よいヘルパー35

よいヘルパー35

佐藤飛美(東京エリアマネージャー)



私が現場時代に心掛けていた「よいヘルパー」とは、その日その時、訪問先のお宅に合わせ体の色を変え、その部屋に溶け込み、まったく見えなくなる。まさに「カメレオン体質」でした。

  利用者は介助者を傍におきながらも1人の時間を楽しめ、のんびりとリラックスして過ごす。
その為には限りなくそのご家庭の色に染まり、時に私という存在を楽しみたい利用者の傍では自分本来の色を全面に出しながら時間を共有し、ケアに取り組みました。

  私が主に携わってきたのは重度訪問介護です。
重度訪問ならではの長時間滞在があり、自分がヘルパーを迎え入れる側だったならばどうだろうかといつも考えながら過ごしていました。
命を預けるとか、そういった極限の部分は一先ず置いておきます。

  来客があり、1~2時間ご一緒するだけでどれだけ疲れる事か。私だけかもしれませんが、とにかくドッと疲れてしまうのです。24時間365日介助の手を必要とし、ヘルパーを迎え入れている当事者やそのご家族の心労はいかばかりかと…。

  私達は普段、仕事を終え家路につき玄関の戸を開けた時、幾らかの安堵感に包まれると思います。もしその時、開けた扉の向こうに介助者という他人がいたならばどうでしょう?
心にまとった鎧を脱ぐ暇もなく再び警戒レベルを引き上げ、くつろいでいるフリをしながら我が家での時間を過ごすのではないでしょうか。

  私達ホームヘルパーは、ケアを必要としている当事者だけでなくそのご家族への配慮も忘れてはならないというのが私の持論です。

  訪問先へ必要なケアと共に安心と信頼を届けられるようになるまでは、とても長い時間を要します。
1回1回の訪問を大切に、そして誠実に過ごし、限られた訪問時間を最大限に活かしながら当事者やご家族の、その「家庭の想い」をキャッチ!身体介助の隙間に、そこまでアンテナが張れていたら最高ですね。

  これだけ読むと、まるで一投入魂の世界。訪問の度に全精神を集中し、介助者の疲労困憊度たるやどれだけだろうと思うでしょう。書いていて自分でも感じています。しかし、これが私の理想であり、私はこの理想を胸にいつも現場に足を運んでいました。

  当事者には信頼して命を預けて頂き、ご家族には安心して昼夜お過ごし頂く。
ご家族の安心が当事者の心配と不安を1つ2つと減らし、そんな当事者の様子を見てご家族は介助者への信頼をまた重ねるかもしれません。そんな素敵な変化は連鎖していくように感じています。

  もちろん、そう一筋縄ではいかない現場もたくさん見てきました。ですが、アンテナを張れるヘルパーは自分の身を守ることにも長けている印象があります。相手の心情の変化をいち早く察知できる事で、適切な言葉選びや提供するケア内容の修正も比較的スムーズに行えることでしょう。

手技の面においては多少の器用不器用はありますが、目配り・気配り・心配りについては、介助者の心掛けひとつで得られる効果がたくさんあります。

自身のためにも、相手のためにも心地よい在り方を見付けられる。
対個人だけではなく、その空間への配慮が行き届くヘルパーを私は良いヘルパーと考えています。


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