私は2019年10月1日に入社し、重度訪問介護事業部に配属となった弱冠キャリア三ヶ月目の若輩、いわゆる“まだまだ修行中の身”でもありますが、『たかが三か月、されど三か月』と言い切る自負もございます。それは、コミュニケーション技法の難しい利用者にきついなぁと思う一言をいただいたり、信頼してもらえていないのかなぁと悲しく思う利用者がいて、どこのお宅も自分としてはとても順風満帆とは言い難い状況が続き、心が折れる一歩手前の葛藤に悩まされる毎日を送っておりました。
『介護は精神的にキツいなあ…これほどまでに信頼構築がムズかしい世界なのか…。』
希望と期待で入社したものの、行く手に高い壁にドーン!と塞がれたような辛い日々…これが介護の辛さか…。
そんな折、“土屋訪問介護事業所連続学習会 【第三回】ケアに苦痛が生じるとき~障害当事者と介護従事者の相互リスペクトの関係を目指して”というタイトルのメールが入ってきた。『今の私にとってじつにタイムリーで解決すべき題材ではないか!!これは見に行かねば!!』と、あの藁をもすがる思いの一筋の光明にも似た体感は当分忘れることはないだろう。
12月12(木)定員は80名という会場に行きました。この日のメイン講師は、あの古本聡氏。聞いてみたいに決まってる!ゲストに平田真利恵氏、訪問介護従事者代表で我が社の東京エリアマネージャーの佐藤飛美氏…どんなセッションになるのだろう…期待は膨らむばかり。
オープニングは、吉岡マネージャーからご挨拶と本テーマにおいて開催に至った経緯の説明。
『忍耐だけでは限界がある。』という溜飲の下がるフレーズにいきなり心が洗われる。
『重度訪問の存在を世に広めるにあたり、極めて支障をきたしている問題(高浜ジェネラルマネージャー)。』
『利用者が介護者のことを語るものはあるものの、利用者自体を深く掘り下げて語るものは今までなかった。』という理由から開催に至ったとのこと。なるほど、さすがの着眼点に感心することしきり。
まずは、楽しみにしていた古本氏から。
“介護現場での障害当事者と介護従事者の対等な関係”というテーマに沿って、次々と持論が展開される。
・よく『利用者の言うことは従え。』に対して、『同意はしなくていい。』と言うことにまずハッとさせられる。
あまりに分かり易くテンポ良い進行だったので以下、覚えている範囲で箇条書きにしますが、
・お互いに期待や依存はしないこと。
・介護者の人材は無尽蔵ではないのだから、特に未来を背負う若い介護者は大事にしなければいけない。
・介護者にも得意、不得意の部分はあるから、見極めて特性を活かしていくこと。
・介護者の失敗は誰にでもあるもの。言い方が悪いなど、一方的な責め方はしないこと。
・利用者にとって介護者は、同志であり、支持者でもあり、賛同者でもあるのだから、解るような表現で話す必要がある。
『場合によっては、私が直接、利用者に会って説明するのも辞さない。』
『どうか、心を折らないで続けて下さい。』
とても勇気づけられる発言も”正論”ばかりで、この時点で”おなか一杯”状態だったが、まだまだ勉強会で興味深い会話が続く。”講演会好き”な私から見れば、これが無料なのが本当に凄いことなのだ。
次は、古本氏、ゲストの平田氏、弊社佐藤マネージャーによるライブトークに移る。
現場でのキャリアも長く、いわゆる”酸いも甘いも知る”佐藤エリアマネージャーより『NGが出る人はどのような介護者なのか?』という、確かに興味深く鋭い質問に対して、
古本氏『私の場合、昔から、親、医療関係者、施設関係者の三つはNGなんです。親はいつまでも私のことを子供だとしか思っていない。医療/施設関係者は自分が一番だと思っているから。』
今回の勉強会のテーマである”相互リスペクトの関係を目指す”うえで、我々多くの介護者が非常に危機意識を持ち戒めなければならないポイントなのではないだろうか。
平田氏『NGに関しては、先ず利用者が何を求めているのか?を考えないといけない。』と、有意義な答えがなされた。
社会問題にもありつつあるケアハラスメント…訪問介護職員が経験したハラスメント被害は、なんと、精神的暴力が81%(厚労省)にも昇るデータがあるのだが、私も含めてたとえ言葉の暴力で心に傷を負うにしても、一方的な被害者意識でいる前に、介護者サイドもこの”利用者が何を求めているのか?”を考え実践による改善を観察していくことが先決なのではないかと考えさせられた発言であった。
Q&Aコーナーでは、当社の高山マネージャーから、
『どういったスタッフだと攻撃しやすいのか?』という質問に、
–> 古本氏『ひょうひょうと、マイペースな人には言わない。一緒に楽しくやることが大切。』
平田氏『おどおどしていたり、不安そうな人には、こっちも不安になるし、イライラする。』
・・・ウ~ン、図星だ。耳の痛い話しでドキッとする(笑)!?たしかに私自身が当事者だったらこんな介護者には間違いなくきつい一言を言ってるよなって。
じつに早くあっという間に時の過ぎた二時間ではあったが、最後に、弊社高浜ジェネラルマネージャーよりご挨拶。
『数式では決して解き明かせない、明確な答えがないこの介護の世界。激突の後に産まれる爽快感。利用者―ご家族―介助者の三者関係で、この素晴らしい”営み”、文化を一つずつ造りあげていきましょう。』
このような素晴らしい哲学的な言葉にまた感動。
訪問介護の現場においても、行うことは決まっていても順番がその日の状況によってまるで変わるところも、音楽でいうアドリヴに非常に似ているし、まだまだ追及の余地が無限にあると感じた。
『介護はやはりムリ』、『言葉の暴力で傷つけられたからもう辞めよう』という、特に私のような始めたばかりの人に多いのではないかなと察するのですが、この勉強会が終わった翌日からすぐに実践です。私が実際行ったのは”激突”。言ってあげないといけないことは言うべきだし、それによって利用者が変わってくれたことが最近あったし、逆に拒否されている利用者に『ありがとうございます』と感謝の気持ちを口に出すことによって実際に態度が軟化してトランスをやらせて頂けた利用者も出てきました。
私自身も進退を考える一歩手前まで悩み抜きました。しかしどこかで、ケアハラスメントを受けた!で片付けてあきらめてしまうことほど愚かなこともないなとは思っていた。まずは、壁にブチ当たったら平田氏の言われた『何を欲しているのか?』を分析して即行動に移して”営み”を築く努力は必要。
我々の人生の究極の目的であると言われる”次元上昇”。私自身にとってそれは介護の世界やその人間社会での”営み”のなかで魂の波動を上げていくこと。そのお互いの幸福のためにこれ以上ない環境下にいるチャンスを掴ませて頂いているのだと思うと、むしろ感謝しか残らない有難みに気付かされます。
人間誰でも自分自身を否定されたりすると、不安や恐怖心が芽生えてくるものです。
今後、不安や恐怖心が芽生えたとしても、その現実から逃げずにしっかりと向き合い、利用者としっかり対峙して、利用者のニーズに合ったサービス提供に焦点を当てていくことが、我々の現場での仕事であり”営みを通じた文化造り”なのかなと感じます。
介護職に就くことでの重要な”気づき”のあった、じつに有意義な勉強会でした。