立ちと共に自己紹介をしておりました。
直接言われた訳ではないものの目の前にいる方は車椅子で呼吸器もつけ喋ることはできない。
しかし写真で見せられた結婚式や学生時代の写真は至って健康で。
私には生徒たちの表情もどこか少し変わって見えました。

生徒さん達が何を感じ、何を考えたのかは分かりませんが、その後Sさんから
「私は今幸せそうに見えますか?皆さんから見てどうですか?」
と質問が投げられました。
この質問に同行した私も考えさせられましたが正直好きに動けて、食べられて、喋れた頃が一番幸せだっただろうと思っていました。
しかしSさんの回答は全く逆のものでした。

「今が1番楽しく過ごせています」

と。
楽しく過ごす為には挑戦や協力、やってみようという強い心が必要です。
これはまさに今回の「インクルーシブ運動会の趣旨」である。そう思わされる自己紹介でした。
自己紹介終了後は障害者であるSさんには何が出来るのか?
騎馬戦とは?
勝敗のつけかたは?
戦い方は?
とクラスのみんなで意見を出し、何が出来るのかの確認をしていました。
一通り出来ることの確認が終わってからは残った時間で口文字を読んでもらったり、車椅子を押してもらい貴重な体験をしていただきました。

2日目は生徒のみでの話し合いとなりルールや騎馬戦の準備をしてもらい3日目に実践という形を取っていました。
3日目に訪れた際はいよいよインクルーシブ運動会本番。
体育館にて3クラス(この3クラスの担当は車椅子の方々)で各クラスが考えたルールをまず説明し実際に対戦する形となりました。

あるクラスは車椅子から手を離してはいけなく5人で一つの騎馬。
1人が車椅子に座り兜を着用。
2人が後ろから車椅子を前に2人。
兜を取り合うという騎馬戦の基本ルールに乗っ取り激しい戦いで盛り上がっていました。

あるクラスは文字盤のようにアクリル板にグーチョキパーの絵を貼り付けて目線でじゃんけんをし勝ち上がっていき大将に何回勝てるかというポイント制でした。
大将の前には2人おり3連勝で1ポイント。
各々横に審判もつけており非常に分かりやすく参加者全員が戦えるというルールでした。
1日の準備期間でルール決めにアクリル板の準備まで素晴らしかったです。

そしてSさんのクラスでは顔の表情でじゃんけんをするというものでした。
ぎゅっと目を瞑ってグー。
目を横にキョロキョロさせてチョキ。
目を見開いてパー。
これは私達介護者が口文字を読んでいる際にヒントを見つけたようでその観察力や発想に驚かされました。
生徒たちは二人三脚で一組ずつ前に行き勝負をし最後に大将戦。
柔道のようなルールで見ていて盛り上がりました。

インクルーシブ運動会本番の3日目は体育館内での移動はほぼほぼ生徒さん達にやって頂きました。
中でもSさんの事をよく観察し、車椅子を押すのに躊躇して周りに誰もいなくなりそうな時は必ず走ってきて人を呼び、一緒に車椅子を押している生徒もいてこの姿勢は私たちも見習わないといけはいと感じさせられました。
気配りや積極性に長けている生徒達には特に感動させられました。

4日目は生徒さん達と反省会を行い生徒1人1人からこのインクルーシブ運動会を通してインクルーシブで大切なものや必要な事はなんだったかを伺いました。
多く上がった意見としては「協力」というものでした。
その他に「挑戦」、「理解」、「意見交換」というのも上がっていました。
Sさんからは「楽しくやろうとする気持ち」と。
何事も挑戦であり楽しむことが大事だと。
楽しむ為に挑戦をし挑戦する為には協力が必要であり協力する為には理解が必要だと。
とても楽しくとても考えさせられるインクルーシブ運動会でした。
私はインクルーシブとは挑戦であり協力であるとこの運動会に参加する前に考えていました。その「挑戦」や「協力」にはとても深い意味があり実際多種多様な意見が上がった事から私の中でインクルーシブという言葉がより意味深いものとなりました。
「体験」する事で考えさせられる事が沢山生まれたのでヘルパーとして同行できとても良かったと感じています。

Sさんや他の参加者の方々。
生徒や先生方大変貴重な経験をありがとうございました。

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