ノリと勢いで

岡敬志

ノリと勢いで。

介護職を始めた当時
「介護職です」
と他人に言うと
「なんで介護なんかを…」
と言った反応がよく返ってきた。
そんな時は
「ノリと勢いで始めたんですよ!」
と笑っていつも答えていた。
当時は冗談ではなく本当にそうだからだ。
と言うわけで、私が介護職に行き着いた経緯をざっと説明すると次の通りである。
もともと九州の人間だった私は、紆余曲折があり、ある時に名古屋に住んでいる妻と出会った。
舞い上がった私は齢三十半ばで実家の家業の跡取りを放り出し、車に荷物を詰め込み愛知へ行き、寮付きの工場で働き、結婚資金を2年半かけて貯めて妻と結婚することが出来た。

ところが結婚して単身から妻と二人暮らしになり家での環境が変わると何故か仕事も変えたくなってしまい、転職することにした。
今、思い返すと無茶苦茶である。
そして休みの日にハローワークに行ってみたところ、紹介されたいくつかの業種のなかに「介護」があり、何故か興味を惹かれた。
理由は今でもよくわからない。
とりあえずネットで介護の求人を検索すると求人サイトがザクザク出てくること。
何となく求人サイトに登録すると未経験にも関わらず、あっという間に老健に就職することになった。
介護業界は人手不足。
猫の手も借りたかったのだろう。

と上記のように私はその時のノリと勢いで介護職を始めたわけである。
ただ有り難いことに私が、
「介護職を始める」
と家族や知人に知らせると
「なんで介護?」
と言われつつも
「まあ、あんた優しいからね」
と言われることか多く、まんざら間違った選択ではなかったかなと思う。
実際、老健で働いていた時に利用者様から、「あんたは優しい子やな。ご両親がちゃんと育ててくれたんやな」
と拝まれながらお褒めの言葉を頂いた時は、涙が出そうなくらい嬉しかった。
そんなこんなで、ノリと勢いで始めた介護の仕事に四苦八苦しながらも、利用者様からの感謝の言葉やお褒めの言葉を何度も頂くうちに私にはやりがいのある仕事になっていった。

そして私なりに介護を学んでいくうちに在宅での支援や在宅復帰の支援をやりたいと思うようになっていった。
在宅支援をやりたくなった理由は、施設にいた頃に、とある利用者様が
「家に帰りたいけど無理」
と涙を浮かべながら私に話した事が心に引っかかったからである。
当時勤めていた施設では、在宅支援を行うことは無理だと考えたので施設を辞めることにした。
そして訪問介護の仕事を探すうちに重度訪問介護のことを知り、土屋と出会い、土屋の考えに共感し、今に至っている。

ノリと勢いで始めた介護だが、少しずつではあるが自分なりの目標ができ、日々邁進している。



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